暗号の解読
【文芸バトルイベント「かきあげ!」第二回イベント参加作品・テーマ『謎』】
※これは某学者をモチーフにしたフィクションです。
「アルは完璧だったよね」
ぼくは、アルが敵国の暗号【謎】を鮮やかに解いたことを称賛した。しかし、アルは『機械にやってもらったのは人間にとってもっとも面倒に感じる手続きの部分だけだよ』と事もなげに言い放ち、さらに『主要なことは既にポーランドで解明済みだったし、もっとも重要だったことはクリブを見付けることだったしね』とまるで自分の仕事ではなかったかのような口ぶりだった。
「ゴーディにはやられたね」
ぼくがそれを言うと、アルはちょっと不機嫌になった。『ヤツの対角結線には恐れ入ったよ』と一瞬バツの悪い顔になったが、すぐに『そのおかげで回路的には楽になったのだけどね』と表情は明るくなった。そして『君のアドバイスもあったしね』とアルは付け加えた。
「ぼくはアドバイスなんてしていないよ?」
ぼくがとぼけると、アルはぼくを指差しながら『あの時に「いらないモノが多過ぎなのでは?」と言ったのは、確か君だったと思うのだけど?』とニヤリと笑った。
「確かに百五十の後にゼロが十八個ほども並ぶ巨大な数のなかから、たった一つの正解を見いだす訳だから捨てる方を考えるべきだと思っただけだよ。でも、アルはそのことからさらに自在に思考するようになった。多くのバリエーションがあっても、プロセスが非常に複雑でも、その実際は単純な理論なのだと。さらに進んで【形態形成】もその理論への思考実験であって、それを確かめるためにアルが考え出した【プリミティブな思考モデル】を適用したコンピューターを使った訳だよね」
ぼくは返答と同時に今更の事柄をアルにぶつけてみた。するとアルはハッとして、そしてドキッとして、さらにキッと厳しい表情でぼくを見返した。
「ふふん。適当に羅列してみたのだけれども、どうやら図星だったようだね」
ぼくが意地悪そうにアルを見つめた。アルはぼくの反応に頭をかいて『あはは……』と笑った。
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