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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

家守りのいる家

作者: 東雲しの
掲載日:2014/08/18

  田川圭吾が、都内の某大学から帰途についたのは、何変わりないいつもの時間だ。

  朝もいつもの通り、予定していた時間に起きられず、結局朝食を抜かし、テーブルの上に置かれていた菓子パンを、無造作にリュックに詰め込み、不機嫌に母親の顔も見ず、掛けてくれた言葉にも、答えもせずに玄関を飛び出して、駅に早足で向かった。


  最早到着していた電車に慌てて乗り込み。周りの人間に嫌な顔をされ、それを気まずいと、混み合う人を押しのけて、奥へと潜り混んで、人の波に揺れながら音楽が流れ込む両耳に集中する。気がつけば、人波が大きく動いて、幾つかあるうちの、乗り換え駅の一つに着いたのだとわかる。圭吾はいつものように辺りを見回し、そしていつものように目星をつけていた駅で、座席の空きを見つけて座った。

 

  大学の授業も変わりなく、友人達との会話も変わりなく、最寄りの駅へと数人の仲間と向かい、くだらない事で笑いながら別れた。


  帰りの電車は、始発から三つ目と言うこともあり、いつものように苦労せずに座り、聞き慣れたアナウンスをBGMに眠りについた。

 気がつけば、版を押したように見慣れた景色が目に入った。おもむろに立ち上がり、電車が止まるのを待って降りると、予定通りエスカレーターのある場所に停車した。

 駆け出す人波を物ともせず、圭吾は悠然とエスカレーターに上手に乗り、慌てて駆け上がる、右脇の人々の背をぼんやりと眺めやる。

  ー圭吾はちょっとのんびりやだー


  駅から徒歩10分。駅前の商店街を右手に抜けて5分余り、細い脇道を左に折れると、馴染み深い我が家のある通りに入る。

 車一台通れるくらいの幅で、路地というイメージよりは広いのか、この辺の住人は皆“通り”と呼んでいる。


  圭吾が生まれる以前から、何の変哲もないこの通りは、子ども達の遊ぶ声が、絶えない通りだ。夕方になると、友達を連れてきた子が遊び、その輪の中に近所の年下の子が入って遊ぶー。

 昔ながらの“通りで遊ぶ子ども達の光景”が、脈々と受け継がれている。そんな通りだ。


 

  ー ! ー

 

 圭吾は今日初めて「!」いつもと違う違和感に包まれた。

 ついこの間梅雨入り宣言が出されたと、テレビでやっていた。

 日が落ちるのは、かなり遅くなったとはいえ、午後の7時半ともなれば、とっぷり暮れている状態で無いにしろ、辺りは暗くなり、賑やかな子ども達の声も、姿も最早家の中にあり、網戸で開けられた、灯りの漏れる家々の中から、家族の穏やかな話声や、テレビの声が聞こえてくるー。

 そんな家々の様子を感じながら歩いて帰る。それがいつもの事だし、当たり前の事であったのにー。


 ーなのに、今日は違っていた。

  静かなはずの通りに、見慣れた住人達が出ていて、何か異様な雰囲気を醸し出していた。


「圭ちゃん今帰り?」

 幼馴染の友ちゃんのおばあちゃんが、よく花火をして遊んだ門の前まで出て来て言った。

「あっ、こんばんは」

 圭吾はお行儀良く頭を下げて言った。

「ーそこの、浜田さんの上の子がいなくなっちゃったんだって」

「えっっ?」

「5時のチャイムが鳴るまで、お隣の子達と遊んでてー。妹の自転車を、門の中に入れてたはずらしんだけど、妹が一旦家の中に入って様子を見に来たら、自転車だけ置いてあって、お姉ちゃんがいないってー」

 

 それから、母親が探し歩いたらしいが、何処にも見当たらず、不安になった母親が、一緒に遊んでいた子どもの所に聞きに行けば、そこの親も一緒に探すー。となれば、狭い町内の事だから、世話好きな近所の老人達も出て来て探すー。

 異様な雰囲気も醸すというものだ。


「最近はこの辺も変質者が出没してるからね。ほら、坂の途中の、あんたより、ちょっと下の子が学校の帰りに、浜田さんの脇の路地で、若い男に抱きつかれた事があったしー」

 ああ、二つ下の女子が悲鳴を上げたら、逃げて行ったとかいうー。確かあの時、此処の浜田さんとうちの母親が駆けつけたけど、もう姿が無かったとかー。

 うちの親が興奮して話していた事があったのを覚えている。

 だが、あれは2年も3年も前の事だったようなー。


「あれー?」

 圭吾はキョロキョロと辺りを見回した。

「うちの親は?」

「あんたのお母さん?見てないわよ」

 友ちゃんのおばあちゃんは、ちょっと見回して

「そういえば、こんな時に見かけないのは珍しいわね」

 友ちゃんのおばあちゃんは正直ー、というより、口が多いというか、おしゃべりだ。

 

  ー母親が、こんな時にいないのは変だと思った。

 救急車が止まれば、何はともあれ飛んで行く、子どもの声であれ、猫の鳴き声であれ,「!」と思えば飛び出すような、“サザエさん”的な人なのにー。

  圭吾は、友ちゃんのおばあちゃんに、軽く会釈して家に向かった。


  家に行く迄の間に浜田さんの家の前を通る。

 開け放たれた門の向こうに、やはり開け放たれたドアがあり、そのドアの奥に妹の方を抱いた浜田さんの顔がとても青白く、隣の川辺さんのおばさんと、神妙に話しをしている姿が、子どもとは全く関わりの無い圭吾にも痛々しく見えた。


 圭吾の家はその浜田さんの家の左向かいになる。

 その浜田さんの家の脇に、お隣の川辺さんの家と隔てる形で路地がある。その路地で坂の途中の家の女子が、変質者に抱きつかれた。

 その路地を左に覗き、そのまま逆へ顔を向けば、圭吾の家の台所の窓がある。


「あれー」

  思わず小さく声を発した。

 いつもなら付いているはずの電気が、消えているー。しかし、換気扇の 音は聞こえる。

 ー換気扇を消し忘れて出かけたのかー。あの人の事だから、夕飯の仕度も忘れて、いなくなった女の子を探しているのだろうかー。


「飯くらいちゃんと作れよ」

  圭吾は野次馬な母を腹立たしく思いながら、玄関のドアを開けた。

「ちっ、鍵も掛けてねえのかよ」

  舌打ちすると、一間程の玄関の電気を付け、荒々しく靴を脱ぎ捨てると、玄関の上がり框直ぐの、換気扇の音のする台所を覗き込んだ。


「!!」

  圭吾は、玄関の照明が薄暗く差し込む台所に、ぼんやり浮かび上がる、黒い塊りを凝視した。





  母親の初七日が過ぎたが、浜田さんの家の女児は見つかっていない。

  うちは母親を亡くした事で忙しく、浜田さんの家の事は、全くわからない。


  ピンポンーっとチャイムが鳴った。いま時の、カメラインターホンじゃ無いので、 インターホン越しに確認するより、出た方が早いから玄関を開ける。

  変な相手がいた所で、身長185cm。長年バスケで鍛えた体格の持ち主の圭吾に、昼間から危害を加えようとする者もいないと、たかをくくっている。

「あっ、圭ちゃん」

  友ちゃんのおばあちゃんが、神妙な面持ちで立っていた。

「.....どうも」

「天ぷら揚げたけど、一杯になっちゃったからー」

  友ちゃんのおばあちゃんは、大皿に乗った天ぷらを差し出した。

「ありがとうございます」

「それ、お宅のお皿に入れ替えて」

「あっ、はい」

  圭吾は慌てて台所へ行って皿を探した。

「何時もこの時間には帰ってるの?」

「いや、今日は出なくてもいい授業だったから」

「そうー。お母さん亡くなったばかりだもんね。お婆さんも、お母さんも亡くなって、いろいろ不便になっちゃったわね」

「ええーまあー」

 圭吾は天ぷらを入れ替えながら答えた。

「全く急だったものね。元気だったんでしょ?」

  友ちゃんのおばあちゃんは、上がり框へ腰を落として聞いた。

「まあー」

  圭吾は皿をおばあちゃんに返しながら答えた。

「まったくー、浜田さんちの子もまだ見つからないしー。此処からだと圭ちゃんのお母さんが、浜田さんちの子を連れ去った犯人を見てる可能性あるのにね」

「ああ。確かに窓開けてたら見えるけどー。心筋梗塞を起こすまで、夕飯の準備してたようだから、見てる暇無かったっしょ」

「だから、犯人を見て吃驚してー」

「ああー」

  圭吾は神妙な面持ちで言葉を詰まらせた。その表情に 友ちゃんのおばあちゃんは、何かを感じたのかそそくさと空き皿を持って出て行った。

 

 あの日、薄暗がりに浮かび上がった母親の死体を目前に、呆然とする圭吾のあと直ぐ帰宅した父親が、照明をつけて母親の死をはっきりと確認した。

 母親は食器棚を背に、尻もちをついて倒れ、右手に包丁を握り締め、両目をしっかりと見開いていた。

 まな板の上にはきゅうりが切りかけてあり。シンクには玉葱の薄切りがザルに入れて、ボールの水に浸けてあった。

 サラダを作ろうとしていた事が圭吾には察しがついた。

「あの倒れ方ならー」

 きゅうりを切っていた最中に、そのまま後ろに倒れたのかもしれない。

 真後ろへ立ったまま倒れ、食器棚にぶつかって尻をついたのか、妙に窮屈な格好だったが、見開いた両目は真っ直ぐ正面を見ていた。

「だが、窓は閉まっていたー。よなー??」

  圭吾は窓を見て考えた。


「若主さまー。若 ..... さま」

  圭吾は外から聞こえるような、小さな声を聞いて窓を見た。

「此処でございます。若主様」

  窓の外で誰かが誰かに言っていると思ったが、それにしても変な会話だ。

  窓の側に行って耳を近づけて、じっと静かに外へと意識を集中した。

「若 ..... 様、此処、此処でございます」

  圭吾は声のする方に目線を向けて

「!!!」

  一瞬目を疑ってフリーズした。

「ーあっ、いや、まさかー」

  圭吾の口元が緩んだ。

「若さま、開けてくださいませ」

「いやー。鬼ヤバいっしょ。幻聴か?」

  辺りを何度も見渡す。

「若さま、若さま。どうぞ此処を開けてくださいませ」

  圭吾は窓の向こうに張り付いている、ちょっと奇妙な、小さな生き物の白い腹と吸盤のついた不気味な手足を直視した。

「どうぞ窓をー」

「家守さまっすか?」

  微かに自虐的に口元が緩む。

  ーいやいや、ないないー

  あとで自笑する腹づもりで口にしたが、独り言で有り得ない事は知っているのだと、自分に言い聞かせる。

「流石、若さま。左様でございます。私めでございます。どうか、早く、早くお開けくださいませ」

  圭吾は恐る恐る窓を開けた。

  すると、何時も窓の外に居て、決して家の中に入って来た事の無い、我が家の家守様がスッと中に入って来た。

「マジ」

「はい、マジでございます。何時もお世話になっております」

「はいー?」

  圭吾は微動だにできずに言った。




「あのー、何時もの“いえもりさま”っすよね」

「はい。何時もお目もじいただいております、“いえもり”でございます」

  小さな体の“いえもり”さまは、三角形の潰れた顔を下げて会釈して言った。

「御先代さまは、私めを“いえもりさま”とお呼びくださり、お目をかけてくださりました」

  確かに、ばあちゃんは家守を“いえもり”さまと呼んで、家を守ってくれているのだと言って大事にしていた。

「窓の下に、凌霄花をお植えくださりまして、蟻や虫が私めをひもじくさせる事はござりませなんだ。それを受け継がれまして、主さまも若さまも、私めを見かけてはご挨拶くださり、やんちゃな此の家の猫共からお守りくだされました。ほんに、ありがたき次第でござります」

  ちょっとー。かなり不思議な日本語だが、まあ言いたい事は通じる。

「先々代さまは、生き物がお嫌いで、一度も出て参ったことはございません。なにせ、姿を見せようものなら駆除されてしまいますゆえ.....」

「いえもりさまは、“はちゅうるい”だよね?」

「ーああ、そのように呼ばれた時期もございましたが、今はそれとはちと違いますな」

  いえもりさまは、ぎょろりと辺りを見回すと、冷蔵庫と食器棚の隙間に素早く不気味な動作で動いて、瞬時にゴキブリを獲って食った。その仕草がかなり不気味だ。


  ーおえっ。いえもりさまグロ過ぎっしょ。


  圭吾は直視できずに横を向いて、こみ上げて来るものを我慢できずに悪心した。


「若さま。若さまのお嫌いなこやつ目を、退治仕りましてございます」

「はっーそれはどうも」

  いえもりさまが側に寄ったので、後退りする。

「失礼仕りました。以前より家内に参上仕りたく思っておりましたが、家主さまは、私めの容姿に馴染めぬご様子に、此処の猫共の悪さをご心配もくださりましたゆえ、入る事はご遠慮申しておりましたが、そのようなご遠慮さえいたさねば、鬼からお守りできたものをー」

  いえもりさまは口惜しげに言った。

「鬼ーすか?」

  圭吾は耳を疑って聞き直した。

「左様で。あの憎き鬼め。たとい、此の小さき我が身でも、家内にいたならば、お命だけでもお救いできたものをー」

  いえもりさまは、地団駄を踏むように言った。



  家守ー。

 爬虫網有隣目ヤモリ科ヤモリ属に分類されるトカゲの一種。

 


「うーん。いえもりさまは、ペットとしても飼われてんだ」

  圭吾はスマホで検索しながら言った。

「ーそれは、ちと私めとは違うものでございますが」

  慣れてみれば、なかなか愛嬌があって、可愛く見えてくる。

  ーそういえば、イモリを飼っている奴がいるー

  別に飼っている訳でもないのに

  ー家の外に家守がいるー

 と言うと、かなりのリアクションで羨ましがられた。

  あいつに“いえもりさま”を見せたら、なんと言うだろう。

「ー若さま」

  圭吾が爬虫類好きの友人の事を考えていると、いえもりさまが、妙に可愛い格好で立ち上がって名を読んでいた。

「ああ、何でしょ?」

  余りに器用に吸盤を使い、立っている姿が可愛くて写メを撮る。

「あちらに有ります、柱時計のネジを回してはいただけませんでしょうか?」

「ああ、あれ?」

  台所に続く隣の部屋の柱に掛けてある、旧式のネジ巻き時計を見て聞いた。

「はい。左様でございます。あの主さまと同い年の時計でございます」

「へえーいえもりさま、よく知ってるね」

  圭吾が長身を活かして、踏み台を使わずに時計のネジを回していると、いえもりさまは、ゴキブリの時と同様の素早さで、圭吾の肩まで登った。

「うわ!」

  可愛いと思うようになったとはいえ、やはりちょっと不気味な生き物だ。圭吾は思わず大声をあげた。

「ひえ若さま、いかがなされました?」

  いえもりさまもびっくり飛び上がった。

「いや、俺ってチキンだ」

「ち・き・んでございますかー?」

「弱虫って事かな?」

  ネジを巻き終えると。文字盤下の振り子を左右に動かす。

 カチ、コチ、カチ、コチ.....。振り子時計特有の音を立てて、時計が動き始めた。

「此の音が五月蝿くてさ」

  圭吾は母親が愛した、同い年の時計を見つめながら言った。

「此の音の何処が五月蝿いのだ」

「いやあ、此のコチコチがさー。それに、毎月ネジ巻くのも面倒だしー」

  言い終えて圭吾は、肩の上のいえもりさまが、言ったのでは無い事を察した。

「げ!」

  振り向いて圭吾は、宙に浮く薄ぼんやりとしか見えない、得体の知れない何かを見つめた。

「ほんにチキン者よ」

  得体の知れない何かは、豪快に笑って言った。

「これは金神様」

「こんじんさま.....?」

「ふむ.....、解らなければこれで調べよ....」

  金神様は右手を左右に動かす素振りをして見せた。

「ー??」

「ほれー、こうじゃ、こうー」

  金神様は左手に何かを持った格好をして、右手を動かして見せている。

「もしかして.....」

  圭吾はスマホを取り出して金神様に見せた。

「ほう、それよそれー」

  大喜びで右手を左右に動かす。

「ああ、なるほど」

  スマホで検索しろということだと合点して、圭吾は“こんじんさま”と入力して、検索した。

「出たか?」


  金神こんじんとは、方位神の1つ。


 金神の在する方位に対してはあらゆる事が凶とされる為、此の方位を犯すと家族7人が死ぬ事になり、家族が7人いない時は、隣の家の者まで殺されると恐れられている。


「7人祟るんすか?七殺ってすげえな.....、金神様って最強神」

「ふふん、まあな」

  金神様は踏ん反り返った。

「ああ、祟り神って..... 、 イノシシの」

「イノシシとはかぎらんわい」

「あ、ちょっと見たアニメに、祟り神になったのがイノシシだったんで、つい」

「おお、わしもそれは知っておる。実に心に染み入る映画であった」

「金神様はアニメをご存知なんすか?」

「知っておる。映画とやらも、テレビとやらも実に面白い。いたって気にいっておるーが、お主がそんな知識しか持ち合わせんとはー」

  金神様はがっかりしたようた言った。

「いやいや、知ってる人間がおかしいしょ」

「まあ、動物が酷く怨みを残して死ねば、祟り神になる事はあるーが」

「金神様って陰陽五行説からうまれた凶神なんだ」

「はん。勝手にそう言っているだけだ、わしは昔々からちゃんとおるわ」

  金神様は不機嫌になった。なんと解りやすい神様だろう。

「おっ、艮金神様っていう超最強金神様ってのがいる」

「なんとー?」

  金神様はスマホを覗き込んで憤った。

「なんとー。艮金神となー」

  金神様はまじまじとスマホを睨みつけているーように思える。

圭吾はちょっと可笑しくなって、何故だかいくら覗き込んでも、はっきりとしない金神様の顔を見た。


「金神様ー」

  いえもりさまは金神様の衣の裾を引いて言った。

すると金神様も、何か思い出したように圭吾に言った。

「そうであった。そこの小箱の中の物を取り出してみよ」

  金神様は仏壇の脇に置かれた小箱を指した。

  小箱の蓋を開けると、中に色褪せた、赤と青の菱形のお守りが入っていた。昔は光沢があったと想像させる錦糸の布に、金の糸で“金”と織り込まれている。

「お守り?」

「よお解ったの。さすがである」

「はあー」

「さて圭吾よ、お主の曽祖母が、大そう信仰深かったのを聞いておるか?」

「さあ?」

「ふむ、お主ならその程度の返答であろうよ。お主の曽祖母は、大そう信心深い信者であったがー」

  金神様は、余りよく見えない表情なのに、なんとなく憂いをおびているように、圭吾には思われた。

「お主の祖父はかなり悪うての、まあ早く言えば罰が当たって、子宝ができぬ定めであったが、信心深い曽祖母の願いをきいて、わしが授けたのがお主の母親じゃ」

「 ....... 」

「聞いておるのか?」

「いやー、そんな話し、ばあちゃんと二人していたようなー。じゃあ、ひいばあちゃんは、金神様を信仰してたってこと?」

「まったくお主は、ちと親の話しも聞いておくものよ」

「ういっす」

  圭吾は、肩を窄めて言った。

「ゆえにお主の母親は、勘の鋭い所があった為、鬼の邪気に当たって命を盗られてしもうたのよ」

「鬼の邪気っすか?」

「まったく気づかぬとは」

  金神様はがっくり首を落として言った。

「ほれ、彼処の家じゃー」

「浜田さんち?」

「浜田と申すのか?まだまだ此の辺も自然が有り、住みよかった頃の事じゃ。彼処の家の先の当主が、よせばよいものを、何を血迷ったのか鬼と契約をかわしおった」

「えー!鬼っすか?」

 

 余りにもこの世離れした今の現状に慣れたのか、もはやリアクションも小さくなってしまっている。

 一番MAX状態はいえもりさまの存在で、何故だか姿がぼやける金神様、そして鬼ーまで、流石に

 ーまたかー

  と、いう感じにもなるというものだ。


「そうじゃ、此の辺もまだまだ、お前の母親が子供の頃は鬼も魔物もおったのよ。勘の鋭いお前の母親は、いろいろな気配を感じとっていたが、そのもの達の気配はよいが、姿を見る事を仏に願い拒んだ為、見る事は無いが感じる事はできたのじゃ。ちなみにお主は母親より勘が鋭いのじゃが、幼い頃に全てを拒んだ為、その能力は隠されておる」

「げっ、俺本当は見えるんだ?ちっちゃい頃からチキってたんだな」

  もう、どうでもよくなってきて、金神様の言葉に耳をやる。

「いやいや、お主は幼い頃はしっかりしておった。此処の死んだ当主が現れると、帰るようにと諭しておったくらいだからの」

「いやあ、マジっすか?」

「残念な事に、此の辺の近代化は著しくての、あっ!という間に、鬼や魔物が出入りする入り口が閉ざされてしまった。その為、鬼との約束が果たされずに時が過ぎてしまったのじゃ」

「鬼との契約ってなんすか」

「そりゃ、富と財でございましょう」

  今迄黙っていたいえもりさまが口を挟んだ。

「金かー?」

  そういえば、浜田さんちは二世帯だが、かなり此の辺にしては大きな家だ。

「つまりでございますな、彼処の先代当主が、まだ此の辺りに出入りしておりました鬼と契約を結びまして、富と財を得ましてございます。我が先先代ご当主様が、此の家を建立の際には、彼処もまだまだ、住まいも小さく、我がいえの柱の太さを感心して、見にきておりました。ところが、十年程の間に土地を広げ、家をあのように大きくいたしたのでございます」

  いえもりさまは、そう言うと首を垂れた。

「鬼はどうして?」

「時が経つにつれ、この辺はみるみる変化を遂げまして。森や林、広く続いた野原も姿を消し、家やらビルとやらが立ちました。その時に、あちら側への入り口も閉ざされてしまったのでございましょう、もう何十年と、あちら側のもの達を見かける事もございませなんだ」

「じゃ、やっぱ鬼じゃないんじゃ....」

「いやいや若さま、あれは“ぜったい”鬼でございます」

「入り口が開いたのじゃ」

「はあ?どうやって?」

「先の震災でいろいろなものが歪み、入り口が開いたのであろう」

「入り口って何処だ?」

「左様ですなー。森や林.....おお、井戸や墓等にございましたな」

「井戸なら、あそこの友ちゃんちにあるみたいっすよ。震災の時に、水を分けてもらえるって母親が言ってました。ああ、あと二軒置いて隣の大和さん所ー」

「まあ、歪んだ隙間から再び出入りできるようになった鬼が、彼処の娘の邪気に惹かれて、出て参ったのであろうよ」

「娘の邪気ったって?」

「いやいや金神様、今や娘ではございませぬ。彼処の当主で孫がおります」

「ほうー。あの娘は鬼が好む邪気を隠し持っておるからの。弱き生き物を痛めつけて喜んでおる」

「そんな風には見えないけど」

  浜田さんのお婆さんーといってもまだまだ若いお婆さんだ。母親が挨拶していたので顔を会わせれば、挨拶はしていたが、いつもニコニコしていて、感じのいい人だ。

「人は見かけによらぬと言うだろう」

  金神様が言った。

「もともと彼処の家系は残忍な所がある。ゆえに、鬼と契約を結ぶなどとしおるのじゃ」

「ーその契約って」

「つまりでございます。富と財を得る代わりに、娘を嫁にやるという約束事でございます」

「嫁?鬼と?できんのかな?漫画で人間と妖怪の半妖ってのがあるけどー?」

「ちと、違うの」

「知ってんだ?」

  金神様はかなりオタク系だ。

「昔はよくあった事でございます」

「へえー」

 

昔ーの時代感覚が測れない、けど、決して近代史の時代では無い気がする。


「つまり、浜田さんの先代の娘って、あのお婆さんが鬼の嫁になるはずだったのに、鬼が来れなくなったので、約束は反故になっちゃったのに、何故お婆さんの孫が嫁になるんすか?」

「お主達の50,60年など鬼にとっては一瞬にすぎん。もはやひ孫の時代になってしまっても、鬼にとっては約束の娘の年頃ならば、約束の娘と思っておる」

「あのお婆さんとひ孫を間違って連れてちゃったんだ?」

  圭吾が頓狂な声を出す。

「えー、鬼って間抜けだ」

「お主達とわしらの時の流れが違うのじゃ」

「そこで若さま。その鬼の契約書がこの家にあるのではー?と、金神様が申され、こうして参上仕りましてございます」

「なんでうちに?契約したのは浜田さんでしょ?」

「そうだが、お主の母親が巻き込まれたという事は、何か理由があるはずなのじゃ。いくら鬼の邪気にやられたといえど、鬼がこの家に気を向けておらぬと、死に至までの邪気を受けるはずがない。まして、わしの授けたものを追いやれるはずがないのじゃ」

「はあ?で、もしその契約書があったらどうなるんすか?」

「当然のこと、文句を言うてやるわ」

「は?」

「わしの授けたものを、寿命を残して死に追いやるとは、言語道断!鬼の頭に一喝喰らわしてくれるわ。まったく、間違えただけでも妖魔の面汚しなのに、わしの授けたものをー。許せん!」

  金神様が激怒すると、家の中がミシミシと音を立てた。

  やはり金神様はただ者で無いことが伺えた。

「マジすげえ」

「当たり前じゃ。わしの力を使えば、チョチョイと生き返らせる事とて朝飯前じゃ」

「えっ?今なんて言いました?」

「ーだから朝飯前なのじゃ」

「なにが?」

  圭吾は空かさず金神様に詰め寄った。

「死んだ母親を生き返らせる事など、朝飯前なのじゃ」

「ーじゃあ、よろー」

  圭吾が言うと金神様は動きを止めて聞いた。

「なんと申した?」

「よろー」

「 ..... 」

「金神様、たぶん“よろしく”という意味ではないかとー」

  いえもりさまが言うと、金神様は暫く考える仕草を作って合点したようだった。

「なるほどー。だがしかし、彼処の子どもは戻って参らぬぞ」

「いやー、別に」

「べ、別にとな?」

「だって、ことの始まりは彼処の曾祖父さんが鬼と契約したのがいけないっしょ?娘のばあさんーややこしいけど、が、嫁に行かなくてひ孫が嫁に行ったのは約束だから仕方ないっしょ?確かにうちより金持ちだし。それに、ばあさんが弱いものいじめのゲス野郎だったら、尚更の事うちが有るか無いか解んない契約書を探すのなんて、無駄だしめんどくさいし」

「彼処の子どもは二度と戻って来られぬのだぞ?」

「関係無いつうかー、巻き込まれて、オカンが死んだつうのがムカつくし。彼処のうちの事は彼処のうちでなんとかするっしょ」

「ふむーなるほど」

「若さまー」

  いえもりさまは何故か大きな瞳をウルウルさせた。

 

ーあれ?こいつらって、目を潤ませられないんじゃ?流石“もののけ”ー

  変な事に感心などしてみる。


「確かに道理。鬼への怒りで、つい彼処の子どもも鬼から奪ってやろうかと思ったが、わしにも関係の無い事であった。では、屍を此処へー」

「は?」

「は?では無い屍じゃ」

「若さま、母君さまのご遺体の事でございます」

「いやいや、有るわけないっしょ」

「ああ、もはや埋葬なされましたか?これは金神様、申し訳ございませぬ。墓場まで参らねばならぬようでー。私めのご報告が遅れたばかりにー。そのように時が過ぎておりますとはー」

  いえもりさまは恐縮して、首を垂れてひれ伏した。

「まあ、致し方あるまいて、そなたはかなり小さきものゆえ」

「では若さま、いざ墓場までの案内願いまする」

「いや、墓にも遺体なんてねえし」

「は?」

「は?じゃねえし、もうとっくに火葬しちゃってるし」

「か、火葬でございまするか?」

「なんじゃ?」

「葬式のあと火葬場で焼いて、骨を骨壷に入れて納めるんすよ」

「なんと骨とな?骨にしてしもうのか?」

「してし・も・うたのです」

「な.....、なんと?」

  金神様といえもりさまは、それは仰天して同時に言った。

「それは困りましたぞ.....」

「実に困ったぞ.....」

  二人は小声で囁いているが、圭吾は耳がいい。

「何困ってんす?」

「おお、いや」

  金神様は聞こえないとふんでいたのか、吃驚して圭吾を見た。と、思うのだが、何故か金神様の顔は判然しない。

「屍がのうては生き返らせる事はできぬのじゃ」

「えっ?」

「いくらわしとて、骨になったものに魂を入れる事はかなわんし、たとい入れたとしても生き返らんだろうー。まったく許せん余計な事をしたものよ」

「いやいや、今はこれが常識だし。第一こういう事なら葬儀の前にくりゃいいものを」

「若、申し訳ございませぬ。私めが遅いばかりにー」

「怒るでない。この小さき身体でわしの処まで飛んで参ったのだ」

「金神様の処まで飛んだんすか?」

「まあなー。わしは方位神だからの。遊行しておるから、其処へ此奴が飛んでくるだけでも、相当の力を要するのじゃ。許せよ圭吾」

「はあー、じゃあ、おかんは生き返らないんだ」

  圭吾は大きな瞳に薄っすら涙を溜めて肩を落とした。

「本当に、本当に申し訳ございませぬ」

  いえもりさまが、平たい身体を一層平たくしてひれ伏した。

「家守よそう平たくなるな。今は生き返らせる事はできぬが、前に申した通り、契約書を探し出せれば、わしが鬼に申し聞かせて、この始末はつけさせよう」

「契約書っすか?浜田さんちに有るんだろ?なんて言って探してもらえと?金神様が死んだおかんを生き返らせてくれるって言ってるから、鬼との契約書探してくださいー?有り得ねえし」

「なにをごちゃごちゃ言っておる。契約書は此の家に有ると言うておるだろう?」

「いやー、有りませんって」

「お主は何故そうも決めつけおるのじゃ。探してみなくては解るまい?」

「有り得ない事は有り得ねえし」

「つべこべと言わず、母親を生き返らせたくば、此の家の中を探すのじゃ。そんなに大きくもない家じゃ」

「金神様ー」

  いえもりさまは、金神様をなだめるように拝み見た。



  金神様から、鬼の契約書を探せと言われてから、数日経ったが契約書は見つからない。

  圭吾の性格か、無いものを探すのを面倒臭がって、なかなか作業ははかどらないし、一生懸命探す事をしない。

「若、此処の奥も探されては如何でございまするか?」

  いえもりさまは、かなり責任を感じて、圭吾が上部しか探さないので、一人いや一匹?で押し入れの中を這いずり回って探している。しかし、思うように重ねられた物が動かせずに、結局の所収穫など無いのだ。

「いえもりさま」

「何用でござりましょう?」

  いえもりさまは埃だらけになって言った。

「あんまり気にしなくていいんだよ」

「は?」

「そりゃ、とっとといえもりさまが金神様の所に行ってくれさえしたらーなんて思いはしたけど、考えてみたら、世の中に急死する人一杯いて、その中には今回みたいに、人間には理解できない何かに巻き込まれて死んじゃうのって、あると思うんだよね。それでも、死んじゃったらもう戻って来れないから、どうしようもなくて受け入れるしかない訳でー。だけどおかんは、いえもりさまが金神様を呼んでくれたから、生き返る事ができるかもしれないー。死んだ者が生き返るなんて、アニメかゲームの世界しか無い事で、現実じゃ有り得ない事ぐらい解ってる」

  圭吾は珍しく神妙に言う。

  いえもりさまは可愛らしく立ち上がって神妙に聞いている。

「此れでも浜田さんに、どうにかして探してもらおうと思ってんだ。時間はかかるだろうけど、どうにか探してもらう。それに金神様は見つかるまでいてくれそうだし」

  圭吾が見る方に、いえもりさまも顔を動かした。すると金神様は、ご満悦な様子で、今は使っていない神棚の上からテレビを見ている。

「パソコンも、スマホも好きだかんね。おかんのタブレット神棚に供えたら、かなり気に入ってくれてる」

「金神様ー」

  いえもりさまは大きな瞳から大きな涙を溢して、掠れるような声で言った。

「いえもりさまは、本当にばあちゃんの言ってた通り、家の守り神様だ」

「わかー」

  いえもりさまは、オイオイと泣いて煤けた姿を余計に汚した。何故だか、圭吾には不気味な姿が可愛らしく見えてきていた。


 

 それから暫くしたある日曜日、圭吾がバイトから帰って来ると、父親が押し入れの中を片付けていた。

  そろそろ母親の四十九日を迎えようとしていた。

「なに?」

「ああお帰りー。そろそろ、いろんな手続きしなくちゃダメだろ?だけど、何処になにが有るんだかさっぱりだ。通帳はどうにかこうにか見つかったからよかったけどー」

「大事な物は仏壇だろ?」

「ああーでも無いんだ」

  父親は思い立ったように手を止め、仏壇の上部をグッと押すと、仏壇の下部が少しだけ浮いて、茶封筒の頭が見えた。

「おっ、あった」

  父親は封筒の中を確認すると、この人の性格で、押し入れの片付けをそのままに、茶の間へ行ってしまった。

「まったくー。自分がやったものくらい片付けろよな!」

  母親がいつも怒っていた理由が、二人だけの生活になって解るような気がする。

  圭吾もだらしない方だが、父親は輪を何重もかけてだらしない。

「ん?」

  渋々圭吾が片付けると、かなり奥の方まで引き出したようで、今迄見た事も無い古くなった缶から、色褪せたノートやら封筒、書類が出しっ放しになっていた。

「わかー」

「???なになに?」

  急にいえもりさまが大声を出したものだから、圭吾は吃驚していえもりさまを見つめた。

「有りました。有りましてございます金神様」

「えっえっ?」

「ほれー此れ、此れでございます」

  しかし、目を皿のようにして見ても、なにも書かれていない白紙の色褪せた紙が一枚、ノートからはみ出しているだけだ。

「ほれ、わしの言う通りであったろう?」

  ノートには出納帳と記されており。その下には○○町会と書かれてあった。

 開いて中を見れば、町内会の帳簿で、会計報告のプリントに会計係として浜田さんの名が書かれ、会長として聞いたことの有る曾祖父さんの名が書かれてあった。

 ーそういえば、曾祖父さんが何年も町内会の会長をやっていたと聞いたことがあるようなー

  帳簿や書類と一緒に、間違って曾祖父さんの所に預けたのか、又はわざと預けたのか、とにかく鬼との大事な筈の契約書は、金神様の言う通りうちにあって、その為に母親は巻き込まれ、鬼の邪気で死んでしまった。

  母親の小言が絶えぬ、だらしない父親の性分のお蔭で“鬼の契約書”が見つかった訳だから、何が何処で役に立つのか解らないものだ。

  圭吾はぼんやりそう思いながら、片づけとは名ばかりの、散らかり放題の押入れと、その周りを見つめた。

「金神様、どうぞよろしくお願い申し上げまする」

  いえもりさまは両手で契約書を押しいただくと、深々く頭を下げて金神様に差し出した。

「ふむー任せておけ。圭吾よこれからは、もちっと親の話は聞いておくものぞ。今はくだらぬと思うても、大事な事となる事もあるし、やっても無駄と決めつけずに、言われた事はやってみよ。無駄ではない事もあるー」

「はい」

「ほう?ちゃんと返事もできるのだな?」

「金神様も神様のようなお言葉が言えるんすね」

「阿呆!わしはマジ本物の神なんじゃ」

  金神様は相変わらずぼやけた姿で、それでも“ドヤ顔”だと想像させて言った。




「金神様、おかんが生き返るって、どうやってー?まさか、ゾンビじゃないよね ?」

「阿呆ものめ。全然違うわ」

「げっ、ゾンビ知ってんだー。じゃあ、どうやってー。ねえ金神様ー」




  はっと目が覚めたのは電車の中ー。

  圭吾はキョロキョロと辺りを見回して、夢だったのかな?って思う。窓の外は赤々と夕焼けが綺麗だ。

  暫くぼんやりと眺めていると、見慣れた景色が広がって来た。

  いつもの癖で、ちょっと早めに立ち上がり、手摺りに掴まってふらふらドアの前へ立ち、ドアの上に貼られた広告を見る。

  電車がいつものように所定の位置に止まると、圭吾は慌ただしく駆け出して、エスカレーターを駆け上がった。そして、長年バスケで培ったすばやさで改札口を抜け、商店街を走り、体力の続く限り走り続けて、家の前の通りにたどり着いた。

  肩で大きく息をしながら、誰もいない通りを歩く。

  何処からか網戸越しの家の中から、テレビの音が聞こえた。

  浜田さんの子ども達が、姉妹で家の中に入っていく姿を見つけた。玄関の中で、浜田さんと話をする声が聞こえて来た。

  家の台所の前を通ると換気扇が回る音がして、包丁で何かを切るリズミカルな音が、時たまずれるように聞こえた。

「ただいま」

「お帰り。早かったね 」

「いつもと同じだよ」

「んー。ちょっと早いよ。お肉焼くのに時間かかるよ」

「ああ、全然いいよ」

「なんか食べて来た?」

「いや、なんで」

「いや、待てるって言うからさ」

「待つぐらいできるさ」

「えーそうだっけ?」

  母親が軽快に言った。


「ほら、ゾンビではなかろう?」

「げっ、金神様ー。やっぱ、夢じゃなかったんだ」

「ざんねんだがのぉ」

「金神様が、それはお見事に鬼に話をつけてくださりました」

「いえもりさままでいたかー」

「わか、それは酷うございます」

「.....どういう風に話つけたんす?」

「どういう風 ..... とは?」

「ほら、女子も帰って来てるみたいだしー。本当なら婆さんが嫁入りするはすだった訳だから、婆さんが連れて行かれるとか?」

「ああ、あれは別件があってのー」

「その件に関しても、お見事でござりました」

「当たりまえじゃ。わしが授けてやった子を、どうにかするなど、もってのほかじゃ」

「さようで、さしもの鬼頭殿も、なにも言い返しはできませなんだ。ほんによかった、よかった」

  いえもりさまはカラカラと喜んでいるが、圭吾には不安が残る。

  いったい、この人達ーいやいや、このもの達は、これからどうするつもりなんだろうかー?

  怖いから、考えない事にしておこう。


  とにかく、金神様と、いえもりさまのおかげで、いつもの毎日が戻って来たー。

始めての投稿です。

読みにくかったと思いますが、お許しください。

ありがとうございました。

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