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魔力開発7

「もっとこっちにいる予定だったけれど、色々あったしそろそろ帰りましょうか。旦那様にも事の次第を報告しなくては。」

「そうだね、まだ三人で超大型倒せるようにはなってないけど、仕方ないか。」

「諸々の手続きがあるから一週間後に経つわ。それまでは魔法訓練も今まで通り行うから、その間に倒せるといいわね。実力的にも問題ないし今日からは奥地で訓練をするわ。」

「あと一週間か、頑張ればいけそうだね!」

「まずは大型魔獣で連携を練習しよう。」

「うん、頑張ろう!」



ーーーーーーーーー



「この先から森の奥地に入るわね。皆十分に警戒してね。クラウス、大型魔獣の気配は分かるかしら?連携の確認も兼ねて積極的に倒していきましょう。」

「はい!あっちに一匹いるよ。」


その後、ローゼリア達は三人で協力し合い次々と大型魔獣を倒していった。先制攻撃をローゼリアが、後方支援とローゼリアの盾役をクラウスが、そしてとどめを刺すのをレイモンドがそれぞれ担当した。レイモンドのフリージングフィールドは敵の魔法を封じるのに良い手であるが、同時に味方の魔法も封じてしまうためパーティーでの戦闘には向いていなかった。しかし魔法の練習も兼ねてレイモンドは敢えてこの魔法を使い続けた。続けているうちに、この魔法は相手の魔法を封じるだけではないという事がわかってきた。

フリージングフィールドを展開している間は、それ以外の魔法の行使で消費される魔力が少ないのだ。フリージングフィールドを維持するのに常時魔力は消費されるが、それは他の魔法に比べると微々たるものであり、まず先にこの魔法を発動してから他の魔法を使えば魔力の節約になった。

膨大な魔力を保有するレイモンドに魔力を節約する必要性はなかったが、氷属性魔法の形態を確立したいレイモンドとしては、一般的な魔力の持ち主も氷属性魔法を苦なく使えるよう色々な特性を検証しておきたかった。

更に、フリージングフィールド下に置いては同時発動できる魔法の数が増えており、レイモンドの場合はその数およそ二倍。そして周囲の冷気の後押しにより、個々の魔法の攻撃力も何割り増しかになっていた。


「空間を自分の魔力の支配下に置くってこんなに便利なんだね。今までその発想がなかっただけで、他の属性でもできるのかもしれないね!」

「ああ、氷属性魔力の存在が認められたら、そういう研究をする者も出てくるかもしれないな。」

「魔法の歴史が変わるね!兄さんが変えるんだ、本当にすごいよ。」

「兄様すごい!」


「魔法の検証はそこまでにしましょう。超大型魔獣はいつ襲ってくるか予想がつかないの。今日はこのくらいにして、警戒しながら戻りましょう。」


超大型魔獣は木々を超す大きさであるにも関わらず、森の外の物見台などからその姿を確認することは出来ない。ある程度近付かなければ、その気配を察知する事も、目視する事さえ出来ないのだ。いくら切り倒しても翌日には生い茂っている木々といい、超大型魔獣の姿を隠す空間の歪みといい、魔境の森は未だ解明されていない事も多く、それが魔境の森と呼ばれる所以でもあった。

その日、ローゼリア達は超大型魔獣に遭遇する事なく無事帰宅した。



ーーーーーーーーー



奥地での訓練を始めて三日。ローゼリア達は念願の超大型魔獣との対面を果たしていた。その日遭遇したのは巨大な熊の姿をした魔獣。15年前のあの日、ラウレンティアがアルドリックと共に討伐した魔獣であった。


「あれはグレートグリズリー。力任せな物理攻撃で相手の注意を引きつけたところを狙って不意打ちで魔法攻撃を繰り出す頭の良い魔獣よ。皆気を付けてね。」

「「「はい!」」」


巨大な熊の口からダラダラと唾液が流れ落ち、地面に穴を開けた。歩くだけでズシンズシンと地面が揺れるその大きさは以前対峙したグレートボアを二回りは越しており、子供達はその迫力に押されていた。その隙を見逃さず、魔獣はその巨大な爪を立て大きく振りかぶった。


「散開!ローゼリアはクラウスから離れるな!」


レイモンドの号令と共に彼らは腕が振り下ろされるであろう位置から逃げ出した。次の瞬間魔獣の腕が地面に叩きつけられ、嵐のような風圧が彼らを襲った。レイモンドとクラウスがそれぞれ防御魔法を貼りなんとか吹き飛ばされずに済んだものの、魔獣は間髪入れず反対の腕を振りかぶった。二人の防御魔法は間に合わず、巨大な爪の餌食になる寸前、ローゼリアが魔法を放った。


「『フレイムキャノン』!」


ローゼリアから放たれた巨大な炎の柱が魔獣の腕の毛皮を焼きながらその軌道をずらした。すんでのところで直撃を免れた一行は、魔獣が咆哮をあげている隙に後退し態勢を立て直した。


「すまないローゼリア、助かった。」

「ううん、それよりあの魔獣すごく早いよ!これからどうする?」

「フリージングフィールドで相手の動きを阻害しよう。この前の様に、水魔法で相手を濡らしてくれ。」

「わかった!」

「僕は防御に専念するね。」

「いくよ、『ウォータージェット』!」


魔獣が次の攻撃を繰り出す前にローゼリアが魔法を放った。激しい水圧でよろける魔獣を前に、レイモンドがフリージングフィールドを発動した。身体が凍り付き思うように動かない魔獣は激昂し、魔法を放とうとした。しかしレイモンドの魔力に阻害され小石が飛ぶ程度で終わり、それもクラウスの盾に弾かれた。すかさずレイモンドは無数のアイスランスを繰り出し魔獣に向けて放った。氷の槍は魔獣を串刺しにしたものの、まだ致命傷には程遠かった。


「首を跳ねるかしないと死なないかも。とにかく頭を狙おう!」

「私にやらせて!レイモンド兄様、魔獣を拘束してくれる?」

「分かった、『チェインバインド』」


レイモンドは氷の鎖を魔獣に巻きつけた。益々自由に動けなくなった魔獣は狙いをレイモンドに定め、全力でかまいたちを放った。小さいながらも多方向から多数出現した風の刃がレイモンドに襲いかかった。クラウスの盾だけでは対応しきれず、防ぎきれなかった風の刃がレイモンドを切りつけた。切り傷を多数作りながらもレイモンドは魔法の行使を続けた。


「『ホーリーキャノン』!」


レイモンドの魔力の支配を物ともせず、ローゼリアが放った光の大砲は魔獣の眉間を貫いた。魔獣は動きを止め、ゆっくりと身体を傾けさせ、そのまま地面に倒れ伏した。


地響きと共に地面に倒れた魔獣を三人はしばし呆然と眺めていたが、クラウスがはっと我に帰りレイモンドに駆け寄った。


「兄さん大丈夫!?ごめん、防ぎきれなかった。『ヒール』」

「大丈夫だ、たいした傷じゃない。威力は大分落ちていたとはいえ、僕の魔力支配下においても普通に魔法を放ってきたな。フリージングフィールドを魔法を封じる手段としてあまり過信しない方が良さそうだ。そもそもローゼリアは普通に魔法を放っていたし。」

「でもすごくやり辛くて時間が掛かっちゃった。全力でやったのに、細い光しか出なかったし。ごめんね?レイモンド兄様、痛い?」

「大丈夫だ、もう治ったよ。」


「みんなよくやったわね。最後は少し危なかったけど、超大型と対峙してその程度の傷なら申し分ないわ。みんな合格よ。魔力も大分使ったと思うから今日はこれで帰りましょう。」



ーーーーーーーーー



「レイモンド達が超大型魔獣を討伐した記念に、乾杯!」

「「「乾杯」」」


その日の晩餐には三人が倒した魔獣の肉が並んだ。祝いの席に出席したのはキーランドとフリード一家。皆一見楽しそうに振舞ってはいるが、アメリーの一件は皆に暗い影を落としていた。

アメリーは本日王都に旅立ち、残った家族は離れに軟禁され最後の親子の時間を過ごしていた。ラウレンティア達が旅立つと同時に、彼らは屋敷を追い出される予定であった。

なるべく早くここを去らなければ。ラウレンティアは思った。そしてもう二度と戻ってくることはないかもしれない。自分の大切な兄とその家族に自ら手を下したのだから。


「今日中に諸々の手続きを終わらせて、明日には発ちますわ。目的は達成できたのだし。お父様、お兄様、予定より短かったけどお世話になりました。」

「そうか。我が家も寂しくなるな。

…ラウレンティア、また帰って来なさい。私たちはお前をいつだって歓迎するよ、私の可愛い娘。」

「!!あ、ありがとうございます…。いつかきっと、また来ますわ。」

「そうだぞ、遠慮なんていらない。レイモンド達もいつだって修行しに来て良いからな。ここ二ヶ月、お前達が魔獣を倒しまくってくれて正直すごく助かっていたんだ。なんならうちの子になるか?」


フリードの気の利いた言葉に皆笑みがこぼれた。皆の気持ちが落ち着いたらまた来よう、ラウレンティアは思った。

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