↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

124/475

102:心の整理

 モモが目を覚ましてから、さらに三日が経過した。


 ロックはシトゥム街へ下り、王都から送られてきたモモ宛ての手紙を受け取ってきた。そう言えば彼がシンにも時々貸していた移動用の魔道具(マジックアイテム)、直接見てみれば中に緑の羽が入っていた。村にいた頃いつの間にか手にしていた、不思議な力を秘めた羽だそうで、隣国へ養子入りした後に特注で魔道具(マジックアイテム)にしてもらったらしい。間違いなく、モモが聖鳥召喚の媒介にしていた、あの羽だった。

 モモへの信頼が失われると同時に、その効力も消えていた羽たち。ロックが今も使えるのであれば、つまりはそう言う事なのだろう。男として、格の違いを見せ付けられたような気がした。


(だが、それなら――クロエの気持ちは)


 数枚の板から新しくドアを製作中のダイの脇をすり抜け、教会のレリーフの前に跪くセイ、食堂で昼間から飲んでいるダークを横目に、レッドリオの足は宿の二階へ向かう。モモの部屋の前では、相変わらずシンが通せんぼするように立っていた。という事は、そこにクロエがいる。


「またドアを壊す気ですか。女将にあれだけこってり絞られたのに、懲りない御方だ」

「今はまだないだろう。……様子を見に来ただけだ」

「あら、レッドリオ殿下」


 その時、退出しようとしたクロエと目が合った。急に近付かれたので動揺が隠せなかったが、それに構わずクロエは部屋の中を振り返る。ベッドの上でモモは、学園の寮から持ってきてもらった故郷からの手紙を読んでいた。一枚一枚丁寧に、読み終わってもまた同じ手紙を繰り返し。


「あんなにゆっくり読んでいたら、日が暮れてしまうだろう」

「どうりで休日が潰れるはずですよね……でも、それでこそモモですよ。本当は故郷や家族を何より大切にする、そんな女の子なんです」


 穏やかな笑みを湛えたクロエの眼差しは、恋敵に向けるものではなかった。慈愛に満ちた横顔に、何故か鼓動がうるさく感じる。何か話さねば、と口を開きかけるレッドリオだが、その前にクロエが話しかけてきた。


「そう言えば、殿下はもうモモと話はされました? 何故かあれから、お兄様たちの様子がおかしいんですよ」

「い、いや……まだだが」


 あんなにいい子なのに、と首を傾げるクロエには、曖昧にはぐらかすしかできない。一応、あれからモモと言葉を交わそうとはした。だが王族を前にしてすっかり恐縮したモモは、錯乱したようにひたすら謝っていた……例の口調で。


(まあ、従来の平民とはそんなものかもしれんが……)


 モモが口を利く度に、ゾンビのような顔色で距離を取る側近たち。勝手なもので、騙されても思い出は思い出として美しく残しておきたいらしい。とっくに吹っ切っていたダイは「友達としてなら、結構好きだけどなー」と苦笑いし、シンは一瞬でも引いてしまった自分に罪悪感でもあるのか、逆に進んで会話するようになった。

 レッドリオは……実は彼らほどショックを受けていない自分に驚いている。田舎者丸出しで喋るモモには頭痛を覚えるし、僅かに残った未練も綺麗さっぱりなくなったのだが、自分が恋したあのモモは本当に消えたのだと分かっても、思ったより胸の痛みはなかったのだ。


(真実の愛ではなかったと言う事か……そもそも、真実とは何だ? モモもクロエも隠し事をしていて、しかも前世だのゲームだの、意味の分からないものが真実だとか言い出すし……最早何が真実なのかも分からん)


 全てが疑わしいのであれば、いちいち気にしても仕方がないのかもしれない。それでもレッドリオは、気になってしまうのだ。どうして今更、知ったところで……と自身の不可解な胸の内に戸惑っていると。


「お嬢様、イエラオ殿下がご到着です。お嬢様と二人きりで、話がしたいと」


 廊下に出ていたシンが呼びに来た。



※ツギクルブックス様より書籍版、電子版が発売中です。

※書籍情報は活動報告にて随時更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バナーイラスト
― 新着の感想 ―
[一言] 気にしていないダイは現金だなあwww と思うしシンはまあ好感の持てる振るまいでそのうち友達程度にはモモと打ち解けられそう。 しかし宗教画を眺めて現実逃避しているのとやけ酒しているお前たちはダ…
[気になる点] 核の違いを →格の違い だと思います。
[一言] もうやめて!身勝手な王子と取り巻きの好感度はもうゼロよ!(ノ∀`) 元モモちゃんどうにか幸せになってほすぃ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。