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アメリーの悪意2

「今日からよろしくね、レイモンドお兄様、クラウス!」

「ああ、よろしく。」

「…よろしく。」


この日から三人での訓練が始まった。意気揚々と森に入ろうとするアメリーをラウレンティアは止めた。


「アメリー、あなたシールドは使える?」

「は?当たり前でしょ、ローゼリアじゃあるまいし!」

「ならやってみて頂戴。合格点に達しなければ森に入れる事はできないわ。」

「いいわよ、『ライトシールド』!」


呪文から一拍遅れて出現した薄い盾を見て、アメリーは自信満々にラウレンティアの方を振り向いた。


「どう?完璧でしょ!」

「残念ながら不合格ね。呪文から瞬時に盾を発現できなければ命取りになるし、それに盾自体も薄すぎて一回の攻撃で壊れてしまうわ。形は良いんだけれど。」

「シールドなんてこんなもんでしょ?使えたんだから森に入りましょうよ。」

「…クラウス、手本を。」

「『ライトシールド』」

「汎用型のクラウスでさえこの制度よ。特化型のあなたならこれ位はできるはずよ。さあやってみて。」

「…『ライトシールド』」

「まだね、もう一回。」


このやり取りを何度か繰り返し、ついにアメリーは我慢の限界に達した。


「もう!ローゼリアは防御魔法なんて使えないけど森に入ってたじゃない!なんで私はダメなのよ!みんなが私を守ってくれたらいいでしょ!?」

「はあ、アメリーお前ローゼリアは小さすぎて一緒にやっても訓練にならないからあの子の同行を拒否したんだろう?なのに5歳のローゼリアがやってもらった事を、10歳のお前がやってもらうのか?言ってることがおかしいだろ、ローゼリアと比較してないでちゃんと努力しろよ。僕より年上じゃないか。」

「うるさいわね、クラウス!だからシールドはちゃんと出来てるって言ってるじゃない!ラウレンティアおば様がわざと合格点を出さないのよ!

大体おば様だって戦いたくないから王都に逃げた口でしょ?おば様が魔獣を倒した話なんて聞いたことないもの。私と一緒で、鍛錬から逃げていたんでしょう?殆ど戦ったことのないおば様に判断されたくないわ!」

「…今日はここまでにしましょうか。アメリー、そんなに森に入りたいのなら明日から入りましょう。でも命の保証は出来ないわ、自分の身は自分で守るのよ。あなたのお父様にもこの事を話して、きちんと許可を貰って来なさい。良いわね?不満があるなら明日から来なくてもいいのよ。」



ーーーーーーーーー



「はあ~、なにアイツ。頭おかしいんじゃないの?うるさ過ぎて耳が痛いよ。」

「予想以上の我儘女だな。魔獣に襲われて反省した方が良い。」

「まあまあ二人とも、明日は森に入るわ。シールドの大切さを体に教え込んであげましょう。」



ーーーーーーーーー



「ラウレンティア、今日はアメリーがめちゃくちゃ言ったようで悪かった。」

「いいえ、それであの子は明日から森に入れるのかしら?」

「入るといって聞かないからな…あの子を守ってやってくれないか。」

「森での実戦訓練はピクニックじゃありませんのよ、ルドルフお兄様。命の保証だけは私がしてあげますけど、それ以外は何が起こっても自己責任ですわよ?その意味はお分かりかしら?」

「わ、分かっている…だがどうか、あの子の心の傷になるような事だけは防いでもらいたいんだ。お前だって自分と同じトラウマを味合わせたくはないだろう?」

「分かってますわ。大型魔獣なんかとは戦わせないので心配しないで。」

「ああ…」



ーーーーーーーーー



「今日こそ森に入るのよね?」

「そうよ、浅層とは言っても魔物は結構出るわ、気を引き締めてね。」

「レイモンドお兄様、クラウス!アメリーをちゃんと守ってね?後方支援は任せて!」

「シールド使えるんだろ?自分の身は自分で守りなよ。この訓練では、皆そうしてる。」

「もう、ローゼリアは守ってもらってたじゃない!」

「ローゼリアだってただ守られているだけではなかった。魔獣を見つけたら、攻撃される前に先制攻撃をしていたから僕達が守る事なんて殆どなかった。アメリーも防御に不安があるのならやられる前に殺ればいい。」

「はあー、あんた達もう少しレディを守るという事を学んだ方がいいわよ。淑女を守るのは紳士の仕事よ!」

「そうだな、淑女は守った方が良いな。」

「そうでしょ?だからよろしくね!」


「お喋りはその位にして頂戴。何かが近付いて来ているわ。クラウス、詳細は分かるかしら?」

「中型の魔物が一匹だね。もうすぐあっちの茂みから出てくるはずだよ。」

「では初めはレイモンド、いつものようにお願いね。」

「はい。」

「レイモンドお兄様、アメリーの為に頑張って!」


間も無くして、ガサガサという音と共に狼型の魔物が姿を現した。子供達を胃袋に収めんと、涎を垂らしながら牙をむき出しにし飢えた目を三人に向けた。


「ひいっ大きい…」


初めて見る中型の魔物に、アメリーは恐怖で身体が硬直するのを感じた。怖がるアメリーを尻目に、レイモンドは手慣れた様子で魔獣に向かって手をかざした。


「『アイスランス』」


レイモンドから放たれた一本の氷の槍は魔獣の頭部を貫き、脳を失った魔獣はその場で息絶えた。魔獣とレイモンドの距離はおよそ5m。攻撃を受ける事なく、危なげなく魔獣を倒した。


「いいでしょう。コントロールも良くなってきたわね。アメリー、私達はこんな風に順番に一人ずつ魔獣を討伐していくのよ。できるかしら?」

「私も一人でやるの?無理よ!光属性魔法は後方支援でしょ?」

「レイモンドもクラウスも一人で討伐できるし、後方支援は必要としてないのよ。あなたもホーリーランスくらい使えるでしょう?それだけあれば十分倒せるわ。

あなたも10歳になっているのなら魔獣を倒した経験があるはずよ。その時はどうしていたの?」

「その時はホーンラビをお父様がバインドで拘束して、その好きにホーリーランスで倒したわ。」

「経験があるなら大丈夫よ。次小型の魔物が現れたら、アメリートお願いね。」

「ええ!一人でなんて無理よ、二人も手伝ってよ。」

「ローゼリアなら中型の魔獣も瞬殺だよ。」

「やってやるわよ!小型くらい余裕だわ!」

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