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第三十四話 ドキドキしちゃう

 いよいよもって本日人生初デート。

 昨夜は若干鬱が入ってたが、一晩寝て気合を入れ直した。

 って事で、一応いつもの五割増しくらい時間をかけて歯を磨きワックスを駆使してヘアをキメる。


 いつもかけている黒ぶちのごっついメガネは実は伊達。

 バディ・ホリーやエルビス・コステロへの《《オマージュ》》ってことにしてる。じゃないとまるでただの中二病みたいでイタいから。ミュージシャンの間じゃ定番な白山眼鏡店はくさんがんきょうてんのものだ。


 ライトグレイのパンツにシャツとカーディガンの無難目な服装にしておく。ただしデートなので一応かなり背伸びして全部一張羅のTHOM BROWNEでキメた。 

 ま、実は全部オークションなんかで安く購入したものだけど高校生のワードロープとしちゃちょっと贅沢だ。


 ミュージシャンって楽器にはお金をつぎ込むけど見た目汚い輩が多いし、オシャレからは対極にあるような人間も結構いる。

 僕はミュージシャンもちょっとはオシャレしようよと思ってるタイプ。学校ではひたすらモブキャラまっしぐらなんだけど。


 待ち合わせは大きめの商業施設がある駅にした。シネコンもあるが、お目当の映画"魔女のお宅で急に便意"は単館上映でここでしかやってないのだ。それにしてもなんつうタイトルの映画だよ。


 僕は約束の時間よりよりだいぶ前に家を出た。

 と言ったって決して初めてのデートで張り切りすぎたわけじゃない。せっかくの初デートだから、曜ちゃんにちょっとしたプレゼントでもしようかと雑貨屋を物色してみるかと思ったのだ。


 欧米の映画なんかだと、途中で花を買っていってプレゼントするなんてシーンを見かけるけど、あれはデート中邪魔にならないのかいつも気になっていた。

 なので却下。かさばらない小物がいいのじゃないかと考えたわけだ。


 店内は雑然としていそうでよく見ればジャンルごとにまとめてあって意外にものを探しやすい。

 アクセサリとか身につけるものはちょっともらう側も困るかもしれないので、どんなものがいいのだろうかと考えながらブラブラと店内を物色する。


 なんとなく思いつきでプレゼントでもと思ってみたはいいけれど、考えてみたら人にプレゼントなんて送ったことないからさっぱり分からない。


 そっか……。

 プレゼントっていうのとは違うが、誰かに何かあげたと言ったら羽深さんにイヤモニのクリップあげたくらいしか思い浮かばないや……。


 経験値がないもんだからラッピングのことやらメッセージのことやらどうしたらいいのか分からず、とにかく慌てふためいて奔走したなぁ。ふふ。


 あ、これ。

 目に留まったのは弁当箱を入れるランチボックスバッグだった。

 いつも羽深さんが持ってきてくれる弁当はショッピングバッグに入っているけど、これだったらちょうどよさそうだなぁ。


 いつも昼食のお世話になっているんだから、お礼にプレゼントしてもいいかもしれないな。ということでなぜか曜ちゃんとのデートのために来て羽深さんにお土産を買うというおかしなことになったのだがどうしてこうなった?


 それで曜ちゃんには結局何をあげていいのか全然分からず、無難にちょっとかわいいチェック柄のハンカチを購入した。まああって困るもんじゃないしな。


 さて結構いい時間にもなったし、そろそろ行くか。

 駅の東口階段下が指定の待ち合わせ場所だ。約束より15分ほど早いがまあいい時間だろう。待ち合わせ場所で手持ち無沙汰だしゲームでもするかなとスマホを取り出したところで曜ちゃん到着だ。


「待たせちゃったかな? ゴメンねっ」


「まだ時間になってないよ。早めに到着しただけだから全然問題ないよ」


 そういう僕のことを目をパチクリさせて曜ちゃんが見ている。


「な、なんだか制服の時と雰囲気違うね、タクミくん……ドキドキしちゃうな」


 と、いきなりまたこっちのハートを鷲掴みにするようなことを言われた。

 こっちの方がドキドキだっつうの。


 こ、こういう時は女性のことを褒めなきゃいけないんだよな、確か……。まあvia漫画の知識だけども。


 曜ちゃんの今日のいでたちは淡い水色のタートルネックにミドル丈のハウンドトゥース柄スカートにベレー帽。バッチリキマってるし似合ってる。


 ピッタリしたセーターがスレンダーな体のラインに寄り添う。小さすぎず大きすぎず頃合いのちょうど良い胸の曲線が……ゴクリ……き、きれい……。


 だからといって思ったまんま、しかも直に見たわけでもないのにおっぱいがきれいですねなんて褒めようものならセクハラ騒ぎ必至だということくらいは僕にだって分かってる。


「曜ちゃんも服、よく似合ってるよ。キレイ……」


 おっと最後のはまたうっかり心の声が漏れてしまっていたようだ。ほんとにセキュリティが甘いな、この口は。

 言ってしまってから自分で顔を真っ赤にしている。これはまるで羽深さんみたいじゃないか。


「ホ、ホント……? うれしぃ……」


 曜ちゃんも最後の方は尻すぼみになってモジモジモニョモニョしている。この脆弱な僕の口が余計なこと言うから曜ちゃんを困らせちゃってるじゃないか。


「じゃ、行こうか」


 いざ魔女のお宅で急に便意を観に……。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ご投稿お疲れ様です。  今話を読んで思うことは一つ、  なんつうタイトルの映画だよ!  デートで観に行くタイトルじゃねぇ。
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