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魔力測定2



「クラウス様、ようこそおいでになられました。ローゼリア様も、お初にお目にかかります。神官長のエドワードと申します。此度は私めがローゼリア様の初めての魔力測定を執り行わせて頂きます。」


贅肉に埋まった顔面に妊婦のような腹。質素倹約を是とするイーツェル教の神官長としてあるまじき姿を晒しながら、エドワードは子供達を迎えた。


「出迎え感謝します。神官長殿自ら測定せずとも、いつもの様に他の神官に任せても良かったのですよ。」

「いえいえ、新しく養子に入られた麗しい姫君に是非ともご挨拶申し上げたく、時間を作ってまいりました。いやあ、噂に違わずなんとお美しい。女神様のようですな。ははは。光属性に適性があった暁には是非とも我が神殿に入っていただきたいものですな。聖女としても名を馳せるでしょう。」

「…シュバルツ家はローゼリアを神殿入りさせるために養子に迎え入れたのではない。」

「これは失礼を。いやあ、ははは。」


エドワードは5歳児に向けるものとは思えない情慾溢れた獣の様な目でローゼリアを上から下まで舐め回すように眺めた。露骨に顔をしかめたクラウスは、ローゼリアを背に庇うようにして測定の間へと歩き出した。


「僕が絶対守るから大丈夫だけど、アイツは小児性愛者としても有名なんだ。孤児院にいる見目の良い子供に沢山手を出してるって噂だよ。あ、意味わかるかな?兎に角気を付けてね。間違っても、巫女になりたいなんて言わないようにね。」

「よく分からないけど、あのおじさんは嫌い。気持ち悪い。」

「その通りだよ。本当に聖職者として許されざる姿だよね。」


使用人は控えの間にいる為、エドワードの目の前には幼い子供二人しかいない。クラウスは年齢の割に聡い様であるが、遠回しな色を含んだ言い回しになど気付くまい。エドワードは女神の様に美しいローゼリアに心奪われていた。是非とも手に入れたいが、たとえ養子であろうと彼女は公爵家の一人娘。簡単に神殿に手渡すことなどないと分かっていた。

だからこそ子供しかいない今この時を有効に使い、彼女に触れてみたいと思った。あの艶やかな銀髪に、小さくも愛らしく赤く色付いた唇に、触れたら折れてしまいそうな華奢な手足に、触れたい。二人きりにさえなれば、性知識のない5歳児など、簡単に言いくるめられるであろう。


「クラウス兄様、私とても緊張しているの!ずっと隣にいてね?一人にしちゃ嫌よ?」

「もちろんだよ僕の可愛いローゼリア。君を一人になんてするわけないじゃないか。ここは神殿といえど、何が起きるか分からないからね。」

「これは手厳しい。この神殿にいるのは皆神に仕える身、不埒な真似をする神官などおりますまい。」

「これは失礼なことを申しました。しかし私達のような部外者もこの神殿に出入りしているので、護衛も連れていない今、用心に越した事はないと父に言われましたので。」

「そうですか。お父上の言い分も最もでございますが、このエドワードが共にいる間は安全を保障いたしましょう。」

「それは心強い。まあローゼリアに心細い想いをさせない為にも、決して一人にはしませんが。」


密かな攻防を続けながら三人は測定の間に辿り着いた。白い石造りの部屋には赤子の頭程の大きさの水晶の球が中央に設置されている以外には何もない。大人が十人ほど入ってもまだ余裕があるよう作られた部屋で、まずはエドワードとクラウスが水晶を挟み向かい合わせに立った。


「ではまずクラウス様から測定してまいりましょう。お手を。」


クラウスが水晶に手を乗せると、虹色の光が水晶に灯り、しばらくすると消えた。


「測定が終了しました。相変わらず素晴らしい魔力量ですな。汎用型がまた少し増えたようです。特化型はいずれの属性も殆ど認められず、前回と変わりありません。こちらを。」


エドワードは水晶から読み取った魔力情報を羊皮紙に記し、クラウスに手渡した。そこには『汎用型魔力 SS』と記されてあった。


「それではお次はローゼリア様、こちらへどうぞ。 クラウス様のやり方は見ておられましたかな?同じ様にやってみてください。」


水晶を乗せた台は大人が使うことを想定して作られたものであったため、ローゼリアは背伸びをする様に身体を伸ばし、水晶に手を置いた。クラウスは微笑ましく、対してエドワードは色欲にまみれてローゼリアの子供らしい仕草を眺めていたが、水晶が光りだすと二人の顔は驚愕に染まった。


「こ、これは…なんと眩い光だ…。虹色?いや、色が次々と変わっていく…これは一体…」

「ローゼリア!手を離すんだ。もう測定は終わっているはずだ。」


困惑しながらもエドワードは水晶から情報を読み取ったが、その内容に再び驚愕し、震える手で測定結果をローゼリアに手渡した。エドワードは、渡す際にあわよくばその小さい指に触れようと邪な思いを抱いていたのすらすっかり忘れてしまっていた。


『特化型魔力

水属性 SSS

風属性 SSS

土属性 SSS

火属性 SSS

光属性 SSS

闇属性 SSS


汎用型魔力 なし』


測定結果を見たクラウスは、これは子供の自分の手に余る案件であると判断し、アルドリックに報告し今後の方針を決めるまでは、決して口外する事のないようエドワードに固く口止めをした。

困惑したローゼリアを優しい笑顔で部屋の外に促し、素早く侍女達と合流した後、寄り道する事なく家路に着いた。



ーーーーーーーーー



「ローゼリア、君はアルビノの色に相応しい天才だ。君の力が神官長に知られてしまったのは痛いが、シュバルツ家は君を全力で守ると誓おう。」

「クラウス兄様…」

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