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100.四国避難所連合

 祝100話!

 東北征伐によりジパング王国の敵対勢力が本州からことごとく消え失せ、名実ともに俺が本州の覇者となってから数ヶ月が経った頃のこと。


 フラガラッハとカヤを復活させるような魔導具をドロップさせるために雫と協力してBランクモンスターを何体か狩ったが、成果はまったくなかったので俺達二人は肩を落としながらマヨヒガの屋敷に戻った。


 『太陽の化身』を発動させたクロウやネームドモンスターである雫さえいれば、苦戦はするもののBランクモンスターを倒せるようにはなった。ちなみに戦闘時間はおよそ半日……。


 さすがに二体以上のBランクモンスターを同時に相手することは出来ないけどね。イザナミが協力してくれるんなら別だが、あいつたまにしか協力してくれないしな。


 なお、Bランクモンスターを倒してもモンスター蘇生用アイテムはおろか、カードすらまったくドロップしない。


 だから未だにBランクモンスターのカードは持っていないんだよね。多分だけど、Bランクモンスターのカードのドロップ率はかなり低いんだろう。


 まあ元々簡単にフラガラッハとカヤ、スクナやかぐや達ドワーフを蘇らせられるとは思っていなかったし、地道にやっていこう。


 と思いつつも何の成果もなかったことに俺と雫が屋敷の居間で落ち込んでいると……ミラージュが突然姿を現して一報を入れた。


 神出鬼没なのはいつものことなので問題ないのだが、ミラージュがした報告が問題だったのだ。


「ぱーどぅん?」


 俺は目を丸くしながら聞き返した。


「ですから、つい先日四国に誕生したばかりの統一国家の君主が王都を訪ねてきましたっす」


 急展開☆


「……冗談だよな?」


「冗談ではないっすよ。私も驚いているんすから」


「マジかよ展開早すぎぃ……。そもそも四国に統一国家が誕生したことを初めて知ったんだが」


「マスター同様、私も今日初めて知りましたっす。だからクロウさんを四国へ行かせてみたら、どうやら四国全土を支配する統一国家が誕生していたんすよ。あ、ちな九州の方にも統一国家が誕生していたんすが、こっちの統一国家は九州全土を支配しているわけじゃなかったらしいっす」


「えぇ……」


 待ってくれ、展開が早すぎて頭が追いつかないから。


 というか四国・九州は無政府状態で、避難所同士が小競り合いをしているくらいだったはずだろ……?


 それがいきなり、四国・九州それぞれに統一国家が誕生とか……どういうことだ?


 俺がその疑問をミラージュにぶつけると、彼女はこめかみをトントンと叩いて記憶を引っ張り出すような仕草をしながら喋り始める。


「どうもジパング王国が北海道と本州を支配下に置いて急速に勢力を拡大していることを危惧し、四国と九州の諸勢力がそれぞれ連合や同盟を組んで纏まり始めたみたいっす」


「あー、今回の戦争が原因か」


 俺はため息をついて頭をガシガシと掻いた。


「蝦夷汗国・大日本皇国との戦争だけでなく、少し前にマスターが終わらせて帰ってきた東北征伐も原因の一つだと思うんすけど」


「そうかもしんねぇな……」


 でも東北征伐をやらないわけにはいかない。でないと、いつまで経っても本州は統一されないままになってしまう。


「というより、マスターが一日戦争という名を市井(しせい)に広めるからこんなことになるんすよ」


 と言ったミラージュは非難がましい目で俺を見てきた。


「ああ、あれか」


 ジパング王国の軍事力を知らしめて敵対勢力を牽制するため、蝦夷汗国はジパング王国に一日で戦争に負けて属国に成り果てたという作り話を俺は市井に広めた。


 それによりジパング王国と蝦夷汗国の戦いは一日戦争と呼ばれるようになった。そもそもジパング王国と蝦夷汗国は軍事衝突をしていないのだが。


「俺が一日戦争という名を広めたわけじゃない。蝦夷汗国がジパング王国に一日で負けたという話を広めたら、いつの間にか一日戦争という名が定着していたんだよ」


「どっちにしても同じじゃないっすか」


 確かに……一日戦争という名が四国・九州を刺激し、その結果統一国家が誕生してしまったわけか。


「話を戻しますが、どうも四国・九州に誕生した二つの統一国家はいずれも避難所の集合体のような国のようっすよ」


「ふむふむ、読めたぞ」


 避難所はどこにでもある。だからその避難所が一斉に同盟ないし連合を組めば、俺達外野からは一瞬にして大勢力が誕生したように見えたってことか。


 つまり四国・九州の統一国家は避難所を母体とした組織ということだな。


「でもなんで四国の方の統一国家の君主がここを訪ねてきてるんだ? 宣戦布告か?」


「まさか。本人いわく、ジパング王国に通商を求めて王都まで足を運んだらしいっす」


 え、なぜ?


 急速に勢力を拡大するジパング王国を警戒して避難所同士が手を組んだから四国と九州に統一国家が誕生したんだろ?


 なのになんで四国の方の統一国家はそのジパング王国と通商、つまり貿易をしようとしてんだよ。


「私にも理由はわからないっすが、会えばわかるんじゃないっすか?」


「……確かに。なら雫は凛津を呼んでくれ」


「わかった。私はどうする?」


「雫も同席してくれると良いが、別に同席しなくても支障はないな」


「なら私は俊也の護衛として同席しよう」


 ということで、俺達は四国に誕生した統一国家の君主とやらに会ってみることにした。




◇ ◆ ◇




 ミラージュに案内されてヴェルサイユ宮殿の一室の扉を開けると、ソファには黒縁の眼鏡を掛けた見知らぬ優男が座っている。


 その優男の後ろには、護衛と思われる男が二人立っていた。ここは王城内なので護衛の二人は武装していないが、十中八九覚醒者だろうから武装解除しても無意味だな。


 見た感じ優男が四国の統一国家の君主か。随分と若い。俺と同じくらいかな。


 優男は俺と雫、凛津とミラージュが入ってくると顔を上げ、値踏みするように俺をジロジロと見てくる。


「俺はジパング王の塚原俊也だ。貴殿は?」


 と尋ねつつ俺は優男の向かいにあるソファの中央に深く腰を下ろして足を組んだ。それに続いて雫と凛津は俺の両脇に、ミラージュは部屋の隅にある一人用のソファに座った。


「四国避難所連合の連合長で、名前は夢野(ゆめの)久秀(ひさひで)です」


 あ、そうそう。四国避難所連合ってのが四国に誕生した統一国家の国名らしい。無駄に国名が長いな。太陽王国ジパングといい勝負だ。


 それにしても連合長ってなんだよ。まあ何となく察することは出来るが。


 と思っていたら夢野は連合長について軽く説明をしてくれた。


「四国避難所連合の代表が連合長であり、貴国で言うところの国王に該当します」


 チラリと凛津を見ると彼女は頷いていたから嘘じゃないってことか。じゃあ本当にこいつが四国の統一国家の君主なのか。


 にしても、連合長ってのが四国避難所連合の君主号なのか。絶妙にダサい。


「一応紹介しておくが一人用のソファに腰掛けているのがミラージュ・ヴァレンタイン公爵で、貴殿から見て俺の左にいるのが吉川凛津女男爵、右にいるのが法務大臣かつ王妃の内藤……いや、塚原雫侯爵だ」


 ()()雫と紹介したところ、彼女は微かに頬を赤くした。


 正確にはまだ結婚式とか諸々をやってないから、未だに雫の姓は塚原じゃなくて内藤だし王妃でもないが細けぇこたぁいいんだよ。


「ではこちらも、私の背後に控えている二人を紹介しましょう。ジパング王から見て左にいるのが鳴門(なると)市長の及川(おいかわ)慎介(しんすけ)、右にいるのが松山(まつやま)市長の大宮(おおみや)大雅(たいが)です」


 俺は首を傾げ、顎に手を当てて尋ねる。


「その『市長』というのは?」


「ああ、失礼しました。市長というのは我が国の議会を構成する者を指します」


 と言い、それから夢野は四国避難所連合の政治体制を説明し始めた。


 それによると、四国避難所連合では『市長』達による議会で政治が行われているようだ。で、その市長というのは市長国を統治する(おさ)のことらしい。


 やばいな、余計わからなくなってきたぞ。


「噛み砕いて言えば、いくつもの市長国が我が四国避難所連合を形作っています。いわゆる国家連合、と言うとわかりやすいですかね。そして市長国というのは、いくつもの避難所が集まって形成された都市国家のことです」


 避難所の集合体が市長国であり、その市長国が四国避難所連合を構成しているってことかな?


 つまり小国とはいえ市長は一国の『王』なのか。ならば王である市長のさらに上に君臨する夢野はさしずめ諸王の王、いわば皇帝だな。


 ただし議会があるということは連合長の権限はそれほど強くはないのだろう。


 まあ連邦国家のくせに強力な中央集権体制を敷いていたどこぞのソ連とかいう例外があるように、議会があるからといって連合長の権限が弱いというわけじゃないかもしれないが。


「私は連合長ですが、高松(たかまつ)市長を兼ねています。というのも連合長は市長の中から五年周期で選挙によって選出されるという決まりになったので。ちなみに市長も避難所を運営する覚醒者の中から選挙で選出されましたが、五年任期の連合長とは違って市長は終身です」


 四国避難所連合は古代の王政ローマのような選挙君主制の国家ということになるな。


 選挙権者と被選挙権者の範囲はどれくらいなんだろうか。国民全員なのか、はたまた市長だけとか?


「ある程度は貴国のことを理解出来たよ。それで本題に入るが、貴国は我が国に通商を求めてるんだっけ?」


 すると連合長の夢野は首肯した。


「ええ。双方に利がある貿易の提案をしに参りました」



 市長国による国家連合なのだから国名は『避難所連合』ではなく『市長国連合』の方が適切じゃないかと疑問に思われた方がいるかもしれません。


 なので国名を『四国避難所連合』にした理由について軽く触れさせていただきます。興味のない方は読み飛ばしても大丈夫です。


 元々、四国に誕生した統一国家の国名は『四国()()()連合』ではなく『四国()()()連合』とする予定でした。


 しかし『市長国』と『首長国』が大変紛らわしく、そのため国名を『四国市長国連合』とすると『アラブ首長国連邦』と語感(?)が似ていてややこしいため、国名は『四国避難所連合』とすることにした次第です。


 市長国と首長国が紛らわしいのなら、『市長国』ではなく『市国』にすれば良いのではないかとも考えましたが、それだと国名が『四国市国連合』となり同音語が続いてしまうので熟考の末にこのような形にさせていただきました。

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