機械の思考
【文芸バトルイベント「かきあげ!」第二回イベント参加作品・テーマ『謎』】
※これは某学者をモチーフにしたフィクションです。
「アルはホンモノの天才だよ」
ぼくは、テーブルの上で両手を組み、アルをジーッと見ながらつぶやいた。アルは、ぼくの言葉に恥ずかしがって視線を外した。それでもぼくはアルを見つめていた。
実際のところ、アルの思考はヒトとしては非常に卓越している。それはぼくら『高次知性体』が持っているセンスと同等かそれ以上で、特にアルのそれはラジカルでありながらファンダメンタルでプログレッシブなのだ。
「だから、ぼくはアルが大好きなのさ」
いつもなら自分本位な態度をとるアルなのに、ぼくの好意に珍しく謙遜をした。『君がいたからだよ』なんていうセリフがアルの口から出るなんてぼくは考えてなかった。
「牧草地で出会った時のことを覚えているかい?」
ぼくの質問に、アルは感慨深げに何度もうなずいた。ランニングの足を止めて小高い牧草地に腰を下ろしたアルは、そこから見える川面をジーッと見ていた。ぼくは川面を見ているアルを川辺から見つめていた。ぼくの視線にアルが気付いた時、アルはひどく取り乱したのだった。
「驚いていたね、ぼくが『クリス』にソックリだから」
ぼくの言葉にアルはうなずき、また赤くなって下を向いた。牧草の上に座るアルの横にぼくも腰を下ろして会話した。初めて出会ったというのに旧知の友達のように、それは驚くほどたくさんの話をした。
「とてもアブストラクトでメタフィジックスな話をしたよね。とてもうれしそうなアルが印象的だった。アルはぼくを完全にクリスだと思っていたみたいだしね」
ぼくのセリフにその都度、うんうんとうなずくアルは『その時にある疑問が湧いてきた。それが【人間が計算するということはどういうことなのだろうか?】という思考への本質的な発端になった。そして【プリミティブな思考モデル】へ展開したという訳さ』とぼくに語ってくれた。
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