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52.対潜戦闘①

 チート能力を誇るゼクトール軍にも、苦手とされる領域がある。


 それは海中。


 陸に空に海に、反則技でブイブイいわせているゼクトール軍は、海中を不得手としている。


 ちょっと考えれば解る。

 ゼクトール軍の反則の力の源は、外宇宙航行船タミアーラの超技術である。

 宇宙船は、海中に対応していない。


 各国が、ゼクトール水中艦隊の強靱さに傾注しているが、それは超深海対潜対艦対軌道対地攻撃潜液艦ブレハート・ドノビ一体に因るものだ。


 ブレハートが他の任務に就けば、たちまちの内に海中戦闘力は落ちてしまう。

 そしてブレハートは、訳あって戦闘海域の外にいる。


 もう一機、超戦艦が衛星軌道上にいる。恒星間航行用超弩級破壊型戦列戦艦ファム・ブレイドゥである。

 しかし、さすがのファムの超観測機器も、深深度を潜行する物体を捉えにくい。


 なにせ、外宇宙用戦艦であるのだから。限度は浅い海面下、または地表下までである。

 よって、細かいところは人の手でカバーしなければならなくなる。


 そのため、今回も先陣を切るのは赤い三連星であった。

 ファムよりもたらされた、およその海域を赤い戦闘機が飛び回る。


「モモカ様、海面下のブレハート様に応援を願えば、あんな敵など一撃ではありませんか?」

 駆逐艦ブレハートの副艦長が、モモカに疑問をぶつけてきた。


 今回は、前にも増して、特に回りくどい仕掛けを施している。

 正直面倒くさい。


「今回、ブレハート様は別の任務に就いてもらっているわ。本作戦からすると支援作戦に位置するのだけど、戦略的見地からどうしてもこの支援作戦にブレハート様を投入しなければならないの」

「はぁ」

 副館長は、いまいちぴんと来ていない。


「悩んだんだけど、戦場に蝿が如く集まってくる外国の調査船を追い払う必要があるのは解るわよね?」

「はい。今後のゼクトールのためです」


「で、それを誰にも解らないように追い払う技を持っているのはブレハート様だけ。一方、見える部分で敵を撃退できるのは、我らが正規ゼクトール艦隊だけ」

「なるほど、分業ですね」

「そう、分業よ」


 もとより、桃果の作戦指示に疑いなど微塵も挟んでいない副艦長。納得いったので、議論を中止した。


「我々の最終目的は、核ミサイルを積んだ原潜アモスを撃沈する事。この事を忘れないで。いかなる犠牲を払っても、アモスを沈めるのよ!」

「はい!」

 ブレハートの狭い戦闘艦橋に冷たい緊張が走った。


 


 ケティムの潜水艦は、偶然、赤い三連星を捉える事に成功した。

 通信のため、海面近くまで浮上していた潜水艦が、潜望鏡で直接捉えたのだ。

 これはケティムにとって、想定外の事態であった。


 潜水艦の艦長は、悔しさからか、奥歯をかみしめた。

「なんで、ゼクトールのちびっ子が、今ここまで出張ってきてるんだ!?」


 弾道核ミサイル発射直前での遭遇である。


「連中の小さい脳で、我らの戦略を解き明かすことなどできないはずだ!」

「ならば、どうして!?」

 副艦長も驚いている。


 艦長は少し考えた。

「……ゼクトールはケティム本国への攻撃を企んでいた。おそらく、前回の戦いの後、本国で補給を終えた後、返す刀で出撃したのだろう。現に油断していたからな」

「神をも恐れぬ集団だな。そんなことが許される法があると思っているのか?」


 間違った推理である。人はどうしても辻褄を合わせて自分を納得させたい要求がある。謎は謎のままにしておきたくない。正体不明とはそれだけで不安なのだ。人は、謎を解き明かす事により安心を求める生き物らしい。


「我らの勇気を見せつけてくれよう」


 勝手に考えてくれた理由により、安心した艦長は、祖国を愛する軍人として覚悟を決めた。

 被弾覚悟で重要通信を送り出す。衛星を介して、本国へと送り出したデーターの最後に、ゼクトール艦隊との遭遇を伝えた。


 後はアンテナを回収。潜行するのみ。と、する時点で捕まってしまった。




 ケティムが赤い三連星を捉えた時、赤い三連星もケティム潜水艦を捉えていた。

 電子戦機であるノイエ機が通信の一部始終を掴んでいた。


「レッドリスト3より、レッドリスト1へ。敵潜水艦、全ての情報伝達完了を確認」

「レッドリスト1よりレッドリスト2へ。攻撃開始!」

「レッドリスト2、了解!」


 わざと泳がしていたのだ。ゼクトール艦隊と核攻撃部隊が接触した事をケティム本国が認識するように。


 

 赤い戦闘機より放たれた銃撃により、アンテナが吹き飛んだ。

 急速潜行するも、二番機より放たれた兵器により、船殻を損傷。撃沈された。

 原潜アモスを警護する、三杯の通常攻撃型潜水艦の一杯であった。



「レッドリスト1よりレッドリスト3へ。ECM戦開始!」

「レッドリスト3。了解!」

 そして、ゼクトールの常套手段、超電子戦が展開された。



 赤い三連星がもたらした潜水艦発見の報に、ゼクトール艦隊は現地へ(通常速度で)急行した。


 モモカが搭乗する駆逐艦ブレハートと、フリゲート艦のカゲロヲとオボロの2隻。計3隻によるいつもの布陣。空母ファムは後方に身を潜めている。


 早くも、赤い三連星と駆逐艦ブレハートは、敵潜水艦隊の全容を掴んだ。

 ケティムは、攻撃型潜水艦2隻を前に押しだし、核ミサイルを積んだ原潜は深深度に潜って身を隠している。


 ここは海底山脈が居並ぶ複雑な海底地形をもつ海域。潜水艦なら隠れるところは沢山ある。

 桃果達からは丸見えなのだが、先の理由で、見えないフリをしなければならない。


 この戦いには規制があった。ゼクトールにとってハンディキャップ戦だった。





 合衆国は運が良かった。

 ここは、先に戦いがあった海域だ。

 ゼクトールの不可思議な戦闘の一部でも解明しようと、合衆国艦隊がこの海域に進出していたのだ。

 独自のルートでケティムの動きを知った合衆国は、態度を観戦と決め込んだ。


 このため、水の神ブレハートが駆り出されたのだ。


 合衆国艦隊の動きを阻害する。これは超潜水艦ブレハートにしかできない事だ。

 おかげさまで、合衆国艦隊は水上も水中も、戦場に近づけない。


 ただし、飛行機は別だ。

 飛ばされた観測機は、この戦いを肉眼で監視するだろう。


 ゼクトールが密かに誇る超ECMが、合衆国の電子の目と耳を潰しているのだから。

 この事が、後に彼らの命運に大きく関わってくるのだが、現時点では神のみぞ知るである。

 

 駆逐艦ブレハートの戦闘艦橋で、桃果が唇に皺を寄せていた。

「どうにかしてアモスを浅深度まで上がらせなきゃね」


 自作の海軍帽グローバルタイプをかぶり直し、艦長席より立ち上がった。


「1号作戦で行くわ! 三連星を下がらせなさい!」

 第三次ゼクトール・ケティム会戦が始まった。




次話「対潜戦闘②」



カゲロヲより入電。『後はお願いします』


お楽しみに!

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