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114話

「えっげつないわぁ。いや、元からライに魔法使われたら勝つん辛くなんのに、今回の詠唱魔法?魔法剣術?あんなん初見で対応できひんて。今までの付与魔法の効果も上がっとったし、今のボクやと勝てへんわぁ……」


 勝負がつくと、シローは悔しそうに、でも楽しんでいることを隠し切れない表情でやってられんわ、と文句を言う。


「ちょっと前まではこれが普通やったのに、久しぶりにやるとやっぱし反応遅れてまうし。今回の試合中間合い見誤るわ、ライの細腕に攻撃いなされるわでボクいいとこなしやんか」

「確かに、今まで魔法はともかく無難でクソつまんねぇ剣術で戦ってたくせに。シローの攻撃受けた時の動きは認めてやらなくもねぇ」

「なんでお前はどこまでも上から目線なんだよ」

「差しでやったら俺様の方がテメェより強ぇから」

「カーッ!何も言えねぇッ!!」

 どうせ天才に凡才である俺の苦労と努力はわからねぇよ!


 すでに付与魔法有りの戦闘に慣れたアルトゥールと今一対一で勝負しても絶対負ける。

 入学してすぐの決闘で俺が勝てたのは剣術に魔法を持ち込むと言う新手法を用いたこととアルトゥールの油断があったからだからね。


 アルトゥールに勝てないことなんてわかってはいるけど、やっぱりアルトゥールに上から目線で言われると腹立つので思いっきりつま先を踏みつけてやる。 

 打てば響くとはこのことか、すぐさま踏み返してきたアルトゥールと足踏み勝負をしていたところに試合を見ていたオリバーが近づいてきた。 


 ベルトランド兄様は何か用事でもあるのか懐中時計で時間を確認してから二言三言ミューラー先生と言葉を交わしてから訓練場を後にした。

 思えば俺が剣を振るっているところを見たことあるのってキュリロス師匠くらいだったから、兄弟の中だと今回のベルトランド兄様が初なのでは?


「ライ、付与魔法を使ってみた感想、どうだった?」

「ん、好い感じだよ、オリバー」

 アルトゥールとの足踏み合戦は放っておくと収拾が付かなくなるので、オリバーと会話しながらシローの腕を引っ張って俺とアルトゥールの間に引き込んだ。

 アルトゥールもシローのことは自分よりも強ぇ奴認定しているので絡むことはないし、三人でいる時で落ち着いて話がしたい時はこの並びが定位置だ。

 ふざけ合いの時はアルトゥールと並ぶことが多いけど、話したいことがあるときはこうでもしないと話ができない。


「効果は成金魔法時と比べて約一・五倍、使用魔力は体感三分の一ってところかな」

「必要魔力量はだいぶ減ったみたいだね。魔力の少ない騎士科の人でも使えそう?」

「あー、魔力量の平均ってどのくらいなんだろ」

「獣人族なんかだと種族的に魔力量は少ないけど、人族は千差万別だからね。そういえば、ライの総魔力量ってどのくらい?」


 オリバーの問いになんと答えたものかと頭を悩ませる。

 魔力量は基本的に親から遺伝するのだが、貴族や王族皇族は有事の際に国を守る責務があるため魔力量の多い者が多い。

 で、貴族は国は変われど貴族同士で結婚することがほとんどなので必然的に魔力量の多い子供が多い。 

俺は平民のふりしてるけどまごうことなきチェントロ王家とオスト皇族の血を引いているものだから、もちろん魔力量は平均より多い。


「…………たぶん多い方かなぁ。よく知らないけど」

 万が一の身バレ防止のためにも曖昧に答えるしかないのである。 

 まぁミューラー先生や騎士科の剣士はそもそも人の魔力量に興味ないのかふぅんで済ませるし、オリバーもまぁライは元々騎士科だからね、と深く追及しないでくれた。




 その後試合形式にはせずに、シローとアルトゥールに付与魔法をかけた時とかけなかった時の能力値の差を計測させてもらい、何か付与されてから気になる点。

 能力が上がりすぎて逆に戦い辛くなった点はないかを聞いてはみたものの、そもそもの身体能力の高い二人はすぐに順応してしまい、むしろアルトゥールはもっと向上させても問題ないと言ってのけた。

 試しに俺にかけてもらった時は、自分の速さについて行かずまともに打ち合うことすらできなかったんだけど。 

ミューラー先生も問題なく動けていたことからこれが才能のある者とない者との差かと思うとなんだか少し切なくなった。


「オリバー・ウッド。この付与魔法を使える魔導士は現在何人いますか?」

「え? あ、えっと。そもそも付与魔法は今年の初めにライが提唱して僕がそのアイデアを引き継いで研究を始めたばかりなので、論文として出るのは数年後、それを実践可能レベルで使える魔導士が出てくるのはさらにその後になりますね」

「ふむ。効果は私のクラスの実戦を見る限り絶大なんですけどねぇ。まぁ新戦術となるとそう簡単にはいきませんか」


 意外と付与魔法に対するミューラー先生の評価が高いことに驚いていると、それに気づいたミューラー先生は「ただし」、と言葉を続ける。

「あくまで基礎を固めた後の二年の後期から三年にかけてのクラスで取り扱うほうがいいと私は思いますが」

「……もしかして、俺が授業で使うのダメでした?」

「いえ。現状あなたしか使わないので生徒たちが色々な条件下で剣を振るえることを思えば、あなた一人が私のクラスで使う分には問題ありませんよ」

 ミューラー先生のその言葉にホッとする。流石に恩師だと思ってる人に迷惑ですと言われると堪えるからなぁ。



 とはいえ、これで留学までに学園でできることは終わった。あとは、西の国までの楽しい楽しい旅を終えると、俺の留学生活が始まるというものだ。


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