48.会議室
合衆国のとある一室。
一癖ありそうな者ばかりが顔をつきあわせていた。
「あきらかにゼクトールはおかしい」
「確かに」
書類を読んだ後の会話である。
「エネルギー、操艦術、警護、全て辻褄を合わせようとすれば、合衆国以上の能力が必要だ」
「合衆国以上? ずいぶん小さな事を言う。私の意見はこうだ。合衆国を遙かに超越している。どうだ?」
「私は愛国主義者なんだ」
「それじゃぁ仕方ないな」
会話の流れが途絶えた。
「要観察……だろうか? 行動に出るべきなのだろうか?」
「日本のある商社が、裏からゼクトール支援に回った。何かに気づいた者がいたのだろう。それが政府ではなく民間だといった点が、日本らしいといえば日本らしいな」
「日本が動いたのなら、合衆国にとって悪い事ではないだろう?」
「今は、ケティムが抜けたパワーバランスの穴を埋める事に傾注すべきだ。……予算も限られているからな」
「二面作戦はとれぬ。……予算も限られているからな」
「悪かったな」
「予算をアップしてくれるのでしょうな?」
「金は回す。だが、あまり期待しないでくれ。もうすぐ大統領選だ」
「……ちょっと失礼」
背広姿の男が、胸ポケットからスマートフォンを取り出した。
「会議中と知ってコールしてくるということは、この会議の議題提案なんだろうな?」
スマホの向こうにいる者は短い文章を伝え、勝手に電話を切った。
「どうした?」
「ここで聞きたいか?」
「ああ、ここで今すぐに聞きたいね!」
「ケティムが、核弾道ミサイル装備の潜水艦を動かしたと言っている」
ゼクトールは、国王帰国に湧いている。
各家庭の夕食はごちそうが並んでいた。
しかし、仮設王宮において、娑婆の浮かれ具合はどこ吹く風。
時刻は夕刻の7持。
緊急委員長会議が開かれていた。
会議机の上に散らかっている各種資料を片っ端から読みふける委員長達。
誰も彼も真剣な目だ。隣の者とひそひそ話をする者もいる。
桃果の目にまで切迫した色が浮かんでいる。
カラー印刷された資料は――
ろろぶハワイ。グアムの歩き方。等々。
観光、並びにアクティビティが集まった、何十冊もの旅行雑誌。
何か参考になるかと、桃矢が買い込んだお土産である。
「ボディーボードにサンセットクルージング。水着貸し出しとか、その辺にあるのを美辞麗句でまとめりゃ一丁上がりじゃねぇか! 迂闊だぜ!」
パンパンと手にした雑誌を叩くエレカである。
「出張マッサージ55ドルって、どんだけ暴利を貪ってるんですか!」
ジムルが赤い眼鏡をクイっとあげる。
「秘伝、ゼクトールマッサージ、1時間24ドル。オプションのココナッツオイルかっこ廃油かっこ閉じるマッサージはプラス5ドル。日の上がる浜辺に、日が沈む浜辺、パワースポット、ゼクトール魚介ラーメン、イルカに鯨、民家利用のホームステイ式修学旅行誘致。いくらでも応用できるじゃない!」
ゼクトール経済企画会議であった。
桃矢の暗殺未遂事件より重要度の高い経済会議であった。
「それでは国家戦略プロジェクトとして、プロジェクトチームを立ち上げましょう」
パンパンと手を叩く宰相ジェベルさん。
さんせー! と手を上げる委員長達。
その時、バサリと天幕が捲れ上がった。
「皆の者、緊急事態じゃ!」
姿を現したのは神官長イルマ9歳児。そして取り巻きの巫女さんが2名。
手に何やら神職にそぐわない機械を持っている。テレビだ。
巫女さんはテレビ設置のため、てきぱきと働いている。
「どうしたのイルマちゃん?」
桃矢はわざわざ回り込んでしゃがみ、イルマと目の高さを調節した。
「ケティムがバカな手段にでたのじゃ。これ! 頭を撫でるではない!」
撫でるなと言いながら、手を払おうとしない。
始動させた発電機を横目に、桃果もしゃがんで目の高さを合わせた。
「どうしたの? 国家破綻を覚悟で艦隊出した?」
「これを艦隊というのならな」
イルマの捨て台詞と同時にテレビが画像を流し出した。
「いつも通り、録画じゃ。ただし、15分前のだがのう」
映ったのはケティム国内のニュース。
潜水艦が出航する映像だ。
「ケティム海軍に所属する攻撃型原子力潜水艦アモス」
ここにいる全員の頭に、嫌な単語、もしくは有名な画像が浮かんだ。
「アナウンサーは、ゼクトールを核攻撃すると言っておる」
次話「核兵器」
「フッ、話は聞かせてもらった」ヴィム・マスクが現れた!
お楽しみに!




