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アメリーの悪意1

アメリー=ゲントナー男爵令嬢。父親はバーナー子爵家の次男であり、魔境の森の守り手としてゲントナーの性と共に男爵位を国より賜った。バーナー家の女性によく見られる光属性魔力の持ち主であるが、魔力量はCとあまり多くなく、また鍛錬を怠っているため実戦では使い物にならない。

ラウレンティアの事件を教訓に、アメリーは鍛錬を強制されることなく大事に育てられた。その為彼女が10歳になった時に儀礼的に森に入り小型の魔獣を倒した以外に、アメリーには実戦経験がなかった。


花嫁修行と称して友達と遊んでばかりいるのも、最低限必要な魔法訓練をサボるのも、ルドルフは娘可愛さに軽く苦言を呈すのみで本気で叱ってはこなかった。女の子なのだから、戦えなくても、少々頭が緩くても、嫁に行けば幸せになれる。幸いアメリーは母親のフレデリーカに似て愛らしい顔立ちであったから、学園で良い相手を見つけてくれるだろう。

その考えが甘いものであった事を、ルドルフはローゼリアに会った日に思い知らされた。

桁違いに良い見目に、到底かなわない礼儀作法。ローゼリアを見た後アメリーを見ると、今までキラキラと輝いて見えた世界一可愛い自分の娘が、色褪せて見えた。このままこの娘を好き放題に育てて、果たしてまともな結婚相手が見つかるのか?今までフレデリーカがアメリーに何も言ってこなかったためそんなものかと安心していたが、よく考えると彼女は商人の家の娘で貴族の生まれではない。令嬢の教育がどんなものか知らないのだろう。

もう少しまともに矯正して結婚相手を見つけさせるか、それが見込めなければせめて森の守り手としてバーナー領に居場所を作ってやろう。そう思いルドルフはアメリーの矯正に力を入れ始めた。遊んでいるところを見れば小言を言い、訓練への参加も義務付けた。他の者もローゼリアを見て思うところがあったらしく、キーランドやフリード、果てはティバルトまで彼女の怠慢に苦言を呈するようになった。

しかしいくら強く言ってもアメリーの生活態度は全くと言って良いほど改善しなかった。むしろ悪化している様にも思えた。


彼らがアメリーに注意する時に決まって話題に出すのはローゼリアだった。好き勝手に育てられたたった10歳のアメリーは、突然現れた5歳の少女に居場所を全て奪われたと思い込み、激しい嫉妬と憎悪に精神を蝕まれていた。



ーーーーーーーーー



「え?魔法訓練をやる?」

「そうよお父様!私だってちゃんと魔法が使えるところを見せてやるわ!」


明くる日、アメリーはルドルフの執務室を訪れた。いくら訓練を義務付けても、毎回逃げていたアメリーからの突然の申し出に、ルドルフは困惑した。


「ただし、条件があるのよ。」


アメリーは、魔法訓練をレイモンドとクラウスと共に行う事を条件として提示した。毎日鍛錬を欠かさないティバルトとシュタインとは実力が離れすぎているし、年の近い者と訓練を行えば良い刺激になって切磋琢磨できると言うのだ。因みにローゼリアは歳が離れすぎているからと同行を拒否し、彼女が昼寝をする午後に彼らと共に訓練を行いたいとルドルフに申し出た。


「レイモンドお兄様たちって王都に住んでいたからここに来るまで実戦経験はなかったんでしょう?だったら実力的にも釣り合う筈だわ!ローゼリアはダメよ、まだ小さいし、すぐ泣くんだから。あの二人もローゼリアの体力に合わせるのにウンザリしてるわよ、きっと。」


確かに、実戦訓練が午前中だけなのはローゼリアの体力を考慮してのことだ。未だローゼリア達の訓練に同行したことがなかったルドルフは彼らの実力を把握できていなかった。レイモンドとクラウスがシュバルツの血を継いでいるといっても、何年も実戦訓練を続けてきたティバルトやシュタインには及ばないだろう。恐らく三人ともラウレンティアのサポートを受けながら戦っているに違いない。聞くところによるとレイモンドは水属性特化型、クラウスは汎用型の魔力の持ち主。そこに低ランクではあるが後方支援が得意とされる光属性特化型のアメリーが入るのはパーティー的にもバランスが良い筈だ。そして何より折角アメリーがやる気を出してくれたのだから、このくらいの我儘は叶えてやりたい。


「分かった。ラウレンティアにも相談してみよう。強制はできないから、どうなるか分からんぞ。」

「そこはお父様が頑張って説得してよ!」



ーーーーーーーーー



「アメリーと訓練?」

「そうよ、ルドルフお兄様からお願いされたの。彼女、あなた達と一緒じゃないと訓練をしないと言って聞かないんですって。ローゼリアがお昼寝をしている時に一緒にやりたいそうよ。どうかしら?」

「僕は絶対嫌です!アイツ会う度にローゼリアに酷いこと言うんだ。性格悪すぎるよ。」

「僕だって嫌だ。…でも僕達は今この邸に居候している身だ。家主ではないが、その家族の願いは可能な限り聞き入れるべきではないかと思う。本心は別として。」

「ふふ、私もレイモンドの意見に賛成よ。貴族同士の関係というのはギブアンドテイクで成り立っているわ。一方にばかり借りを作るのは良くないわ、例えあなた達がまだ子供であってもね。」

「うーん、そういう事なら仕方がないのかな…。すごく嫌だけど、ローゼリアが昼寝をする間だから二時間くらい?僕耐えてみせるよ!」

「彼女頭が緩くて口も軽そうだから、レイモンドは魔法の種類を極力絞って使って頂戴。あの子に合わせるならアイスシールドとアイスランスだけで十分ではないかしら。勿論今練習しているフリージングフィールドは使用厳禁よ。」

「分かりました。」

「じゃあ僕は普通に魔法使ってアメリーの自尊心メタメタにしてあげるね!そしたら僕達と訓練したいなんて二度と言わなくなるよ。」


散々な言われようのアメリーであったが、彼女の願いは聞き入れられ明日から共に訓練をすることとなった。



ーーーーーーーーー



「ふふ、あの二人が私に夢中になればローゼリアが悲しむわね。あのムカつく顔が嫉妬で歪むのを見るのが楽しみだわ!くすくす」

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