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第四十六話 大丈夫だよ。ららなら 【挿話 数日前の羽深さん】

「ミカァ〜、もう無理かもぉ〜」


「え? 今度は何よぉ〜、らら。なんかあったの?」


 先日、好きな人ができたと言ってきたららが、悲壮な顔つきで泣きついてきた。何だろう。まさかこのららが振られるようなことがあったとも思えない。


「あのね、頑張ってみたんだ。ミカに教えてもらったように真似もしてみたし。ビスコッティ焼いてあげたりしたんだ。でも嫌われたかもぉーっ」


 ららったら、今にも泣きそうな顔になってる。

 嫌われた? 何でまたそんなことに……。うーん、ららのことだから、どうせ突っ走った挙句自爆して勝手にネガティブになってるだけなんじゃないのかなぁ……。


「何があった? とにかく話してみなよ」


「うーん。あのね、逃げられちゃったの。そしてわたしも逃げたの」


「は? 意味分かんないんだけど?」


「頑張ってるのに、拓実君たら全然振り向いてくれなくて、わたしちゃんとできてないんだって、悔しくなって帰っちゃったんだ。もう悔しくて悔しくて泣いちゃったよぉ」


「帰った? 学校からってこと?」


「そ。なんかもう何もかもうまく行かない気がして、むしゃくしゃして帰っちゃったの」


 はぁ〜、ららったら何やってるの? まったくもうこの子ったら。帰ってきちゃったの、ってかわいく言っちゃってもう。


「それで?」


「うーん。あれからすっかり気まずくなっちゃって、全然拓実君と話せてないんだよぉ〜。もぉ〜、どうしたらいいのぉ?」


 今にも泣き出しそうな顔をしてららが問いかけてくる。

 うっ、その上目遣いはっ……。くぅ〜、かわいいなぁ、もぉ。これやられてころっといかない男子って一体どんなよ? その……拓実君とやら? やばくないかな、その鈍さは。


「はぁ〜、困ったわねぇ。いや、でもららっ! 諦めたらそこで試合終了って安西先生も言ってたじゃん。諦めてないで頑張りなよ」


「えぇ〜、誰それ? てかもう頑張るとか無理だよぉ。超恥ずかしいんだもん。拓実君とおんなじ空気吸ってるだけでドキドキするんだよ?!」


 くぅ〜、かわいいこと言っちゃって。そうかそうか、ドキドキして恥ずかしいか。うんうん。


「ドキドキするってことはまだまだ諦め切れないってことでしょうが。四の五の言ってないで根性見せろやっ! はい、これで一件落着〜。それよかさ、これ、この抹茶エスプーマ善哉っていうの、注文してみない? 美味しそうじゃん」


 ららに呼び出されて、前々から気になっていたこの店、甘味処うさぎ屋に付き合ってもらっているのだ。ここで一部の甘味愛好家に評判なのが看板メニューの抹茶エスプーマ善哉だ。


「それよかってミカ、酷くないっ⁉︎」


「酷くないっ。あ、すみませーん、抹茶エスプーマ善哉を二つお願いしまーす。お、ねぇねぇ、今出て行った双子の女子高生って、ディセットのモデルやってる子じゃなかった⁉」


「もぉっ。知らないっ」


 ぷぅっとほっぺを膨らましてヘソを曲げて見せるららのかわいさったらない。だけど発破かけときゃこの子はちゃんと頑張る子だ。


「大丈夫だよ。ららなら」


 そんなことがそれから何度かあって、話によればうまく行かなくて学校に行く気力すら失せたこともあったらしい。

 重い……重いよ、らら。あんたいくら初恋だからって拗らせないでよね、お願いだから。

 あのららが学校サボるって、どんだけのめり込んでるのよ。まあそれでも、結局ららは最後には頑張ると言って、実際そのとおり諦めずに頑張っているみたいだけど。

 何でもライバルが出現したとかで最近はお尻に火がついている様子。しかもそのライバル、かなりの美人なのだとか。

 ららと比べられる美人なんてそうそういないとは思うけれど、そのららが好きだっていう男の子、どんだけモテんのよ。ららの話を聞く限りじゃ結構変人っぽいんだけども。


 そんなららが、なんとついにその彼とデートの約束まで漕ぎ着けたという。

 頑張ったね、らら。ららの初恋が成就することを心からわたしも祈っているよ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ご投稿お疲れ様です。  二つの世界がクロスする時、世界が動き出すー。 抹茶エスプーマ善哉は世界を越えた!  絶対ツッコミどころ誘導されてる! 平行世界ってこれだったの!?
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