悲しい現実
(大丈夫?)
(アリアは大丈夫なの?)
同じ体を共有しているのだからアリアになにかあってもおかしくないはずだ。
(私は心の中だからなんともないみたいね。呼ばれているわよミリア)
「ミリア…お願いだから目を冷ましてよ…」
「このまま私が死んだら貴方はどうしますか?」
ミリアは目を閉じたまま言った。ミリアは少しふざけただけだったのだが、急に強く抱きしめられた。
「良かった…死んじゃったら僕もう生きられないよ。」
ミリアはとても驚いた。と同時に何と呼んでいいか分からない感情がこみ上げてくる。今の自分の顔を見せたくなくてミリアは下を向いた。
「ごめんっ痛かった?」
クラウは華奢な体を強く抱きしめた事を後悔した。
「いいえ…王子が私なんかを抱きしめらいけませんよ」
と言いながらも抱きしめらた事があまりなかったミリアはクラウの温かさに安心していた。
「ガチャッ」
空気をぶち壊す音と共にミシャインが入ってきた。ミリアはクラウの事を跳ね除けて距離をとった。別段悪いことをしたわけではないのにミリアはひどく焦っていた。そんなミリアを彼は少し寂しそうな顔をして見ているような気がした。
「クラウド様大丈夫でした?」
ミシャインがミリアをチラチラ見ながら聞いている。
「僕は大丈夫だから…ミリアを心配してあげて」
クラウはそう言ったがミシャインはミリアと言うのが誰の事かわかっていないようだった。クラウはお大事にと言いながら部屋を出た。
「貴女の仕事っぷり立派だったわよ。おかげでまだ結婚ゲームに参加しなきゃいけないけどね。」
ミシャインはクラウが出て行った瞬間に態度を一変した。そのままクラウを追いかけて部屋を出て行く。分かってはいたものの、上に立つものは称えられるだけではない事を改めて見させられると、いつも明るいクラウの事を思い出した。彼は何も悪くないのに…
その時
(代わって)
アリアの声が聞こえた。
ミリアは急いで意識を集中させた。服もなにもかも変えてない為に瞳の色だけが変わるという奇妙な出来事が、起きたが誰も気づいてはいないようだった。
アリアはミシャインの騎士を呼び止めた。ミシャインが遠くに行ったのが分かるとアリアはやっと言いたいことを言った。
「ミシャイン様の事をお思いになるならもっと別の方法がなくて?」
毒を盛ったのを見破っていたアリアはさらに彼の動機まで見破っていたのだ。心の中でミリアも驚いていた。アリア昔から人間観察ばかりしていたため、誰がどんな事を考えているのかすぐわかるようになっていた。
男は何の事だ?という顔をしながらも額の汗をかくしきれていない様子だった。アリアはそこまで問い詰めず、部屋を出なさいと促した。というのもミリアが体を壊して寝ている間に一日が過ぎ今日のよるはクラウに食事に誘われている日だからだ。もう何度も断っているのでこれ以上断ってしまっては失礼にあたる。まだ少し痛む体をおこして部屋に向かった。
「アリア様。お体は大丈夫ですか?」
アリアの事を寝ずにまっていたのかミシエルは少し疲れていた。
誰も、アリアとミリアの違いが目を見ないと分からないのに、彼には分かるらしい。