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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
留学編

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110/133

110話

 別に、万人に好かれたいなんて思っちゃいない。

 今でこそ俺自身ができる限り社交をせずに王位に興味を示さず、発端だった母上の態度も軟化して、エルフリーデが生まれたことでそういう視線が減ったとはいえ、子供の頃俺の周りは常にギスギスとしていたし。

 面識のない貴族から悪意を向けられ、面倒ごとを嫌う者たちからは避けられたりね。だから、従兄殿から向けられた類の悪意には慣れている。


 そもそも、他人から悪意を向けられたことのない人間なんてこの世にいない。どれだけ清廉潔白な人であれ羨望からの逆恨みややっかみを向けられるのだから、俺の噂か何かを聞いただけの従兄殿が俺をよく思わなくなることだってあるはずだ。それでも、

(仮にも血の繋がっている従兄に理由もわからず恨まれるのは複雑だな)


 俺は今でこそ自他ともに認める家族好きだけど、初めからそうだったわけじゃない。母上の発言のせいで、生まれてすぐの頃はマリアとキュリロス師匠以外に信用できる人がいなかった。貴族はみないつ始まるかもわからない後継者争いを警戒して俺に近寄らず、メイドや使用人たちですらその態度は友好的とは言えなかった。

 自分とマリアとキュリロス師匠。それから、あの日庭園で偶然出会ったジャン兄様。俺の世界はその三人と自分だけでそれ以外はみんな敵だと思っていたけど、ジョン兄様に出会ってから、もしかしたら父上や兄様たち他の家族も俺のことを愛してくれるんじゃないかって、初めてそう思えた。

 父上をはじめとした王妃様や側妃様たちに心配され気を遣われていたことを知ったのは、兄様たちと交流を持つようになってからだ。 

 下手に王妃様や他の側妃様たちが俺や母上の側にいたら、それこそ派閥争いが手に負えなくなっていただろう。 


 フェデリコ兄様の母親であり、父アブラーモの正妃であったカリーナ様をはじめとした上位貴族が誰も相手にしなかったことで、あれはあくまで母上一人が暴走しての発言とみなされ、だからこそ小さな派閥争いはあれど大きな問題にならなかった。

 もしもあの時カリーナ様が諭そうとして、当時まだ脳内お花畑だった母上に近づこうものなら母上は意固地になってもっと大きく反発していただろう。そうなったら他の側妃様たちはカリーナ様につくか母上につくか、はたまた自分の子供を次代の王に推すか。 

 何にせよ問題はもっと大きくなっていたはずだ。寂しいと涙を流したこともあったけど、その実俺はずっと家族みんなに守られていたんだ。 


 それはなにも家族だけに限った話じゃなくて、ずっと俺が遠ざけていた派閥争いの中心貴族であるホフレやバルツァー将軍にも言えることだ。 

 ホフレはきっと、俺や母上が本心では派閥争いなど望んでいないと知ったらもっと早く動いて俺の派閥を名乗る貴族たちを諫めてくれていただろうし、バルツァー将軍は俺が自分の庇護下にいることをもっと早くに表明して守ってくれていただろう。

 俺がそれを信じられなかっただけ。ジャン兄様のこともあったし、『俺』の記憶を持つ俺が何とかしなきゃって思い込んでた。今にして思うと、ずいぶん視野が狭く意地を張っていたものだ。当時の俺はハリネズミか何かか?

 俺は確かに前世である『俺』の記憶を持っているけど、こうして改めて考えてみると大人と言うには未熟で、かと言って子供と言うには要らない知識を持っている、ずいぶん中途半端な存在だ。

 前世を持つ俺ははたして前世の続きを生きているのか、まっさらな人生を歩んでいるのか。

考えると思考のドツボにはまっていきそうなので今は考えないようにしよう。


それはさておき、だからこそ今の俺は、相手がどんな人物であれどんな感情を俺に抱いているのであれ、まずはちゃんと話してみたいと思っている。

 まぁ、あからさまに俺を利用しようだとか、俺の大切なものに危害を加えようと思っている奴が相手の時はその限りではないけれど。


(狙ったわけじゃないけど、せっかく従兄殿と留学先が被ったのだから……)


 話をして、人となりを知って、それでもなお嫌われるのならあきらめよう。


(今の俺は、寂しくて泣いていた時の小さくて弱い俺じゃない)


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