83:教会の返答の裏側
【教会周辺の聖石にヒビがあったとの報告、及び補充の要請、確かに承りました。
ですがイーリス山在住のマスラット=グレースは既に聖教会から除名されており、教会も正式に認可されたものではなく、そのため支援の対象外となります。
クロエ=セレナイト嬢は山奥の宿屋で無為に時間を潰す事なく、一刻も早くナンソニア修道院へ向かうよう――】
牧師様が、聖教会から除名処分!?
この事はロックも初耳だったらしく、かなり驚いていた。わたしだってそうだ……ゲームじゃ他の支教会や神官と同じデータをコピペしただけのモブが、訳ありの人物だなんて普通思わないでしょ。
とにかく聖教会が頼れないとなれば、別の手段で結界を張る方法を考えなくちゃ。修道院行き? 最初から聖石をくれてたら速攻で出立するはずだったんだから、あとあと。
「魔術師に頼んで、魔石で結界を張り直してもらいますか」
シンがこの前にも言っていた提案をもう一度持ち出すが、ロックは首を横に振る。
「最近はダンジョンに参加するパーティーには見かけないし、そうなると雇う事になる。ここの経営も結構ギリギリだし、だからって俺らが払うって言っても女将さんに断られるだろ」
そうなのよね……魔術師もボランティアじゃないんだから、報酬はしっかり請求される。たまに宿賃代わりに魔道具を寄付していってるけど、どの魔術師もそうだと期待してはいけない。むしろ聖教会から除名されるような山奥の教会に結界を張るとなれば、モグリの魔術師崩れが足元を見て高額吹っ掛けてきてもおかしくはないのだ。
(あーもう、畑やトイペみたいに聖石も自給自足できればいいのに……ん? 自分で作る?)
わたしの脳裏に、『クロエ』の聖教会での日々が思い浮かんだ。神力を高めるための修行はもちろんだが、国教である聖教会の仕組みについても勉強させられていたのだ。その中で、聖石を作っている部門を見学していた事があった。
(そうだわ、条件が揃えばここでも聖石が作れる……はず!)
ただし、それには協力者が必要だ。わたしはチラリとロックの方を窺う。昨日から結構お世話になってるけど、それとこれとは別って事で……ダメかな?
「ねえ、ここってすぐ近くに上級者向けダンジョンがあるわよね。
ロック、もしも貴方が相当深くまで攻略済みなら、魔水晶を持ち帰る事ってできるかしら?」
魔水晶とは、上級者向けダンジョンの最深部にしか産出されないと言われる鉱物であり、聖石はこの魔水晶を錬成して作られる。わたしも虹クリのダンジョン攻略で背景に魔水晶が描かれているのを見たけど、まさか素材として思い付くなんて我ながらびっくりだ。前世の知識と、『クロエ』としての経験のおかげだろう。
わたしの提案に、二人は息を飲んだ。
「それって……」
「ええ、聖石を自分で作るのよ」
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