何もわかりません
男は意識を取り戻した。だか男の頭のなかにはあったはずの記憶がなくなっていた。自分が何者であるか、何故こんなところにいて何をしようとしていたのかまったくわからないでいた。
「俺は一体」
呟いてみたところで状況は何も変わらない。
ふと回りを見渡してみる。見たことのない風景がひろがっていた。
「なんだっていうんだ」
自分がおかれている状態が一切把握できないでいる男はそれでも頭をフル回転させて考える。
「焦るな、まずは状況を把握する事だ」
まず、ここはどこだ」
木々が覆い繁っている左側に比べ平原がひろがる右側、さしずめ森の入り口といった感じか、なら平原の方に向かえばやがてなにがしさら人と出会えるのでは、そう考えてみた。だが男は思い付かなかった。人がいないという可能性を。なにがなんだかわからないのにどこかに人がいるという思い込みを捨てきれていなかった。だから誰か他の人と会えることを信じて当てもなく歩きだす。
だがいつまでたっても平原は平原のままであった。果てしなく続いているように見える平原では目標となるものがないたため方向感覚を失ってしまう。本人はまっすぐ進んでいるつもりでもあちこち曲がりくねってしまいどこをどう進んだかまったくわからなくなってしまった。
「これはどうすればいいんだろう」
もうどうすればいいのかわからなくなった男はその場に座り込む。
どれぐらいたったのだろうか日はだいぶん傾いている。明るかった辺りはずいぶんと暗くなってきていた。
「ああ寝てしまっていたのか。暗くなってきていたなあ、これからどうなるのかなぁ」
いろいろと考えては見たものの何か思いつくわけでもなく途方にくれる。
ふと何かの気配を感じて見上げて見ると目の前にいたのはコモドドラゴンを何杯にも大きくしたようなトカゲのような生き物
「ああ、これは詰んだな。何もわからないまま死んでいくのか。そのほうがいいのかもしれないなあ」
ふとそんな思いが男の頭のなかに浮かぶ。
そんな思いを知ってか知らずかそのトカゲらしき生き物は何事もないように男を食らわんと鋭すぎる牙を男にみせながら襲いかかる。
トカゲらしき生き物がいままさに男に食らいついた瞬間トカゲらしき生き物は突如爆音を発しながら爆発した。
「助かったのか?」
一瞬何が起こったのか男は理解できていなかった。
ただ男の頭の中ではどこかで聞いていたであろうあることばがリフレインのように何回も流れていた。
「簡単に死ねると思うなよ」と