表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
414/475

246:魂の行方

「ヨルダ、私はずっと後悔していました。あのような結末を止められなかった自分、そして私たちの仲を引き裂いた殿下……レッドリオが、許せなかった」


 先ほどとは違い、チェリーは口を開いて言葉を紡いでいる。信徒としてではなく、対等な存在である証を態度で表しているのだろう。

 彼女の言う『レッドリオ』とは殿下……ベニー様の事ではない。他の国でも見られるが、王家は代々先祖の名前を引き継いでいたりする。(今の陛下の名称も『フレオン八世』である)

 そういう訳で、チェリーが「許せない」と言っていたレッドリオも、ヨルダの記憶にあった王太子の方だ。


「けれど私は使命から逃れられない。生きていた頃は王妃としての、そして死して後も聖女としての役割が私に課せられていた。この国の守護神となる……それは、納得して受けた事ではあるけれど。

それでも、どれほど王家に利用されようとも、いつかこの願いを叶えるために、私は時期が来るのを何百年も待っていた。それはヨルダ……私とレッドリオの血を引く王家と、貴女が結ばれる事。国の守護は私が選んだ後継に任せ、貴女、ヨルダを今度こそ幸せに……」


 チェリーの手に頬を愛おしげに撫でられ、私は混乱していた。

 つまりヨルダの魔女化は、チェリーの望むところではなかった。彼女の希望としては、レッドリオ殿下と私が予定通り結婚すべきだと。そしてモモは、『真の聖女』の役割は国家の礎として王家に仕える事のみ……? 虹クリでは、ルートによって結末は様々だが、少なくともモモが聖女となればクロエの魔女堕ちは確定する。


「では、『虹色クリスタル』とは何なのですか? 異世界の乙女ゲームは、この世界における予言の書にあたるものではないのですか?」


 漠然と胸の内にあった疑問を、神とも呼べるその人にぶつけてみる。今生きているここがゲームの中に作られた世界だとはもう思っていないが、だからと言ってまるっきり無関係とも言えない。初代聖女であれば、その秘密も教えてくれるのではないかと思ったのだが……返ってきたのは、嫌悪に満ちた表情だった。


「その遊戯の存在は知っています。何故、あのようなものが向こうで広まっているのかは分かりませんが……私はカラフレア王国の民によって祀り上げられた、祈りの力の集合体。異世界に干渉できる事も限られています。

そう……私がヨルダを復活させるにあたり、想定外な出来事がいくつかありました。異世界に関して言うなら、まさにヨルダの魂はクリスタルを抜け出し、黒江芹菜として転生してしまった事。彼女の命が尽きるタイミングで魂を再びこちらへ呼び寄せる際、同じ時期に死亡した者たちも何名か引き連れてきてしまった事。

考えられる原因としては、カラフレア王国に関する知識の共有です。長らくこの国に神として君臨する私にも分からない……何故、あのような物語が異世界に存在するのか」


 チェリーにも分からないのなら、私がいくら考えてもしょうがない。とりあえず世界が現実なのか虚構なのかは、現時点でそれほど重要でもないのだから。

 分かるのは、チェリーが異世界のこのゲームを良く思っていないらしい事だった。



※ツギクルブックス様より書籍版・電子版、モンスターコミックスf様より漫画版が発売。

※「がうがうモンスター」「マンガがうがう」にてコミカライズが連載中。

※書籍情報は活動報告にて随時更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バナーイラスト
― 新着の感想 ―
[気になる点] 黒江とほぼ同時に死んだ、虹クリプレイヤーたち、か。「モモの前世」の人格がどれほどこの世界をゲームだと思って現実逃避しようとしても、もうやっぱり死んでるんだよな。 (ヨルダの魂を取り戻す…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ