21.蒼海の対SS戦②
「じゃあ、僕は準備をするから」
桃矢は、ほくそ笑んでいる桃果を横目に、探査士の女の子と何やら打合せをしている。
その間に、桃果は通信士に命令を出している。
「責任者を呼びなさい。ああ、その前に、威嚇射撃しておきましょう。主砲、3番目のプラットホーム手前20メートルの海面に一発叩き込みなさい」
ハデな水柱が上がり、プラットホームを水浸しにする。
砲撃のおかげか、通信はスムーズに繋がった。
「ここの責任者、オズ・ドントです。ここは国際的にも認知された平和な施設です。武力行使は控えてください。訴えますよ」
プラットホームの最高責任者が出てきた。……ケティム人だった。
桃矢は、通信士を通し、自分の正体を明かし、ここに来た訳を話した。
国王自らの交渉に、ビビリが入るオズ。
しかし、したたかだった。
『SSの船? そのような船は見たことがありませんな』
「かくまっていないと?」
『かくまっておりません』
「では、SSを探し出して攻撃を加えても関係ないと?」
『関係ありません』
「SSは、我が国はもとより、合衆国議会より海賊と指定されているのをご存じですか? 知らなかったら、資料を送付しますが?」
『ええ、知ってますよ』
「映像を圧縮ファイルで送ります。見ていただけませんか?」
ブレハートの力を持ってすれば、プラットホームで使われている衛星経由のメールアドレスはすぐにわかる。
電子メールの形で、とあるファイルを送った。
プラットホーム内の事務所にオズは、数人のスタッフと共にいた。
オズは、なんでアドレスが解ったのだろうと訝しみながら、とりあえずファイルを開いた。
動画だった。
SS旗を靡かせた、SSの船が、プラットホーム下の船着き場に着くシーンだった。
現在の画像も小窓に表示されている。
続いて音声が流れた。
『SSの船? そのような船は見たことがありませんな』
『かくまっていないと?』
『かくまっておりません』
『では、SSを探し出して攻撃を加えても関係ないと?』
『関係ありません』
『ところで、SSは、我が国はもとより、合衆国議会より海賊と指定されているのをご存じですか? 知らなかったら、資料を送付しますが?』
『ええ、知ってますよ』
先ほどの通話記録だった。
これでゼクトールがSSの船に攻撃を加えても、こちらから文句が言えなくなった。
証拠があるので、訴えに出にくい。
一杯食わされた!
オズは平然としていたが、妙に油っぽい顔になっていた。
『ご安心下さい、オズさん。あなたのプラットホームに危害は加えません』
通信は一方的に切れた。
「所長! どうしますか?」
部下は青い顔をしている。
「ゼクトールは小市民だ。手を出す気構えなど――」
オズは、窓の外に火が走るのを見た。
「え? ミサイル? うぉっ!」
プラットホームが大きく揺れた。
「なんだ? どうした?」
どうしたと聞いてみるものの、その実は分かり切ったことだった。
ゼクトールの軍艦が、下の係留所に停泊しているSSの船を狙ってミサイル攻撃を行ったのだ。
「所長! またゼクトールから通信要請です。所長を出せと!」
「解った!」
オズは、古い型の通信機を手に取った。
今回は、ゼクトールより会話が始まった。
『我々は、これよりケティム艦隊と一戦交えます。勝つ事をどの神様でも良いから祈っていただけますか?』
「……どうして、敵の勝利を祈らなきゃならないんだ?」
『負けちゃうと僕らは逃げます』
「当然だな」
『そうすると、次の戦場予定海域は、ここになるんですよ』
ガス田で戦闘。引火して大爆発して下さいと言わんばかり。それは迷惑この上ない。
それ以前に命が危ない。
『それ、困るでしょ?』
オズは大いに慌てた。
「わ、私たちはどうすれば……」
『僕だったら、今すぐ荷物をまとめますけどね』
そして通信は途絶えた。
ゼクトールの軍艦は、北へと舳先を向け去っていった。
ケティム艦隊の勝利は疑わない。
しかし、祖国が勝つと……。
ゼクトール艦隊を一杯でも討ち漏らすと……
ここ、主プラットホームに、定期便の中型船が停泊しいている。半月に一度の定期便だ。
三十人は乗れる。ちょうど、上級管理職であるケティム人の人数と同数だ。
残り従業員の人数分の、非常用ゴムボートがあるにはあるが、ケティムまで航海する能力はない。
全員を避難させるだけの船を手配するにしても、2週間はかかる。まして近海で海戦が予定されているのだから、到着は大幅に遅れるだろう。
では、最高責任者としてどうするか?
次の朝。
プラントの作業員は、上級管理職であるケティム人が一人もいないことを発見した。
定期便の中型船もいなくなっていた。
後日、プラントで火災事故が発生。統括・指揮する管理職が不在のため事故は拡大する。
大惨事となったそのニュースは、全世界を巡り、結果オズが逮捕され、ケティム自ら極刑を言い渡すのだが、それは一ヶ月も先の話である。
次話「ゼクトールvsケティム、艦隊決戦・第一回戦」
両者、激突です!
お楽しみに!




