表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

兄というものは (弟より)

作者: りつん

俺がものごころつく頃、ちょうど両親は仕事に追われ、

姉と兄が俺の世話を焼いていた。


ごはん、風呂、寝かしつけに保育園の送り迎えまで。

それ以外も姉と兄の後をくっついて回った。

姉は俺より幼い妹の世話にかかる事が多かったので、

俺は必然的に兄と過ごすようになった。


いや、兄に四六時中ベッタリ纏わり付いていたと言うのが的確か。

遊びたい盛りの兄は、たまに不満そうにするものの、

俺を邪険にする事なく、構ってくれてた。


だから俺は、兄ちゃんとは、そういうものだと思っていた。


ところが、ある時期から、兄はあまり俺に構わなくなった。


それもそのはず、兄に彼女が出来たのだ。


別に四六時中イチャイチャしてる訳じゃないが、

勉強、友達、彼女に時間を取られ、俺に構う暇が無くなった。

単純に俺が成長して、手がかからなくなった、という事でもあるが。


一緒に遊んだり勉強してくれない。

一緒に出かける事も減った。


何となく気にくわない。


俺はブラコンではない。

だから、兄に彼女がいるのも、彼女と楽しそうなのも、

羨ましいと思う事はあっても、彼女さんに敵愾心を持つ事は無い。


でも、何かモヤモヤするんだよな・・・。


そんな俺に友達は呆れた顔で、

「兄ちゃんは、母ちゃんじゃないんだぞ。」

って忠告してきた。


母ちゃん?

兄ちゃんが?

何言ってるの?

当たり前だろ、知ってるよ、そんな事。

だって、兄ちゃんは、

・・・?

あれ?


え?


うわっ!マジか・・・


兄ちゃんは、母ちゃんじゃない。


そりゃそうだ。


小さい頃から俺の世話をしてても、

俺を褒めたり、叱ったりしても、

兄ちゃんは、母ちゃんじゃない。

そんな当たり前の事に今更気が付いた。


そうか、兄ちゃんを母ちゃんみたいだと思ってたのか、俺。

アホだな。


近頃イライラしていた俺がしょんぼりしていたからだろうか、

兄ちゃんが心配そうに、俺にどうしたのか聞いてきた。

俺はなんて答えていいかわからないまま、

とりあえず、

「兄ちゃんは、母ちゃんじゃなかった。」

と言ってしまった。


兄ちゃんは盛大に?を飛ばしながらポカンとするし。

近くにいた姉ちゃんや妹には、アホの子を見るような目で見られるし。

後から話を聞いた母ちゃんには、涙ながら抱きしめられるし、

控え目に言って、俺的には修羅場だった。


それも落ち着いた頃、俺のモヤモヤも消えていた。


モヤモヤが消えたのは良かったが、ここで一つ問題が出来た。


普通の兄弟って、どんななの?

どんな距離感で、何を話せばいいの?


母ちゃんじゃない兄ちゃんと、今まで通りに接するのは、変だろう。


うーん、と悩む俺に、また兄ちゃんがどうしたのか聞いてきた。


当事者の兄ちゃんに、何て聞けばいいかわからず、

「母ちゃんじゃない兄ちゃんがわからない。」

と端的に答えてしまった。

またもや兄ちゃんは盛大に?を飛ばし、

姉ちゃんや妹には、もうダメだコイツって目で見られるし。

後から話を聞いた両親には「皆大事な私たちの子どもよ!」と

謎の宣言も受けた。


そんな俺に友達は

「・・・お前はただのブラコンだ」

と、またもや呆れた顔で言った。


そうか、俺、ブラコンなのか。

だから、モヤモヤしたり、悩んだりしたのか、と腑に落ちた。


俺は、今度は間違えないぞ!と、

兄ちゃんに「どうした?」と聞かれる前に、兄に向って宣言した。

「兄ちゃん!俺、ブラコンなんだ!」


その後、度重なる俺の挙動不審さに、家族会議が開催された。


解せぬ・・・。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ