夢路
わたしは立っていた。
俯いていた。
視界にあるのは自分のブーツのような靴だけ。
世界が広がった。
木の側に少女が立っていた。
俯いていた。
ブーツに袴姿で紅い番傘をさしていた。
ハイカラな格好だった。
その姿は何かを待っているようだった。
また、わたしは立っていた。
わたしの格好は先程見た少女そのものだった。
わたしではないはずなのにわたしだと思った。
いや、当たり前だと思って何も思わなかった。
(まだかな、まだかな…)
ただそれだけを考えていた。
また、世界が広がった。
春、夏、秋、冬、次々と季節は変わっていった。
少女は毎日のように木のもとに訪れていた。
晴れの日でも赤色の番傘を持っていた。
少女の目の前には橋があった。
少女はその橋の先を見ていた。
またまた、わたしは立っていた。
(まだかな、まだかな…)
やはりそれだけを考えていた。
その割には、様々な感情が蠢いていた。
寂しい、楽しみ、不安、期待。
ただただ、早く戻ってきてほしかった。
またまた、世界が広がった。
相変わらず、少女は待っていた。
紅い番傘を持って。
しかし、いつからか現れなくなった。
きっと、戻ってきたのだろう。
それが『何か』なのか『誰か』なのかはわからない。
お久しぶりです、聖月姫です。
はよ、TORを完成させろよって感じですよね。
この話は作者の夢をヒントに作ったお話です。終わりの後味の悪さは夢っぽさを残したかったからなので、ご了承ください。