79:クロエ合流
レッドリオは、目の前の光景が信じられなかった。魔女との戦いの最中、空間に大穴を開けて乱入したペガサスの馬車から降り立ったクロエは、神々しいまでの光を纏っている。それが神聖魔法『祝福』だと分かってはいるのだが――彼の目には、神話の一場面のように見えた。
「状況を確認します。ここに死傷者は?」
「は……はっ! 負傷者は出ましたが、致命傷を負った者はいません。それも、クロエ様の神聖魔法で回復致しました!」
「よかった……貴方たちは、援護に回ってちょうだい」
騎士団にそう命じると、修道女の格好をしたクロエがこちらに歩いてくる。彼女と直接会うのはひと月ぶりだった。断罪したレッドリオに、みっともなく泣き縋ったのが最後だったか。その時とはまるで別人だが、だからと言ってモモの言う通り魔女に乗っ取られたと思い込むのも早計だった。
「お久しぶりです、レッドリオ殿下」
「……ああ」
こちらに軽く会釈をしてくるクロエに、それだけしか返せない。言いたい事があったはずなのに、言葉が出なかったのだ。何より、それを言う資格が自分にあるのかと。
クロエはそんなレッドリオを気にする風もなく通り過ぎると、呆気に取られているロックの元へ駆け寄っていった。
バチーン!
小気味いい音が鍾乳洞に響く。ロックが頬を押さえてぽかんとしていた。対峙するモモも、クロエ登場からの一連の流れに呆然としている。
「ダメよ、ロック! 彼女とはずっとずっと会いたかったんでしょう? それなのに斬ろうなんて……見損なったわ」
「ちょ、ちょっと待て! なんでお前まで俺のこの姿を知ってるんだよ!?」
慌てるロックに、そう言えば異様に隠したがっていた事を思い出した。確かに髪質が変わって別人のような印象はあるが、服装はそのままだ。何よりクロエは、ロックが今着けている仮面を見た事がある。しかし今の姿で一度も対面した事がないのに、何の迷いもなくロックだと断定できたのはやはりおかしかったが。
「それは、あれよ。えーっと……愛の力?」
「本当かよ、適当だな……」
疑いの目を向けてくるロックの視線から逃れるように、クロエは魔女と化したモモに向き直る。
「と、とにかく! 今までの会話は、イエラオ殿下から預かったこのブローチで聞かせてもらったわ。ロック……貴方、本当はモモと戦いたくなんてないんでしょう? 貴方にとってモモは、誰よりも幸せにしたい女の子なんだものね。そのためにずっと血を吐くような努力をして、今の力を手に入れたんだったよね。
……本当ならきっと、モモを虐めた私の事が許せなかったに違いないのに、変わるんだって信じて見守っていてくれた。誰からも見捨てられて、復讐されても仕方なかった私を、貴方が救ってくれたの。だから……」
「……クロエ?」
「そんな貴方のために、私がモモを――貴方の一番大切な女性を助けてあげる!」
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※書籍情報は活動報告にて随時更新していきます。





