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侍従カスパー3

「おい、扉が開いたぞ!あいつ馬鹿だな。早く中に押入れ!」

「な、早く閉めろ!何やってるんだ!」


突然開いた馬車の扉に両者がそれぞれの反応を見せているところに、カスパーが降り立った。


「『ハイシールド』」


カスパーはまず守りの薄くなった馬車に結界を張った。これで気兼ねなく戦うことができる。カスパーは実戦は久々であったが、ただの人間に負ける気はしなかった。怪我を負って倒れている者も含め、20人の襲撃者全てに照準を合わせると魔法を放った。


「『ウィンドショット』」


親指大ほどの空気砲が19人の額を貫きその命を刈り取った。残る一人は両手足を貫かれ、その場に倒れこんだ。


「お前がリーダーだな。どこの者だ?誰に頼まれた。」

「い、言う訳ねーだ、ろ…」

「そうか。まあそれでも構わないが。」


カスパーの目が一瞬怪しく光ると、襲撃者の男はビクンビクンと痙攣を始めた。


「抗うと辛いぞ。私の目を見ろ。」

「あ、が…うぁ…」


男はカスパーの命令通り彼の目を真っ直ぐ見つめ返した。しかしその目は既に虚ろであり、口からは泡を吹いていた。カスパーが目を閉じると、男の体は自由になったが、彼が再び意味のある言葉を発することは二度となかった。


「狂ってしまったか。久々に使ったから力加減を間違えてしまったようだ。しかし必要な情報は得ることができた。」


カスパーは呆然と成り行きを見つめていた護衛達にそれぞれ目をやると、優しく話しかけた。


「今のは忘れるんだ。良いな?」

「「はい…」」


今度は力加減に成功し、護衛達は全員狂うことなくカスパーの命令を聞き、先ほどの出来事を忘れた。彼らの記憶には、カスパーが一瞬にして20人もの襲撃者を沈めた所までしか残っていなかった。



ーーーーーーーーー



邸に戻りローゼリア襲撃の報告をすると、クラウスが飛んできた。


「ローゼリア!聞いたよ、怪我はない?」

「大丈夫ですわ、クラウス兄様。カスパーが全員倒してくれたの。私は馬車の中にいて見てなかったけど、20人もの襲撃者を一瞬で沈めたらしいわ。」

「カスパー、よくやった。それにしても街中で20人か…敵もなり振り構っていられないのかな。これまで以上に外に出るのは危険だよ、ローゼリア。」

「はい。お父様も警戒しています。しばらくお茶会は中止にして邸にいるよう言われました。」

「よかった。それなら一安心だね。なるべく僕の側にいてね?邸の中だったら、僕が百人の襲撃者からでも守ってみせるよ。」

「兄様カッコいい!一緒にいる!」


その日の夜、カスパーは王都にある裏道の一つを歩いていた。スラム街に程近い一角。そこは後ろ暗い者達の溜まり場でもあった。


「おい、兄ちゃん止まりな。ここから先、許可のない奴は入れないぜ。」

「…」


背後から突然現れた男に声を掛けられたカスパーであったが、彼は薄ら笑いを浮かべたまま、歩みを止めることはなかった。


「おい、止まれって言ってんだろ!死にてえのか。」

「死ぬのはあなたですよ。」


カスパーは無詠唱でウィンドカッターを繰り出すと、男の首を切断した。首だけがゴロリと地面に転がり、男は立ったまま切断面から血を吹き出し絶命した。首だけを消し炭にし、身体を血溜まりの中に転がしたまま、カスパーはとある建物の中に堂々と入っていった。

五分後。カスパーは衣服に一つの乱れもなく、一滴も返り血を浴びる事なく、入った時のままの姿で建物から出てきた。開け放たれた扉の中を覗けば、そこには首のない遺体が山になっており、そこから吹き出した血液が血の海を作り出し、吐き気を催すほどに鉄の匂いを充満させていた。


「顔がなければ身元も分からないでしょう。人知れず死に行くあなた方は、例え家族がいたとしても、その死を悼む者はおりませんね。」


翌朝。住民に首の無い遺体が道に放置されているとの通報を受け駆けつけた衛兵は、その付近の建物を調べて言葉をなくした。


「な、なんだこの死体の山は…しかも皆首がない。これでは身元も分からん。」

「ここは闇ギルドのアジトだ。中々尻尾を掴ませず、今まで野放しになっていた。この様な惨状を一般人が作り上げられるとは思えない。玄人の仕業だ。恐らくギルド同士の抗争だろうな。」

「じゃあ俺たちの出る幕じゃないって事か。」

「まあ適当に調べて上に報告しよう。闇社会のイザコザは兵士が介入しないのが暗黙の了解だ。」



ーーーーーーーーー



「ご苦労様、カスパー。良い働きね。見せしめの形も良いわ。消し炭にするだけではただの行方不明扱いだものね。」

「ありがとうございます。」

「最近は富に羽虫がうるさくて、良い加減煩わしいと思っていたのよ。この調子で害虫駆除をお願いね。」

「はい。ローゼリアお嬢様に害なす者は全て私の手で消して見せましょう。」

「ふふ、流石ね。頼もしいわ。」


その後、一週間に一度の頻度で闇ギルドの組織が壊滅していった。皆一様に首を刎ねられており、同一犯によるものと推測された。被害にあった組織の共通点は、シュバルツ家に手を出した事。やがて、シュバルツ家に手を出せば組織ごと潰されるという事実が広まり、闇社会の中では「触れざる者」としてその名を口にする事も避けられるようになった。


二ヶ月もすれば噂は広まり、ローゼリアに手を出す闇社会の者は殆どいなくなった。襲撃のリスクも減り、クローヴィスとのお茶会も再開された。カスパーは闇ギルド襲撃の件をシュバルツ家に報告してはいなかったが、アルドリックだけでなく、クラウスもそれが彼の仕業であることを確信していた。その大き過ぎる力を危険視してはいたが、彼がローゼリアに忠誠を誓う限り彼女に危険が及ぶ事もないであろうと、目をつぶった。

規制に引っかかったのでここから8話ほど話を削除しました。全編はアルファポリスに載せていますのでよければそちらでお願いします。ご迷惑をおかけします。

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