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36.戦後交渉①

 ゼクトール艦隊、本国に無事帰還。


 生還率は破壊神A10を上回っていた。


 今回の戦いにおいて、戦死者無し。負傷者5名。内、4名は主計科にて、包丁の取り扱い失敗による手指の怪我。

 残り1名は、ミウラ。


 彼女は酷かった。船に乗っていた者より大きなダメージだった。


 ミウラは過剰な心配と責任感により、急性十二指腸潰瘍で緊急搬送を受け、現在入院中である。


 なんにせよ、損害無しと言い切っても良いだろう!


 ゼクトール国内はお祭り騒ぎ。どこの文化を真似たのか、提灯行列まで出てくる始末。

 留守を預かるジェベルをはじめとした、各委員長達も泣いて喜んでいた。


 神官職のイルマは、早くも盛大な祭りを執り行っていた。


 さっそく、戦闘中に集められた各種資料が文部科学委員長ミラ・ロコモコの元に集約される。


 貴重な動画の幾つかが、国土交通委員長エレカ・フリフラの手に渡り、各国へ配信、ならびにネットへ意図的に流出、広告料……もとい、分析され、……利益は……言い換えるうまい言葉が見あたらなかった。

 正式ルートを通さないところがセコイ。


 えー、そうなんだ! うそくせー! 運が勝たせた戦争。自演乙! いつの間に?


 等々の批判、感想、に続き、事実として、小国家ゼクトールが、大国ケティムの艦隊を押しのけ、あまつさえ、前線基地を破壊した事が複数の組織より確認されるに至った。

 今回の一連の出来事について、全世界が知るところとなるのであった。


 それでも、いまだゼクトールとケティム間に、公式・非公式問わず、話し合いの場が持たれず、また双方とも持つ気が無く、戦争は次の段階へ進もうとする気配すら見えてきた。


 事、ここに至り、さすがに世界が動かざるを得なくなった。

 ラブ&ピース。戦争反対! 戦争を止めろッ!


 合衆国とPRC、そして日本が中心となって、調停へ乗り出した。

 ケティムへは、主としてPRCがあたる。

 PRCの中の人は、まあ、任せておけと笑っていた。


 同じように、ゼクトールには合衆国と日本があたった。

 甘いお菓子を沢山持って交渉に臨んだ結果、国連という公開の場で仲裁の話をすることを条件に乗ってきた。




 舞台は国連の、とある部会。


 加盟国で、欠席する加盟国代表はいなかった。

 なぜか、複数のメディアまでもが、放映権を得てカメラを設えている。


 キャスターの一人がロゼだったりする。 


 取材させてもらっても良い? いんじゃね? なぜ報道を入れる? おや、ケティムさん、何かマズイ話しでも? 無い! なら、ケティムも国営メディア入れれば良いじゃん!

 だったら、うちもお仲間に! うちも、うちも!

 いや、ゼクトールとしては、口きいてやってもいいけど……。

 ならば、お礼はそれなりに……いえ、放映権の整理という理由で、一つ。

 ちょっ、そういう話は国連を通してもらわないと。当然で御座いますとも、お代官様!

 

 そんな大人の理由と、国連総長のはからいで、複数のメディアによる生放送が行われることとなった。

 戦争を停戦に導いた国連総長として、名と顔を売りたかったのかもしれない。

 

 前代未聞である。


 ケティムの代表は、60歳を超えたバリバリのエリート。酸いも甘いも、山も谷も越えて交渉スキルをカンストさせた男である。薄くなった頭頂が、彼の経験量を物語っていた。

 黒のアタッシュケースを小脇に抱えている。


 ゼクトールは……エンスウ・シャオロン13歳。

 いつものピンクのリュックである。




 合衆国や日本のロビー活動もあって、ロシアを調停派に引き込んだ。東南アジア系やアフリカ系も調停派である。EU諸国は様子見の体である。


 会議前に両国関係者と話をもてた。


 ケティムは老練な国。利にさとい故、面子さえ立てれば引き下がる感触だった。

 ゼクトールは感情的になっているが、安全を保証してやれば引き下がるだろう。

 現に、ゼクトールは水面下交渉時間切れぎりぎりになって、ケティムから先に停戦条件を出させる、という条件を出してきたのだから。


 会議はすぐに本題に入った。


 お互いがお互いを名指しで侵略者と非難。喧々囂々(片方は泣きそうになりながら)言葉が飛び交った。

 両国が、だいたい、言いたいことを言い尽くした頃合いを見計らって議長が仲裁に入る。


「おたがいの停戦条件を表明するように」


 まずは条件を出し合って、納得いくように摺り合わせる。

 この後何回も会合を持って、最終的な着地点を導く。

 ここは国連の権威をもって顔を利かす場面だ。


「ではケティム代表、そちらから」

 エンスウとの約束を律儀に守る好々爺、議長である。


「では――」


 ケティムが出した条件に出席した代表達は、顎を落とした。

 エンスウも、可愛い口をぽかんと開けていた。


 その条件は……


1.ゼクトールは今回の戦争を、ゼクトールの侵略戦争であると認めること。


2.何の罪もないケティムに対し、未来永劫に渡り、誠心誠意、謝罪し続けること。


3.埋め立て地は我が国固有の領土である。ゼクトールより受けた損害を全て請求するものとする。


4.ガス田開発並びに、油田再開発に人員を提供すること。


5.コマンダーゼロを戦犯としてケティムに差し出すこと。


 以上!






次話「戦後交渉②」


お楽しみに!

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