女子会
琴刃と演劇観に行ってバイブスいとあがりける私は、ソッコーで私と琴刃と美白先輩のLINEグループ作って、ソッコーで次の日カラオケ行くって決めた。
昼十二時半、駅前に待ち合わせ。でも私とかマジ早く琴刃と先輩に会いたくて会いたくて早く来すぎた。と思ったら、美白先輩が噴水の前にいて超焦った。
「先輩こんにちはっ。昨日はありがとうございました。てかマジ早くないすか? 来るの」
「き、緊張して早く着きすぎたの。ああ、どうしましょう。ねえ、雷華さん、今日の私の服、変じゃないかしら?」
先輩は雪みたいに真っ白なコートに身を包んでる。ボトムスには私が履いてるようなミニスカじゃなくて水色のロングスカート履いててマジ清楚。
「めちゃくちゃ似合ってます、つか、めっちゃ気合い入れてきてるじゃないですか」
「当然よ。だって雷華さんと遊ぶのは初めてだし、それに、琴刃さんが来るんですもの。私服がダサイ奴だなんて思われたくないじゃない」
「琴刃はそんなこと思わないっしょ」
「そ、そうだけど、万が一があったら困るでしょう」
少し頬をふくらませる先輩を見て私は、琴刃モテてんなーと思う。
「そう言えば私、琴刃の私服って見たことないんすよね」
「あら、私もよ。今年の秋、連休に、琴刃さんと市の図書館にご一緒したのだけど、そのときも制服だったわ」
そんなことを話しているうちに琴刃がやって来た。やっぱり今日も制服を着ている。でもマジなんも問題ない。どんな服着てても琴刃は琴刃だし、制服琴刃もマジかわいいから。
三人そろったところで私たちは場所を駅近のカラオケ店に移し、それぞれ好きな飲み物を注文するとともに、細切りポテトとかもちポテマヨコーンピザとかハモンセラーノとかテキトーに注文した。
美白先輩はカラオケにあんまり慣れてない感じで、デンモクの操作にマジとまどってた。でも歌はめっちゃうまい。美声。つーか、この人、ミュージカルとかもやろうと思えばできるっしょ。マジ才能ありすぎ。
一時間も経てば歌うのにも飽きてきて、曲垂れ流しにしたまま、しゃべりがメインになってくる。
「てか先輩、モテるっしょ」
「モテないと言えば嘘になるわね。でも、モテるってそこまでいい状態じゃないわよ」
先輩は斜め下へ向かってため息をつく。
「好きでもない人に言い寄られても迷惑なだけ。それに、私の好きな人はちっとも私の気持ちに気づいてくれないの。ねえ、琴刃さん、私、どうすればいいのかしら?」
「すみません。私、色恋沙汰には疎くて、その、わかりません」
「いやいや琴刃だってモテるっしょ」
顔立ちは整ってるし、長い黒髪なんていつみてもサラサラだし、勉強もできて知性みあふれてるし、人の悪口とか言わないし。モテないわけがない。でも、琴刃は力なく笑って、
「私、ヤクザの娘ですから」
と言った。
私は無性に腹が立った。琴刃にじゃない。琴刃のクラスの連中にだ。
「そんなことで琴刃を諦めるとか、そいつらバカじゃん」
「そうね。低能と呼んで差し支えない方たちね」
先輩は氷みたいな微笑を浮かべてそう言った。マジ怖い。先輩ってもしかしたら超絶ヤバイ人かも。
「てかさ、私気づいちゃったんだけど、もしかして三人とも彼氏いない説?」
「そのようね」なんでこんなに冷静なんだろ、この先輩。普通もっと焦ったり落ち込んだりしない?
「これマジでクリスマスどうします? またこのメンツで集まります?」
「そうしましょう」
先輩は即答した。でも琴刃はなんでかわからないけど深刻な顔してる。
「どったの?」
「ごめんなさい。私、二十五日は遊べないかもしれません」
「え? マ? もう予定入ってた? てかその予定って恋愛系?」
「れ、恋愛は関係ありません。でも、その日はちょっと出てみたいイベントがありまして」
詳しく話を聞くと、クリスマス当日の二十五日、日曜日、琴刃行きつけの喫茶店「花炭」で読書会が行われるってことみたい。それに参加するかどうか、琴刃はマジ迷ってるらしくて、私は、そんなの出たいなら出ればいいじゃんって思ったからそう言った。
「私が行ったらお店やほかのお客さんの迷惑になるかもしれないので、迷ってます」
「迷惑って、琴刃、迷惑なこととかしないじゃん」
「それはそうですけど、でも」
琴刃は言葉を探しながらしゃべる。
「もしその場に、私がヤクザの娘であることを知っている人がいたら、どう思うでしょうか。委縮したり、不快に思ったり、できるだけ関わりたくないと思ったりされると思うんです」
「そんなの、琴刃何も悪くないじゃん。行きたいなら行くべきだよ。そうっすよね、先輩」
すぐ同意してくれるものだとばかり思っていた。けど先輩はめっちゃ切ない目してて、なんだか悲劇のヒロインっぽい雰囲気醸しだしてて、突然のシリアスに私マジ戦慄。でもって部屋には流れてるバラードの旋律。
「一つ、聞いてもいいかしら」
「はい」
「琴刃さんはどうしてその読書会に参加したいのかしら?」
「課題本がサリンジャーの『ナインストーリーズ』で、お気に入りの作家さんだから、だから、出てみたいと、思いました」
琴刃がそう答えてから、微妙な間をおいて先輩は尋ねた。
「本当にそれだけ? 他にも理由があるんじゃなくて?」
琴刃がひざの上でスカートごとこぶしを握る。
「私は――」
瞬間、乱暴な音を立ててドアが開いた。この後すぐ、私は思い知らされる。琴刃が何者であるかを。




