確信
雨の降る午前三時、アルバはパブのカウンター席で目を覚ました。
「あたし、ここで寝すぎだな……」
微笑するアルバの目は紅く腫れていた。ここで昨夜アネラと泣いていたことをはっきりと思い出す。まだ夢の中にいるアネラの抱きしめている手帳。娘への愛に、彼女は溢れている。今彼女が見ている夢が、娘との夢でありますように。アルバはそっと祈った。
アルバは外に出た。雨雲に透けて見える暁の空。紅い紅い、その空。アルバ。彼女自身が創り出したこの幻想的な世界。まだ覚醒していない、微睡の中で見えるこの景色。新しい世界を迎え入れることができる。
暁を創り出してよかった。彼女は心からそう思った。
そしてトワイライトの風が吹く。その時、過去の戦友の顔が胸をよぎった。
「トワイライトが、燃える……!」
思わず声に出したアルバ。戦友は今、遠く離れた場所で戦っている。孤独に、戦っている。そんなことをアルバが放っておけるはずがなかった。ルスワールは暁と同じくらいに燃えている。
だったら、戦える——!
パブの中に入り、起きてきたダスクとアネラ、マルクスにアルバは事情を話した。
三人とも真剣な面持ちで、アルバの話に耳を傾ける。前回の大戦争を、マルクス以外は知っている。だからこそダスクとアネラは時々暗い表情となった。
「——ということなの。ダスク。アネラ。お願い。あたしと……戦ってほしい」
アルバの頭が深く深く下がる。ダスクとアネラは顔を見合わせて、決意した瞳でグッと頷いた。
「絶対、私達は負けない。この世界は、私達が支配する。それを運命にしてみせる……!」
宣言するアネラの瞳の中にある黒く艶めく玉は、感情に揺れていた。この世界に綺麗事はいらない。そのことは、三人が一番よくわかっていた。
そしてアネラは、ある一つの小瓶を取り出した。
「何、それ……?」
アルバが訊ねる。アネラの手に握られているそれは、海をまるごと閉じ込めたかの様に青く深く輝いていた。それが朝陽を反射して、やさしく煌めく。
「海のハーバリウム。この世界の全てが、素直に、純粋にここに現れる。あとはね、もう一人エステラから呼び出したい人がいるのだけど……」
アネラが海のハーバリウムを掌の中で転がすと、微かに波の音がした。
「……星々の従者」