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ヤクザの娘行きつけの〇〇  作者: 仙葉康大
第二章 ヤクザの娘行きつけの図書室
11/50

成績表に並ぶEの文字

 胃が痛い。


 食卓には、コンソメのスープとエビとマカロニのグラタンと生野菜サラダと、模試の結果を記した紙。


 お母様はグラタンにフォークを刺すだけ刺してから言った。


「説明してちょうだい」


 模試の成績表に並ぶEの文字は、志望の大学に入ることが現時点では絶望的であることを示している。


「ごめんなさい。今回はヤマが外れてしまって」

「あなた、この一年E判定しか取ってないじゃない。中学のときはあんなにできる子だったのに。どうするの、これ」

「どうするってお母様、私、まだ一年よ。そんなに焦らなくてもいいんじゃないかしら」

「来月からは二年でしょっ」


 お母様が食卓を叩いた。


「三年になってからがんばったって遅いのよ。あなたが目指しているのは医学部なのよ」


 実のところ私はそんなに目指していない。けれど、他に行きたい学部があるわけじゃないから、お母様の言う通りに医学部志望ということにしている。


「こんな成績じゃ浪人したって合格できないわ」


 お母様は目を吊り上げてさらに続ける。


「そもそもあなたは――」


 お母様の説教をひとしきり聞いて、やっと夕食が食べれると思ったところで、玄関の方からドアの開く音が聞こえた。お父様が帰ってきたみたい。


「いいところに帰って来たわ。ちょっとあなた、これ見てください」


 お母様は模試の成績表を持って玄関へ行ってしまった。

 その隙に私はとっくに冷めたグラタンを食べる。


「ごちそうさまでした」


 半分ほど残してしまったけど、もう胃に入らない。


「あなたからもあの子にもっと勉強するよう言ってやってください」

「言ってどうにかなることじゃないだろう。そんなことで僕をわずらわせないでくれ。ただでさえ研究論文の締め切りが迫っていて忙しいのに」


 言い合いしながら、お母様がお父様と一緒にリビングへ戻って来た。私は逃げるようにキッチンへ向かい、グラスに水をくんで、お腹の調子を整える胃薬を飲みこむ。


 背後から聞こえるのはお母様の金切り声とお父様のため息。

 胃はまだ痛いまま。


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