58.戦争の終結(最終回)
合衆国、日本、ロシア、PRCの仲介により、ゼクトールとケティムの間に終戦協定が結ばれた。(ヨーロッパは役に立たなかったが、イタリアだけはエンスウに好意的だった)
即時停戦、そして終戦への条件が話し合われた。
ゼクトール代表として、国王桃矢、自らが話し合いの場に現れた。
夏の制服を身に纏って。
「僕たちとケティムが手を出した戦争という行為は、両国に恨みと辛みしか残しませんでした。戦争を起こさない努力と遠慮が欠けていた結果だと思います。それは片方の国だけではカバーしきれないものなのだと僕は思います」
ひな壇に立って、慣れない演説をしていた。
汗をかきかき、ハンカチで拭き拭き、そんな演説だった。
ゼクトールが望むのは、
「ケティムの国土並びに国民に対し、その必要性は全く見いだせない。我らが望むのはたった3つ」
1.ゼクトール近海での地下資源開発の中止。
2.ケティムの敗戦を文章で、かつ公的証言者付きで認めること。
3.戦後賠償金をドルで請求。
戦後賠償金はバリュー割引が適用されたが、それでも相当な額だった。
ただし受け取りは、現在のケティムの経済状況を考慮に入れて、30年後とする。という提案がゼクトールよりなされた。
30年という猶予がケティムに与えられた。
30年間という重石がケティムに課せられた。
ケティムに選択枝は無い。
このままの条件で調印されるであろう。
「いい加減、大国らしく大人になって下さいよ。小国を虐めるのは格好悪い事なんですよ!」
17才の少年が、老域にあるケティムの代表を諫めていた。
「あと、弱いからって、弱い立場を守るとか、弱さそのものを武器にするのはどうかな? 弱さも武器になってしまうと人を傷つける事ができるんですよ」
この言葉は公式の物となり、記録された。
「桃矢にしては、気の利いた挨拶ね」
再建なった(ヴィムの徹夜作業による)ゼクトール王宮(木造2階建て。卓球室完備)で、桃果が笑っていた。
前には録画された映像を映すテレビがある。
「これでも一生懸命考えたんだよ」
椅子に座った桃矢が、自分が映し出されたブラウン管を見ている。
桃果は、桃矢にしなを作って寄り添っていた。
開け放たれた窓から、そよ風が入ってきている。
10人の委員長も勢揃い。神官イルマもテレビを覗き込んでいる。
黒紫色に染まったヴィムもいる。あと、白猫と黒猫が一匹ずつ。
桃果が桃矢から離れた。
「次は内政ね。辣腕を振るうわよ!」
細い腕を振り上げ、ろろぶハワイを持った拳を固く握りしめる。
「ゼクトール非民主主義的絶対君主主義国! えいえいおー!」
「えいえいえおー!」
みんなが声を張り上げる。
可愛い拳が10個、宙を突いた。
エクトールの空はどこまでも青く、夏はいつまでも続くのであった。
「さてさて、何年かすると、この子達は大人となる。どんな大人になるんだろうね?」
ヴィムが心配などしてなさそうな声で、隣で寝転ぶ白と黒のネコに問いかけた。
ここから先は他人事なのだろう。
――数年後。
ゼクトールの虐げられた少女像は、そのほとんどが朽ちていた。
粗悪な材料を使っていたのだろう。
彫像自体、風雨で錆びて穴があき、台座から転げ落ちる個体が多かった。
運悪く、下敷きになって怪我をする子供も少なくなく、撤去する自治体も少なくなかった。
酷いところでは、設置の翌年に台座から崩壊。野良犬が巻き込まれた事もあって、動物保護団体が新たな目標としてやる気を出していた。
もともと、ケティムが設立当時から資金提供していた動物保護団体だった。
水に落ちた犬は叩けの諺を地でいくようである。
そして、ゼクトールでは……
ガラガラを片手に、オンブ紐で赤ちゃんを背負った赤黒いスライムが徘徊している。
そんな噂がまことしやかに国内に流れていた。
椰子の木が夕方の風に揺れている。
何千年も前から、風に揺れていた。
おしまい
これにて一巻の終わりです!




