あとがき
このお話をお読みいただいて、どうもありがとうございました。
とんでもない勘違いと鈍感さで、常に明後日の方向に勘違いする楠木拓実君の視点で見せられるひたすらジレジレするラブコメ、いかがでしたか。
作者は、延々何見せられとるんじゃいっ! とばかりに昭和の親父様よろしく心のちゃぶ台を幾度となくひっくり返しました。
一応自分のためにフォローしときますが、どれだけおばちゃん(もしくはおじちゃん)臭さを醸していようが作者は歴とした平成生まれです。念のため。って、あ、平成生まれも幅広いか。
このお話、あまり多くの方の目に留まることなく終わってしまいましたが、作者としては終始男の子目線でお話を進めていくというチャレンジを楽しみながら書くことができました。
ま、コメディですからこんな人いないわなっていうくらい極端なキャラばかり出てきましたが、少年漫画の要素と少女漫画の要素とWEB小説の要素、これらをわたしの脳みその中でごった煮にしてできあがったのがこの作品でした。
主人公の楠木君というのは、なぜか好んでモブキャラになりきっていたり、異常なくらい鈍感で卑屈だったり、かと思えば音楽家ならでのナイーヴさと才能を併せ持ってたりする変な人。
話中でヒロインの羽深さんが電気鰻についてしばしば熱く語っていますが、電気鰻は体の8割を発電器官のために割いており、その高い攻撃力を得た代償として残り2割の頭部に生命を維持するための他の器官が集中しているそうです。そのため顎の下に肛門があるという切ない体の持ち主です。
この高い攻撃力と顎の下に肛門っていうアンバランスさというか尖った特性に惹かれる羽深さんだからこそ、鈍感なのに卑屈でナイーヴで、音楽の才能溢れる楠木くんに魅力を見出したのでしょうね。
その点についてはジンピカちゃんも同じ穴のムジナでした。
もう一つの「TS女子になるって、正直結構疲れるもんですよね。」という作品は、男女の違いに着目したのが作品を書くきっかけだったのですが、この「バンドマンと学園クイーンはいつまでもジレジレしてないでサッサとくっつけばいいと思うよ」では、心の中の核となる部分って、きっと男の子も女の子もそんなに変わらないんじゃないかなと思って書きました(とりあえずどっちもタイトルがただの感想文でスマン!)。
本命の好きな人がいるのに、自分に好意を示してくれる魅力的な異性が現れたら、きっと男の子も女の子も変わらず気持ちが揺らいで優柔不断になったり、はたまた打算が働いたりすることがあるんじゃないかなー。もちろん個人差はありますけどね。
お話は概ねバカバカしいことばかり書いてた気はしますが、そういうところは描けていたのじゃないかなと思ってます。
あとはこのお話の中でしばしばバンドマンの舞台裏蘊蓄を鬱陶しく語ってしまっていますが、これでも何度も削ったんです。そのことが伝わらないくらいまだまだ鬱陶しいのは認める!
そんな中でもちょっとした小ネタですが、作中、楠木君が掛けてる伊達メガネが白山眼鏡店製というエピソードがありました。実際ミュージシャンの間でも知る人ぞ知る実在の人気店でして、実はかのジョン・レノンのアイコンとも言える丸眼鏡は白山眼鏡店製であります。マニアック過ぎてどうでもいいエピソードですけど、オシャレに気を遣ってるバンドマンで音楽マニアの楠木君には、どうしてもここの眼鏡を掛けて欲しかったんです。
そんな音楽オタク向けな側面もあったこのお話。読んでくださったみなさまのおかげで、無事幕を引くことが出ました。
「TS女子になるって〜」の方は、良きにつけ悪しきにつけ女性作家ならではのという枕詞と一緒に語られることがありましたが、こっちのお話はいかがだったでしょうか。
あまり多くの人には読まれてないので目論見としては失敗だったのかもしれません。でも主観としては、作家の性差による違和感はあまり感じさせない作りのお話にできたかなと感じています。技術的な面でうまくいってない面とか、性差と関係ない違和感はあるかもしれませんが。
次に新作を書く際には普通に女の子視点のお話にしようかなと思っていますが、男性読者にも読んでもらえるような作品になったらいいな。




