プローポーズ?
「綺麗ですね」
瞬きさえも惜しいぐらいだった。
ふとクラウを見ると目があった。
「君の方がきれいだよ」
そんな台詞をさらっと言えるクラウは星に照らされて本物のお伽話に出てくる王子様そのものだった。長いまつげをふせ、クラウはなにか考えているようだった。
「アリア姫…きみに話さなければいけない事がある。さっきの食事の時だってそうだが、母は危険だ。しかも君の事を良く思っていないし、何をし出すか分からない。」
彼はぽつぽつと言葉を紡ぐように話し出した。
「本当はこんな風じゃなかったんだ。僕の母はとても優しかった。国の為ならどんな事だってする理想の王妃だったんだよ。でも王である僕の父親が亡くなった次の日豹変した。国の金を使って遊びだし、僕に結婚しろとまで言い出したのもその一つだ。悪い事は言わない。ここから速く逃げた方がいい。」
星空を眺めながら彼は寂しげにミリアを見た。そんなクラウにいつもの明るさはなかった。
「私は逃げません。」
「どうして?」
「だって、貴方と結婚する為にここまで来たんですから。」
「あはははは…一回の食事でなにが分かるの?お金か…欲しいならいくらでもやるから出てってくれよ」
ミリアは驚いた。彼がそんな風に弱音を吐くなんて、メイドとしていつも一緒にいたのに一度もなかったからだ。
「クラウド様…私を信じては?」
自分でも驚いた。誰も信じないと決めた自分が自分自身を信じろと言っているのだ。
「君は僕を信じれるの?」
「信じます。貴方を信じて貴方に殺されても貴方を恨まない事をここで誓いましょう」
「…僕も…信じるよ。」
なぜだろう。出会ったばかりなのについ彼女には本音が出てしまうのだろう。星に照らされる彼女はお伽話のお姫様のように美しく儚い。そんな彼女の口から僕を信じる。なんて一番聞きたかった言葉が出てきた。つい自分も信じるなんて事を言ってしまったのだろう。でも彼女になら裏切られてもいいと思ってしまう。また星空を見上げる彼女の瞳をみる。
あぁ…そういう事か…
「さっきの結婚する為にここにきたって本当?」
すると彼女は戸惑う。きっとこれには裏があるのかもしれない。でも今はその裏でさえも信じようと思える。
彼女の瞳を見てとっておきの台詞を言う。
「僕と結婚して下さい」
少し顔を赤くしているのが分かる。いたずら心でおでこにキスをしてしまった。これは流石にやり過ぎたか。一層顔を赤くして戸惑うから僕まで照れてきちゃったじゃないか。
「ふざけないでください」
彼女は下を向きながら優しい口調でそう言った。
「幸せになれるおまじないだよ」
あぁ…今日はちょっと頭を冷やさなきゃ。