信じて送り出した兄が……【夏のボケー2020】
※一部の方にとって不快になるかも知れない表現が有ります。 ご注意下さい。
この作品は某企画に便乗した、悪質誤認作品です。 ホラー要素はひとっつも有りませんので、お気をつけ下さいますようお願い申し上げます。
ある夏の日の事です。
「はっはっは、外せない用事で参加できず、残念だったな! 俺は楽しんでくるぜ!」
「はいはい。 終電に合わせて駅へ車で迎えに来てあげるから、頼んだブツをサークルさんから忘れず分けてもらってきてね?」
「任せろ! 我が妹よっ!」
お盆の頃にあわせて催される、漫画の祭典。
そこへ早朝から参加する大荷物を抱えた、馬鹿兄を見送りに、いかにもな田舎の駅から送り出します。
暑苦しい言動とは裏腹に、男としては少し小さめの身長でいて、なで肩。 しかも絶妙に中性寄りの男性顔。
「あなたのお兄ちゃん、よく見ると可愛いね」とか女友達にも言われた事のある、でも女と勘違いするには足りない馬鹿兄。
それが駅の入り口へ消えて行きました。
私達兄妹はいわゆるヲタク。
厳密には兄がはまり、私……妹も同じ趣味にはめられ、なんだかんだと兄妹仲は悪くないです。
無理矢理似た趣味に走らされたと言えば被害者ぶれますが、実際のところは娯楽の少ない田舎。
そんな所で家にこれしか無いよと、ヲタク向け冊子を渡されれば飛び付くしか無いのです。
それで先ほどのやり取りとなった訳ですが、徹夜組はダメ、絶対。
その精神を堅持するなら、こうして田舎からの参加でも始発電車を使うしか無いのです。
田舎からの始発参加はけっこう大変で、会場には10時や11時到着なんてザラ。
アクセスの悪いところなら、昼過ぎ到着とか本当に笑えない。
本気の地方民なら都内に前日入りして、宿へ泊まってから参加。 そんなのも居るとか。
それであの会場へ行っても、サークルさんの事情やら内容に問題があって頒布中止やら、単純に用意した数が終わったやらで、目当ての漫画を分けてもらえない可能性が有ります。
ですが、あの馬鹿兄なら中止されていなければ入手出来ると信じ、私自身の利益の為にも送り出したのです。
もし入手出来なかったら……と、威圧込みの笑顔を見せておいたので、確実だと思いますが。
おっと、外せない用事。 お盆の行事をやらないと、両親ににらまれる。
少しずらせば、兄妹共々ちゃんとやるって言ったのに、認めてくれなかったんだから……ほんと面倒臭い。
あー、やだやだ。 なんで折角のイベント最終日を、こうも潰してくれたのやら。
え? 私達兄妹の年齢?
……うふふふ、なんでそんな質問がやって来るんでしょうか?
~~~~~~
夜。
あの馬鹿兄はちゃんと終電で帰ってくるとメールをくれた。
だからそろそろ終電の時間だと、駅の入り口を睨んでいた…………んですが。
変わり果てた兄が、そこにいました。
「なんですかね、これ」
ついポロリと、本音がこぼれてしまいました。
「我が妹よ、出迎えご苦労っ!」
馬鹿兄が駅から出てきたのは良いんですが、今朝とは全く違うナニカとなっていました。
「なんですかね、これ」
2度目。
いや、見れば分かりますよ。
でもホントなんですかね、これ。
あ、いやいや。 イベントの戦利品を沢山抱えている姿じゃないですよ? そんなの変化にも入りませんから。
じゃあ何が、なんですかね、これ。 なのかと言いますと。
差し色でえんじ色をした帯風腰リボンで締めた、青白いフリル付きミニ浴衣と下駄なんですよ。 この馬鹿兄が現在している格好。
しかも長い白髪のウィッグを被って女性的メイクも施し、ご機嫌な大きい青色リボンまで後頭部から覗いています。
つまり女装ですよ。
「どうだ、今回はコスプレ参加してきたんだぞ?」
それで、なんで女装コスを選んだんですかね? ドヤ顔してんじゃねえぞ、おい。
「最近人気のコメディ漫画“雪ん子魔法少女 ユキエちゃん”だぞ?」
作品は知ってるよ。 でもそうじゃねえんだよ。
つーか体格もアレで絶妙に似合ってるのが、絶妙にムカつく。
「なんで着たまま帰ってきたの?」
「燃え上がった恋心も、凍えさせてあげる♪ 【えたーなる・ふぉーす・ぶりざーど☆】 ……あれ? やり過ぎちゃった、てへっ♪」
私の指摘なんて気にせず、ユキエちゃんになりきって決め技かまし、あざと可愛く笑う。
…………ああクソ。 可愛いと思っちまった、ムカつく。
「カメラ小僧達からいっぱい誉められて、嬉しくなったから我が妹にもお披露目だ!」
今度は偉そうなポーズで呵呵大笑。
うんうん。 16話に有ったね。 重く悩んでる友達にアドバイスして、悩みが晴れて元気になったのを確認してとった大笑いポーズ。 完成度高いねー。
…………じゃねーよ。
「そのまま家に帰るの?」
「もちろん!」
もちろんじゃねーよ。
「ココ、イナカ。 セケンテイ、ダイジ。 OK?」
「気にしない! だからお前も気にするなっ」
気になるんだよ馬鹿が!
「着替えなきゃ、車出さないからね?」
私のニッカリ笑顔を見て、駅からの逆光で見ても、面が青へとはっきり変色。
「分かった! 着替えるから待っててくれ!」
なんて、慌てて馬鹿の荷物から今朝着てた普段着を引っ張り出して――――
「――――なんでその場で着替えようとしてんのよ! いや車内でも駄目に決まってんでしょ! 駅のトイレを借りなさいよっ!!」
「いやいや、トイレで着替えるのはマナー違反だぞ、我が妹よ!」
「そのマナーの前に、田舎で暮らすマナーを守りなさいよ!! そんな格好をご近所の方に見られたら、一生の笑い者よ!?」
信じて送り出した兄が……。
ユキエちゃんになって帰ってきました。
なんか目覚めちゃったみたいで、今後もイベント時には女装コスで参加するそうです。
あ。 補足として、イベントではっちゃける楽しさに目覚めただけで、別に男色家ではないそうです。
終電じゃなくて、本当は夜更け過ぎにしたかった。
元ネタ?
言っちゃダメですよ。 歌詞関係は厳しくなっているそうですので、運営様から「めっ!」されちゃいますから。
それと、タイトルをわざとアレっぽくしたけど、アレには絶対しない。
色々誤認させられれば良いなと、ふざけた結果です。
※雪ん子魔法少女ユキエちゃんとは、非実在青少年です。
「こんなキャラいねーだろ?」的テキトーさで創作?したキャラクターとなっております。
しかし、どこかの権利に引っ掛かってるよー。 等と、もし知っている又は発見した方は、報告して頂けると嬉しいです。
出来るだけ速やかに、別の名前に差し替えますので。
※※某漫画の祭典では、サークルさんが出している本は販売ではなく頒布です。
販売では商売。 つまり二次創作本の売り上げを、一次創作者へ納めねばなりません。 そして売り上げで生活出来るレベルであれば生業と扱われ税金等も発生します。
ザックリ言えば、色々法的なものが発生しますので、二次創作者は創作物の扱いにご注意下さい。
同人活動はあくまでもファン活動。 趣味の範囲で楽しく行いましょう。