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「今日からこの家の娘になるローゼリアだ。皆よくしてやってくれ。」

「まあ!なんて可愛らしいんでしょう!よろしくね、私がお母様のラウレンティアよ。こちらはお兄様のレイモンドとクラウス。私ずっと娘が欲しいと思っていたの。もう叶わないと思っていたのだけれど…

あなたを歓迎するわ、ローゼリア。今日から家族としてよろしくね。」

「…レイモンドだ。僕は忙しいから君にはあまり構ってやれないかもしれないがよろしく。」

「よろしく!僕のことはクラウス兄様って呼んでね。」

「ローゼリアと言います。よろしくおねがいします、お母様、レイモンド兄様、クラウス兄様!」

「!!や、邸の中を案内するよ!一緒に行こう!」

「そう急かしてやるな。ローゼリアにはまだ私から話すことがある。他の者は下がっていなさい。」



ーーーーーーーーー



突然できた大変可愛らしい妹に興奮したクラウスを宥め、三人には退室を促した。


「さて、これが私の家族です。気に入っていただけましたかな?ローゼリア様。」

「敬う必要などなくってよ、お父様。私は今日よりあなたの娘ですもの。家族として可愛がってくださいな。」

「そ、そうか。ではローゼリア、今日からここが君の帰る処となる。基本は好きに過ごしてくれて構わないが、公爵家ともなれば淑女としての教育をしないわけにもいかない。そしてアルビノとして養子に入ったのならば、魔法の手解きも受けてもらいたい。女神の君に人間の魔法など、ままごとも同然かとは思うが、そこは辛抱して欲しい。」

「分かりましたわ。神族の魔法など、ただ体内の魔力を放出するだけで自分の司る属性に沿った極大魔法が出現するだけの捻りのないものですわ。他の神族より遥かに弱い私では上手く扱えませんの。人間の様に少ない魔力で多数の属性を操るような細かな作業、是非とも体験したいですわ。元々私は人間の魂が混ざっているのですから、向いていると思いますわ。」

「放出するだけで…流石は神族だな。」

「そうですわね。私の場合は最弱ですから、ため息で1つ2つの国を消し炭にするだけで精一杯ですのよ。おねえさま達なら文明の1つや2つ滅ぼしてしまいますわ。」

「神々のため息とはなんと恐ろしい…」

「はあ~…」

「!!!」

「ふふ、冗談ですわ。魔力を乗せなければただのため息ですわ!」

「心臓に悪い冗談だ…頼むからもうやらないでくれよ。」

「あら、嫌な思いをすればため息のひとつやふたつ、出るものですわよ?」

「はは…そうならないように努力するよ。」



ーーーーーーーーー



アルドリックとの秘密の話が終わり、ローゼリアはサロンに向かった。サロンではラウレンティアとクラウスが向かい合わせに座り優雅に紅茶を飲んでいた。


「クラウス兄様!」

「やあ、お疲れローゼリア。父様とのお話は終わったかい?」

「うん!お邸を案内してくれるんでしょう?」


クラウスはローゼリアを自分の隣に座らせ、9歳にしては大人びた笑みを返した。


「うん、でもその前に一緒にお茶をしないか?うちの焼き菓子は王宮の物にも引けを取らないと有名なんだ。ローゼリアもきっと気にいると思うよ。」


クッキーを頬張ると確かに美味しい。ヨシュアの居室で食べたシンプルなバタークッキーも美味しかったが、色とりどりの装飾がされたアイシングクッキーはちょうどいい甘さで、また目にも楽しい。

ラウレンティアとクラウスは小さな口でクッキーを頬張り、リスの様に一生懸命咀嚼する姿を微笑ましく眺めていた。


「おいしい!」

「ふふ、気に入ってもらえて良かったですわ、ローゼリア。この日のためにうちのシェフが張り切って作りましたのよ。」

「嬉しい!こんな可愛いクッキー、はじめて食べました!」

「あまり食べすぎると夕食がはいらなくってよ?今日のメニューもあなたのために腕によりを掛けて作っているそうですから。」


アフタヌーンティーをそこそこで切り上げ、ローゼリアはクラウスに案内され邸を散策していた。歴史ある公爵家の名に相応しい華美な、しかしそれでいて決して下品ではない邸内を歩き回る。


「ここが君の新しい部屋だよ、ローゼリア。僕は隣、レイモンド兄さんは向かいの部屋。何かあったら気軽に呼んでよ。まあ、レイモンド兄さんは勉強で忙しいかもしれないけど…」

「レイモンド兄様はまだ子供なのにどうしてそんなに忙しいの?お父様が厳しいの?」

「うーん、兄さんは魔力が平民並に少なくて、魔法の才能もないんだよね。だから周りに認めてもらうには、父様みたいに頭脳でのし上がっていくしかないんだって、なんか意地になっちゃってさ。」

「魔力が、少ないの?」

「そうなんだよ。だから最近話しかけづらくてさ…」


レイモンドの魔力が少ない?なんと勿体無い事か。ローゼリアはアルドリックもレイモンドも、親子揃って才能をドブに捨て見当違いな努力をしている様に見えた。上から見ているだけであった今までであれば、そのような愚かな人間は鼻で笑ってただ観察していたものだが、いかんせん今は自分の家族だ。それにエレシュア達が求めているのは世界の変化。レイモンドの才能を開花させれば、いい起爆剤になるかもしれない。

アルドリックもレイモンドも生まれる時代を間違えたのだ。2千年前、または千年後に生まれていれば己の才能を認められ、花開いていたかもしれない。現代ではまだ解明されていない新たな魔法属性を伝え、魔法研究に革新をもたらすのも面白いかもしれない。


ローゼリアは家族揃っての晩餐の後、アルドリックの執務室を訪れた。

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