27話
「いや、ていうか派閥の話よりも、今はライモンドの学園の話でしょ!なんでわざわざ騎士科に入るわけ!?そりゃこいつの魔法科に入るよりはいいけどさ。俺たちが剣習う理由ってなくない?」
アンドレア兄様の言葉に、こいつ扱いされたベルトランド兄様はぎろりと睨んだが、理由は気になるのか口をはさむことはなかった。
「理由って言われても、そんな大層な理由があるわけじゃないですよ?強いて言うなら、俺キュリロス師匠みたいになりたいんです。」
「ンンッッ!?あっ、いやっ………。し、失礼しました。」
俺のその言葉に、部屋の扉の横で警護のために待機していたキュリロス師匠に全員の視線が向き、キュリロス師匠自身は驚きに声をあげた。
一瞬でも声を荒らげたことを恥じ入るようにその顔をうっすら朱に染めるキュリロス師匠まじプライスレス。
毛で覆われていてわかりにくいけど、灰色の毛がいつもよりピンクになっていますよ。
可愛さも兼ね備えているキュリロス師匠ってもはや完璧では?
「キュリロス師匠のような人になりたい…………ッ!」
「お前のそのキュリロスに対する信頼なんなわけ?」
「逆に聞きますけど、小さいときから子供の俺にも紳士的に接してくれてかつ強いキュリロス師匠に憧れない理由がないですよ!」
力強くそう言えば、キュリロス師匠が片手で顔を覆ってしまった。
「あとは男として単純に強い人に憧れます。王宮にいる間はキュリロス師匠が教えてくれますけど、学園に入ったらそういうわけにはいきませんよね。だから、俺の目標は学園に入ってから久しぶりに王宮に帰ったときに『ライモンド殿下、少し見ないうちに腕を上げましたな。』ってキュリロス師匠に言ってもらうことです!それから『では、この動きにはついてこれますかな?』って常に俺の先を行ってほしい!それに手も足も出なくて悔しがってる俺に『まだまだですな、ライモンド殿下。』って言って手を差し伸べてほしい!」
熱く語る俺に若干兄様たちは引き気味だが、そんなこと知るか!
「ライは、本当にキュリロスのことが好きなのだな。」
唯一フェデリコ兄様だけ嬉しそうに話しかけてくれる。
ので!キュリロス師匠のことを語ってやる!
「はい、大好きです!何といっても強いんですよ!俺が南の庭園で爆発起こしたときのこと覚えてますか?あの時木の間をキュリロス師匠がぴょんぴょんはねて俺たちのところに駆けつけてくれたんですよ!しかも俺のこと抱えてくれる時の安定感が抜群なんですよ!体幹がしっかりしてるし、筋肉があるので安心感が違うんですよ!」
「そうか。」
「はい!しかも、何といっても対応が紳士的なんです!子供の俺と視線を合わせるために膝が汚れることもいとわずに膝を折ってくれるし、俺のことを抱き上げる時には必ず許可を求めてくれますし、かといって必要以上に子ども扱いしないんですよ!」
「ら、ライモンド殿下………っ。それ以上は………っ。」
扉から俺の側に歩み寄ってきたキュリロス師匠が恥ずかしそうにしながら俺のことを止めようとする。
だけどそんなこと関係ない
せっかくキュリロス師匠の魅力を語れるのだ。誰も俺を止められない!
「見てください!こんなにかっこいいのに、可愛らしさも兼ね備えてるんですよ!?しかも謙虚!」
「ライモンド殿下………ッ!もう、許してくだされ!!」
両手で顔を覆ってしまったキュリロス師匠に、ほっこりする。
どうですか、どうですか!?フェデリコ兄様!!!!俺の!師匠が!こんなにも魅力的ィ!!
「キュリロス、これからも、ライのことをどうか頼む。」
「は、はい。フェデリコ殿下。もちろんでございます。」
フェデリコ兄様にそう声をかけられたキュリロス師匠は慌てたように最敬礼を取った。
その返事に満足そうな顔を浮かべたフェデリコ兄様に対し、アンドレア兄様とベルトランド兄様は少し渋い顔をしている。
「……………ライモンドのことを一番理解してるのは私だ。」
「うわー………その発言すっごいむかつくんだけど。でもさー、末っ子の憧れが俺たち兄弟の誰でもなくて剣術指南のキュリロスっていうのがさー。」
渋い顔で眉間にしわをよせるベルトランド兄様と比べ、アンドレア兄様はどこか不貞腐れたように唇を突き出して拗ねている。
「アンドレア、キュリロスは私たちが手をこまねいていた時から、ライの側で支えていたんだ。しょうがないだろう。」
眉間のしわのせいで怒っているように見えるフェデリコ兄様だが、この場合の正解は少し寂しいが微笑ましいっていう感じだろう。
フェデリコ兄様がそう言うも、アンドレア兄様は納得はするけど不服ですという態度を崩さない。
「でもさ、末っ子だよ?マヤ様のことがなかったら俺ももっとライモンドと話したかったんだけどー。ジャンカルロもジョバンニも羨ましかったのにさー……。俺は派閥のこと考えて話したいの我慢してたのにー。」
ぶーぶーと文句を垂れるアンドレア兄様。
俺が生まれた時点で、ジャン兄様は五歳。それに対してアンドレア兄様は十一歳で、もうすでに王族としての自覚も生まれ始める年だったのだろう。
まあ確かにジャン兄様ほど無邪気でないとあの母上の勘違いによってぎすぎすした空気感の中俺に話しかけることはできなかっただろう。
「でも、これからはアンドレア兄様も俺と話してくれるんでしょう?」
「………もちろんに決まってんじゃん!!」
「うわ、びっくりした。」
俺の言葉に勢いよくテーブルにこぶしをたたきつけたアンドレア兄様のせいで自分の紅茶がこぼれたベルトランド兄様がアンドレア兄様の頭を掴む。
「貴様はもっと理知的に行動できないのか!毎度毎度、感覚で物事を進める癖をなおせ!!」
「いったい!!今回のことは謝るけど!いつもはお前に迷惑かけてないだろ!?離せよ!第一!俺は確固たる情報をもとにその都度臨機応変に行動してるだけだし!」
再びギャーギャーと言い合いを始めたベルトランド兄様とアンドレア兄様に冷たい視線を送っておく。
フェデリコ兄様は相変わらずどうしていいのかわからずおろおろと二人の間で視線をさ迷わせているだけだ。
「だから!茶を飲んでる間くらいは!!仲良くしてください!!!!」




