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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
留学編

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154/155

154話

 緊張していたヴィルとの対話が俺が考えていたよりもずっと落ち着いて進み、ヴィルは自身が誓ってくれたように俺がどんな奇天烈なことを言ってもそうかと軽く流してくれた。

 この世界で生きてきて何の気負いもなく話ができたのはこれが初めてかもしれない。

 子供の時から一緒にいたマリアやキュリロス師匠相手ですら、いやだからこそか。あまりにもこの世界の常識から外れたことは口にできなかった。

「にしても。この水ってどこからきてどこに流れていくんだろうね。循環性?」

「……考えたこともなかったな。精霊の耳を持つものがいたら聞けるかもしれないな」

「というか、オストの近くに燃え続ける火の国があるって聞いたことあるけど、あれも何? 可燃ガスが噴き出してるの? 怖いんだけど」

「いや。あれはガスが噴き出してるわけじゃなくて、あそこで火の精霊が生まれてるらしい」

「じゃあここも水の精霊が生まれるゆりかごってことなのか……。もっと気になるのは、夜の明けない国。この惑星の自転はどうなってるの? いや、そもそも公転どうなってるの?」

「ワクセイ……? ジテン……? コウテン……?」

「俺の知る限り世界って球体なんだけどね」

「ちょっと待て」

 生まれてこの方ずっと疑問だったことを好き勝手話せるとなって少しテンションが上がってしまったようだ。

 言葉が止まらない俺の口をヴィルが向かいの席から手を伸ばして塞いできた。

 まぁ、それでも喋れないことはないんだけど、流石に悪いと思って口を噤む。

「知識の出どころも真偽も問わないとは言ったが、出す情報は小出しにしてくれ! 私の頭がパンクする!」

「ごふぇん」

口を塞がれたまま謝ったからか、ヴィルはちょっと嫌そうに手を放して俺の服で手のひらを拭いた。おい。

「いや、それはひどい」

「君の唾が付いた気がする……」

「それはごめん」

 あぁ、そうそう。この気安いやり取りだよ。

 お互い開き直って本音で話し合えることの何と面白いことか。

「まず、世界が球体の時点から訳がわからない」

「あー、俺も原理はよく知らないけど、惑星には重力って言う引き寄せる力があって、それのおかげで俺たちは地面に立ててるらしい」

「わからん」

「俺もわからん」

 だって地球には重力って言うものがあります。なんて、小学生の理科で習うようなことだったし。中学生までは理科の授業はあったものの、高校以降は理数系は選択式になって、俺は履修しなかったから詳しいことなんて本気でわからない。

 概念は知ってるけど説明できない典型的な例だと思う。あと、月の重力は地球のよりも小さくて、太陽の重力はえぐいくらい強い、っていうことくらいしかわからない。

 でも、今までの経験から精霊さんにはイメージが伝わればいいっぽいから、いつか重力魔法とか使ってみたいよね。

「じゃあ、何か。オッキデンス沖に船を出せばいつかはオストの港にたどり着くと?」

「うん、たぶんね。あ、でも、オストにつく前に他の大陸にぶち当たる可能性もあるよね」

「別の、たいりく……」

 ヴィルはそれきり何かを考え込むようにぎゅっと眉根を寄せてしばらく黙り込み、そして深いため息を吐きながら眉根を指で揉んだ。

「……頭が痛いな」

「大丈夫?」

「主に君のせいなんだが?」

「だって、ヴィルが話していいって言ったから」

「それにしたって初めから飛ばし過ぎだ。こればかりは私の手に余るぞ」

 まあ、言われてみればそりゃそうだ。別の大陸、なんて。今の俺達にはこの魔物はびこる大陸で生きることに手一杯なのに。

 別の大陸が実際にあったとして、そこに至るまでの航路の開拓。今まで数百年単位で交流のなかった大陸なのだから言葉も違うかもしれない。言葉、地理が異なれば、もちろんそこには別の文明が発達しているだろう。

 こちらの文明の方が発達しているならまだいいが、相手の方が上なら? 侵略の可能性も浮上する。もっとも、それはこちらが侵略するか相手が侵略してくるかの違いだが。

 俺の存在で多少中央と東の大国の王宮が揺れはしたが、基本この世界は平和だ。

 有史以来、かろうじて戦争と呼ばれる規模の争いはあったようだが、片手の指で数えて余るほどしかない。だって、魔物はびこるこの世界では互いに支え合わなければ生きていけない。

 五大国がそれぞれ武力、知識、生産、魔法、調整の役割を担い、一種の世界政府の役割を果たしている。国家権力を立法、行政、司法でそれぞれ独立した機関に担当させ抑制と均衡を図る三権分立と同じようなものだ。

 いわば、この世界、この大陸は五つの大国と九十九の小国から成り立つ大きな一つの国家なのだ。国家間同士の戦争は大陸単位で見ればただの内戦。火の粉が別のところに飛び火する前にすぐ政府によって鎮火される。じゃなきゃ国家が正常に動かないから。

 国を分ける精霊のベールとこの仕組み、そして共通の障害である魔物がいるからこの大陸は平和なのだ。

 では、そこに別の大陸。全く別の国家が存在したら?


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― 新着の感想 ―
基礎知識が無い状態で真理を問われても訳がわからないだろうな
「知識の出どころも真偽も問わない」って言われたの、何気に初めて?嬉しかったろうな〜。 ライモンドは兄弟とわちゃわちゃしてて欲しい気もするけど、身分を隠してヴィルの副官とかやってても良さそう(見たいだけ
 ステイ! ステイッ!(笑)
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