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魔力開発6

それからの子供達の成長は著しく、バーナー領に滞在する様になって一ヶ月の現在では個々で中型の魔獣を討伐できるまでになっていた。ラウレンティアも戦闘の感覚を取り戻し、浅層での訓練では兄達の付き添いを必要としなくなった。

毎日午前は魔境の森にて実戦、午後は座学にて魔法の理解を深めていった。更にレイモンドは冷気を利用した攻撃魔法の開発を行っていたが、順調とは言い難かった。


「兄さん!調子はどう、って…寒!何この部屋寒すぎ!」

「ああクラウスか。悪いな、魔法の練習中だったんだ。ローゼリアは一緒じゃないのか?」

「ローゼリアは遊んでる途中で寝ちゃったからそのままお昼寝中。寝顔可愛かったよ!」

「そうか。」


部屋の温度を下げた張本人は、毛布をストールの様に肩に巻き付け暖をとっていた。クラウスもオスカーらから毛布を受け取ると、それに身を包んだ。因みにオスカーは普段通りの格好のまま、澄ました顔をしている。


「ていうか温度下げた本人も寒いとか、このままだと自爆攻撃になっちゃうよ?」

「そうなんだ。範囲指定が難しくて、自分の周囲を含めないっていうのがなかなかできないんだ。」

「ふうん…母様は結界を張る時、中心点と半径を指定して半球状に魔法を展開するらしいんだ。兄さんも同じように自分を中心として半径を指定して、その外側から魔法が発動するようにイメージしたらいいんじゃない?外側の境界は、中心点から更に半径を伸ばしてまた半球を作るイメージでさ。ドーナツ型に範囲指定する感じかな。まあ外側の境界はそんなに厳密に決めなくてもいいんじゃない?目視できる敵が入れば良いんだし。」

「成る程…やってみよう。内側は半径1m、外側はそこから2mとして…あそこのテーブルの所くらいか?『フリージングフィールド』」


レイモンドがオリジナルの呪文を唱えると、床にレイモンドを中心としてドーナツ状に淡い光が出現し、その範囲内の空気が一気に冷えた。カーペットには霜が降り、空気中の水分が氷の結晶となってキラキラと輝いていた。


「できたな…」

「できたね!」

「でもこれで敵を殺せるかというと難しいな。」

「動きを鈍くさせる程度じゃないかなあ?凍死させるなら、もっと低い温度を長時間保たなくちゃいけない。それならアイスランスで頭部を貫いた方が早いし、あまり効率が良い魔法とは言えないかな。」

「そうだな…何か他のことに使えれば良いんだが…」

「うーん。ウォーターボールで濡れた敵なら凍るかも?」

「それだと一人で攻撃が完結しないな。支援魔法として考えればいいのか?」

「ちょっとやってみようか。…寒!『ウォーターボール』」


クラウスはフィールド内に腕のみを入れ魔法を唱えたが、水の玉は出現しなかった。


「あれ?おかしいな…むむ、『ウォーターボール』!

…何これ、すごいやり難くてかなり魔力持っていかれたよ!全力でやったのにこんなに小さいし。」

「僕は何もしていないぞ。どういう事だ?」


レイモンドは魔法の行使を一旦中止し、クラウスに再びウォーターボールを唱えるよう頼んだ。


「『ウォーターボール』…今度は普通に出たね。なんだったんだろう…」

「僕が展開した魔法の範囲内では他の魔法は使えないのか?」

「もしかして、その範囲内は兄さんの魔力の支配下に置かれてるのかもね。だから他の人が魔法を使うなら、兄さんの魔力を超えないといけない。僕は汎用型だしSSしかないから、特化型の恐らくSSSの兄さんに勝てなかったんだ。兄さん本人なら問題なく魔法を使えると思うけど。」

「成る程。そういう魔法は聞いたことがないが、既知の魔法には分子を通して空間そのものに作用するものは存在しなかった。まだ発見されていない魔法原理というわけか。」

「すごいよ兄さん、それ発表すれば国から爵位貰えるレベルだよ!」

「いや、氷属性魔力を使っているから今発表しても追放ものだろう。僕だけの魔法にするさ。」

「あはは、そうだった。」



ーーーーーーーーー



「ティバルトお兄様!アメリーと一緒にお茶しましょう?シュタインも誘って!」

「悪いが…この後は俺もシュタインも鍛錬の予定だ。たまにはアメリーも来るか?」

「鍛錬なんてしないわ!私は淑女よ?お友達はみんな戦闘訓練なんてしてないわ!花嫁修行をしてるのよ。王都の学園に行ってお金持ちの旦那様を見つけて、ずっと王都に住むんだから!」

「でもお前は淑女の勉強だとか言って友達とお茶したり部屋で恋愛小説を読んだりしているだけじゃないか。この国の勉強はしているか?学園に入るなら、それなりの学力と魔法技術が必要だぞ。」

「ちゃんとやってるわよ!何よ、お父様もお兄様もみんな急に口うるさくなって。」

「今までは家に女の子が一人だったから、戦闘訓練を拒んでも遊んで暮らしていても令嬢というのはそういうものかと皆思っていたが、ローゼリアは全然違うじゃないか。女の子なのに戦闘もできるし、マナーも完璧だ。お前、そんなんで本当に王都でやっていけるのか?」

「はあー!?ローゼリアとなんて比べないでよ!私は私よ!みんな大っ嫌い!」


「はあ…あいつ前はもうちょっと馬鹿なりに可愛げがあったのに。いつからあんなになったんだ?」


アメリーの走り去る後ろ姿を眺めながらティバルトは溜息を吐いた。淑女らしからぬ速さで離れに戻ったアメリーは自分の部屋に篭った。


「ああムカつくムカつく!あいつが来てからみんな急に厳しくなって。私はこの家のお姫様だったのに、何しても許されてたのに!

…アイツからレイモンドお兄様とクラウスを取ったら、どんな顔するかしら。アイツの大事なもの、全部奪って私のものにしてやるわ。5歳のアイツに10歳の私が勝てないわけないんだから。」

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