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悪役令嬢と言えば恋バナでしょう

貴族。サンドリヨン王国とヴィルドンゲン国に存在する階級で、三度の飯より、人の悪口と恋バナが好きな種族である。

アナスタシアは今まであった眠気が一気に吹き飛んだ。

「レダとレオースは幼馴染なのよね?」

「うん。」

「ふっ、9割9分勝ったも当然ね。」

「で、でもさ。」

「何?」

「物語とかで、よく後から出てきたヒロインにかっさらわれる幼馴染って、多いでしょ?」

「そんなの幼馴染という恋にとって最大最強の武器を生かしきれてないからよ。」

「最大最強の武器?」

「そうよ。幼馴染であれば、相手の大概の事はわかるでしょ?」

「それは、まあ。」

「情報は力よ。それさえ把握していれば、後から美人や猫耳獣人やエルフが出てきたって、負けやしないわ。」

「そ、そんなに?」

「ええ。お姉さんに任せておきなさい!」

「アナスタシア姉さん!」

恋もしたこともないアナスタシアを憧憬の眼差しで見るレダは、傍から見ると酷く滑稽に見えるのだが。

「まずはレオースの好きなタイプは?」

「ど、どうだろ?アナスタシアみたいな綺麗な人?」

「今まで、レオースが気になった人とか居ないわけ?」

「多分、居ないと思う・・・。」

「幼馴染なんでしょ?」

「同年代の女性って私くらいしか居なかったし。」

「年上のお姉さんは?」

「近所のおばちゃんくらいかなあ。」

「・・・。」

アナスタシアがこの街をざっと見た限り、この街もレダ達の村同様に若い人間は殆ど見かけない。

「まあいいわ。じゃあレオースが好きそうな女性の体の部分は?」

「え?」

「あるでしょ?胸とか項とか、足首とかお尻とか。」

「まったく、わかりません・・・。」

「情報が無いのと一緒ね。」

「すみません・・・。」

「いいレダ。重要なのは好きな体の部分なのよ。」

「体の部分?」

「ええ、幼馴染と主人公が結ばれた有名な話を知ってる?」

「どれだろ?」

「ほら、そばかすだらけの女の子のやつ。」

「ああポニーテイルの?」

「それよ。あの主人公は、項好きだったのよ。」

「えっ!」

「それで、これ見よがしに項を見せつけて篭絡したのよ。」

「私、おかしいと思ったのよ。あのヒロインは美人でもないし、そばかすだらけって書いてあったし、それなのに後から出てきたブロンドの美人や黒髪の美人に主人公は見向きもしないって、なんでだろうって・・・。」

「金髪も黒髪もロングで項隠していたでしょ。」

「た、確かに!」

「まあ、いいわ。しばらくは情報収集に努めましょ。」

「ふむふむ。」

レダは深々と頷いた。

「いい、一緒に居る時間をただ無駄に過ごしたら、物語のただの幼馴染で終わってしまうのよ。」

「はいっ!」

レダは恋も碌にしたことが無いアナスタシアの忠告に深く感銘を受けた。


翌朝、特にすることがないアナスタシアは、ランチの準備前に教会へと足を運んだ。

「イアン、ご指名だぞ。」

神父からそう言われ、どきどきするイアン。

この街に来てからの指名は、おばあさんの悩み相談ぐらいで。

行ってみると、居たのはアナスタシアだった。

「ア、アナスタシアさん?」

「この後、仕事があるから早めにお願いしたいんだけど。」

相変わらず上から目線のアナスタシア。

「えっと、何のご相談でしょうか?」

「レオースの事なんだけど?」

「レオースの?」

「あんた幼馴染なんでしょ?レオースが好きな女性の部分って知らない?」

「は?」

「男同士ってそういう話するんじゃないの?」

「い、いやあ・・・そういう話はしたことないよ?」

「あんた男でしょ?」

「俺、僧侶なんだけど?」

「・・・。」

「どうしてレオースの事が・・・はっ、もしかしてアナスタシアさん。」

「ないない。」

「だよねー。」

イアンは、ホッとした。

「何であんたがホッとするのよ?もしかしてあんた?」

「ち、違うから。」

「レオースの事が?」

「それも違うって!俺はただ、レオースとレダの二人には、幸せになって欲しいなと。」

「レダの事が好きとかないの?あんたは?」

「俺、僧侶だって。」

「ああ、そうかエイル教って。」

「そうだよ、僧侶になる者は、身も心も女神エイルに捧げるんだよ。」

「大変ねえ。いいことあるの?」

「その分、他の宗派よりは信仰力が強いんだよ。」

「あんたも?」

「俺は・・・。」

「辞めた方がいいんじゃない?」

「べ、別に信仰力が強くなりたいから僧侶になったわけじゃないから。」

「あっそ。あと心配しなくても私もレダの味方だから。」

「そうなんだ。」

「だから、あんたも力を貸しなさい。」

「どうやって?」

「レオースの女性の好きな部分を聞き出すのよ!」

「お、俺が?」

「あんたしか居ないでしょ?」

「わ、わかった。」

「じゃあ、宜しく頼んだからね。」

そう言って、アナスタシアは仕事をしに走って行った。


毎晩繰り返される酒場での夕食。

「ネズミはいつになったら来るの!」

「アナスタシアは、ネズミ嫌いなんでしょ?」

「依頼がないじゃないっ!」

「仕事はあるでしょう?」

「くっ・・・。」

「おいおい、アナスタシア。お前は冒険者なんだからな。」

酒場の親父がアナスタシアに言った。

「そう言うなら依頼を張りなさい。」

「それはそうだけどな。ランチの手伝いも程ほどにしとけよ。」

「最近はレダの所も、がっつり食べれるって評判だよね。」

ボソッとレオースが言った。

「ああ、それでアナスタシアにそんな事言うんだ?」

レダが酒場の親父に言った。

「ち、違うわいっ!別に俺んとこのランチの売り上げが落ちたから言ってるんじゃない。アナスタシアの事を思って言ってるんだ!」

「売り上げ落ちてるんだ・・・。」

「うっ・・・。」

「まあでも僕ら毎晩来てますし。」

レオースがフォローする。

「ありがとうよ。お前らだけだ、毎晩来てくれるのはな。」

「酒場なんだから、酒で儲けなさいよ。」

アナスタシアが突っ込んだ。

「そう言うことは酒が飲めるようになってから言いやがれっ!」

逆切れされた。


その晩。

「あの唐変木、どうやらフェチが無いようね。」

「レオースの事を唐変木って言うのやめて・・・。」

アナスタシアとレダは、自室でパジャマトークを始めた。

「って、どうやってフェチを調べてるの?」

「ふっ、そんなのイアンを使ってに決まってるじゃない。」

「ちょっ、やめてよっ!えっ?イアンに言ったの?」

「落ち着きなさい、レダ。あんたの好き好き光線、気が付いてないのはレオースだけよ。」

「・・・。」

「女に見向きもしない男には、もうあの方法しか残ってないわね。」

「ほ、方法が?」

「ええ、題して、ずっと傍に居る作戦。」

「そ、それって、今まで通りって事?」

「そうね、思った以上にレオースが強力だったってことね。」

「・・・。」

「でもね、レダ。リビドーってのは突然開花するものよ。ずっと気が付いてなくて、ある日、突然ってことがよくあるわ。」

「そいうものなの?」

「だから、変化には気を付けて。それさえ気を付けておけば、レダの恋は成就すると思うわ。」

「わ、わかったわ。」

結局、レオースのフェチが見当たらなかった為、この恋は面白く・・・、いや、自分の知識が役に立たなかったので、残念なアナスタシアだった。

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