2人で1人!?
ゆるいカールを揺らし、花に水を与え、天使のような笑顔を見せる少女はエリオアル王国の王子クラウド・ラーズヴェルトの花嫁候補のアリールだ。
エリオアル王国では王子の花嫁を決定する際に、数人の花嫁候補を一ヶ月間宮殿に呼び生活をして決めるのだ。
そして、今回最も注目されているアリールはなかなか王子と喋ろうとはしなかった。アリールの正体は美しい花嫁では無かったのだ。
アリールは花に水を与え終えるとスカートを早歩きで部屋に戻る、気配を消して、外の音に耳を傾けた…誰もいない事に気づくと豪華なドレスを脱ぎ化粧を水で手早く落とし、髪を高いところで一つに縛り、ややきつめのメイクをする。最後にメイド服に着替えた彼女は先程までのお姫様感は一瞬で消え去り、美しいメイドになった。そして彼女にはもう一つの秘密があった。
(早く起きてー)
ここの中で呼ぶ。
(おはよう、アリア)
すると心の中から返事が聞こた。
(ミリアの出番よ)
途端に彼女の瞳の色が琥珀色から瑠璃色に変わった。
彼女の中には双子の妹ミリアがいるのだ。
一年前…妹ミリアがクラウドの婚約者候補として、宮殿に入るはずだった。
しかし宮殿に向かう途中黒い霧が現れミリアは何者かに連れていかれた。皆、ミリアはクラウドとの結婚を嫌がり、自分で逃げたのだと言うが、しかし彼女はそうは思わなかった。聞いてしまったのだ…
「助けて…」
ミリアの消えかかりそうな声を…
しかしその事件の一週間後彼女の身に異変が起こった。
アリアはミリアの居場所を探す為に、次の街へ向かおうとしていた。すると身体に何が入るのがわかった。
(久しぶりね)
「え!?どういうこと!?」
つい大声を出したアリアを周りの人々がヒソヒソしながら見ている。それは当たり前だ。周りからみたら急に一人で叫んでいるのだから
(アリア、心の中で思えば話せるわ)
ミリアは笑いながら言う
(どういうことなの?)
彼女はおそるおそる心の中でそう聞いた。
(私も分からないのだけれど…とりあえずアリアの心の中にいるわ…少し目を閉じて意識を集中さしてくれる?)
ミリアは言うが、彼女は意味が分からなかったでも今の時点で意味の分からないことはたくさんおきているのだ。彼女は疑わずに目を閉じた。
すると声が出なくなった。
「出来たわ!」
代わりに彼女の姿をしたミリアが声をはっした。
(一つお願いがあるの。私が連れていかれたのは宮殿の地下、クラウドの弟が仕組んだ事よ。どうか私の体を取り戻して…)
彼女は迷わなかった。宮殿に婚約者候補として入ることにしたのだ。
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