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55/58

55.戦いの顛末

「お疲れ様でした」

 空母ファムの艦長からねぎらいの言葉がでた。


「お疲れ様」

 フリゲート・オボロ担当の戦闘艦橋からも、ねぎらいの言葉が出た。

 ……。


 種明かしをしよう。


 戦闘で沈んだフリゲート2艦は、リモコン操縦である。

 駆逐艦ブレハート内部に設置された、各担当戦闘艦橋からのリモコンで操艦していた。

 重要部分に高性能自爆装置を積んだ上での出撃だ。魚雷1本で沈むようになっている。


 駆逐艦ブレハートは小さい。小さいとは言え、元々300人規模の収容能力を持つ船である。

 40人かける3隻=120人程度、余裕で収容できる。

 空き部屋も多い。リモコン操作用艦橋の3つや4つ、どうとでもなる。


 元々、敵の攻撃により沈められるのが目的だった。だから、本物のオボロ・カゲロヲじゃない。

 改造前の引き揚げ同型艦を、ヴィムがそれっぽく仕上げたのだ。


 本物は、ゼクトールの岸壁に係留されている。ロゼの仲間がビデオに収めた。あれは本物だったのだから、騙したわけではない。無実だ。


「演技、うまくできてましたか?」

 カゲロヲの操艦担当者からだった。


「オスカー賞ものよ! 任務遂行のため、希望を託すため、美しき犠牲的行為! 全世界が、けなげなフリゲート艦に涙したわ!」

「わーい!」

 犠牲を美しいなどと、心の底から思っていない人から、お褒めの言葉がかかった。


「潜水艦戦なんかやったことないからね! だったら、こっちの得意分野で戦わないとね!」


 桃果の得意分野。

 それは空だという。

 海上だともいう。


 いいや違う。

 最も得意なのは、詐欺分野なのだ。


 敵の戦力を削り、かつ味方の戦力も削らねばならない作戦。

 自艦も魚雷を喰らい、沈没寸前。戦闘能力を消失する。ミサイル発射を妨げる者はいなくなる。

 

 そうすれば、敵はミサイルを撃つ。

 撃つために、こちらの手の届く位置までノコノコやってくる。

 悔しがるゼクトールの眼前で、悠々とミサイルを撃ちたい誘惑は巨大である。


 そこを叩けばよい。


 今回、虎の子の高速300㎞/h魚雷を30発残しての、弾道ミサイル撃破であった。

 核ミサイル自爆は想定の一つであった。


 そういうことだ。  


 とはいうものの、さすがの魔改造駆逐艦も、核の至近弾を受けて、まともでいられるはずがない。


 残念ながら歴戦の勇、ブレハート(表バージョン)はここまでだった。

 安全工作を施したコア部分以外、ゼクトールまで保たないだろう。

 

 涙ながら、自沈処理となった。


「所詮、戦う船。鉛筆削り機が鉛筆を削るだけの道具であるように、戦闘艦は人の命を奪い、物を壊すだけしかできない船。これがブレハートにふさわしい最期なのよ。……総員敬礼!」

「ご苦労様でした!」

「あざーっす!」

 いろんな声をかけられながら、駆逐艦ブレハートは海底に沈んだ。


 これからは優秀な魚礁として、第二の人生をはじめるのだ。

 

「これでゼクトール艦隊全滅。空母が残ってるけど、ほぼ全滅と世界は思うでしょうね」

 桃果は、黒い笑みをその可愛い顔に滲ませる


「これは次の一手への布石。帰ったら、すぐに正規艦隊を率いてケティムの港湾施設に砲撃を加えるわ! 休んでいる暇はないわよ!」

 行動力がありすぎるのもはた迷惑である。


「戦術航空巡洋艦ファム・ブレイドゥ、超高速航行でゼクトールへ! 明日の夜明けまでに――」

 桃果は言葉を一旦切った。


「――故郷へ帰るわよ!」


 いよいよ、ゼクトールは被害者側から加害者側へと席を移動するのであった。







 一方、ケティム本国では……。


 アモス撃沈、核ミサイル誤爆の情報は、ケティム軍首脳並びに政府上層部に伝わった。

 作戦失敗である。


 面子だとか、いろんな物が崩れ去った。

 たった3隻の敵艦と引き替えに。


 面積500㎞平方に満たない小国に完敗した。


 対外的に、内政的に、たいへんまずい事態となった。


 ここでの正解は、ただちにゼクトールと和平交渉を開始し、どこからか指摘される前に核攻撃の非を詫びる事である。


 しかしそのような思考方法をケティムは持ち合わせていなかった。


 特に弱みを国内に見せるわけにはいかない。一気に体制が崩壊する可能性があると政府側は推測する。

 推測する、と自覚してしまうような政治を行ってきたのだ。


 ケティムは自分の耳と目を自分で塞いだ。

 そして翌日の正午。作戦を継続し、実行した。

 それは未熟者が陥りやすい悪手であった。



 ゼクトールは、原潜アモスの弾道ミサイルを封じた。

 しかし――






 あれが最期の弾道核ミサイルだとは、一言も言ってない。




次話「ファムさん、本気出す!」


あと3話で最終回となります。


お楽しみに!


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