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子供の作り方とは

七章開始です!

 さて、グランディール王国の領域から完全に出た僕達は、ヒグルドさんを御者に次の街へと進んでいた。

 次の街はルークスハイド王国の庇護下の街だ。といっても、ルークスハイド王国が近いというわけではなく、それだけルークスハイド王国の領土が広いということだ。


 ヒグルドさんに聞くところによると、ルークスハイド王国は各街にもちゃんとしたギルドを設置しているらしい。本国と変わらぬ設備と冒険者の質が、領土全域に散りばめられている故に、何処の街も本国と変わらぬ戦力を誇っているとのことだ。

 冒険者の平均ランクは、EからD。Fランク冒険者は殆ど存在せず、その上Cランクの冒険者やそれ以上の冒険者も数えるほどだが存在しているらしい。なんだかHランクの冒険者の僕がいるのって気が引けない? 僕にルークスハイド王国勧めたの誰だよ……ああ、グランディールギルドの冒険者だっけ。


 とはいえ、僕の耐性値はAランクの下位くらいはあるんだし、大丈夫かな。レイラちゃんもいるし、グランディール王国よりかはマシだろう。


「ねぇねぇきつね君」


 そんなことを考えていると、レイラちゃんが不意に話し掛けてきた。ずっとぴったりくっついているからちょっと暑くなってきた。視線を向ければ、レイラちゃんにひっついていたニコちゃんは、レイラちゃんの膝枕でお昼寝中だった。世界広しと言えど、世界崩壊級(Sランク)魔族の膝枕で寝れるのはニコちゃんだけだと思う。懐き過ぎだろ、何があったんだよ。


 僕には全く懐かないのに、子供に好かれるレイラちゃんには、ちょっと羨ましいなぁと思ってしまう。僕は元の世界でも子供に好かれなかったから、少しくらいは子供に好かれてみたい。


「何? おしっこでも漏れそうなの?」

「ううん、そうじゃなくて、暇なの♪ 何か話してようよー♪」

「話すって何をだよ……レイラちゃんが食べて来た人の話?」

「んー……それでも良いけど……きつね君の話♡」


 僕の話? はは、僕の話なんてつまらないことこの上ないじゃないか。しかもレイラちゃんに遭ったのはこの世界にきて間もない頃だったし、それ以前の話となると、大狼に肩を叩かれた事くらいしかないよ?


「何が聞きたいの?」

「きつね君のちっちゃい頃の話、とか?」

「ちっちゃい頃の話、ねぇ……ちっちゃい頃はそうだなぁ……」


 うーん、思い出してみると碌な事が無いなぁ。幼児虐待に校内虐め、その上同級生による集団リンチで死亡、話す内容が全くない。薄っぺらい思い出ばっかりだなぁ。


「特にこれといった思い出は無いね」

「えー、つまんないの」


 ぶー、と頬を膨らませて不満顔のレイラちゃん。そう言われても僕は、何か話す様な思い出は無いんだよね。それに、レイラちゃんを楽しませる様な話が出来るわけでもない。僕は物書きじゃないからね。


 ガタガタと馬車が揺れる音が響く中、僕はレイラちゃんに対して薄ら笑いを向けた。そこで一旦会話が途切れ、荷馬車の中に沈黙が訪れる。気まずいという訳ではないけれど、なんだか微妙な空気が流れていた。

 僕は瘴気のお手玉をやってるから暇ではないけれど、リーシェちゃんは剣の手入れを終えて、さっきからイメージトレーニングをやってるみたいだし、レイラちゃんは暇なのか自分の膝を枕に寝ているニコちゃんのほっぺたを突いていた。ぷにぷにと彼女の指が、ニコちゃんの頬を弄り、その度にニコちゃんが唸っている。


 そこで、ニコちゃんを見て笑っていたレイラちゃんが、ふと思い出した様に顔を上げた。


「ねぇきつね君♪」

「何?」

「この前ニコと話してて聞かれたことがあるの! でも私は分からなかったから、今度きつね君に聞こうと思ってたんだけど……聞いても良い?」


 レイラちゃんが分からなかったこと? そんなの僕に分かるのかな? 子供の質問って結構エグイ所攻めてくるから怖いよねぇ……でもまぁ、聞くだけなら聞いてあげよう。僕はレイラちゃんの視線に、僕の視線を合わせて聞く姿勢を取る。

 すると、レイラちゃんはとんでもない質問をぶち込んできた。



「―――赤ちゃんってどうやって作るの?」

「ぶふっ!?」



 集中していたリーシェちゃんが噴き出す程だった。

 リーシェちゃんに目を向けると、恥ずかしかったのか顔を赤くして咳払いをし始める。まぁ確かに平凡な家庭の子供の質問なら、答えにくい質問ナンバーワンに輝く質問だよね。ちなみに、母親か父親が離婚もしくは死去している家庭なら『僕のお母さん(お父さん)は何処に居るの?』とか、その辺が答え辛いと思う。


 僕はレイラちゃんの顔を見る。すると、リーシェちゃんが噴き出したのが不思議だったのか、きょとんとした表情で首を傾げていた。

 これは多分、マジで分からないんだろうなぁ……子供の作り方。まぁ僕もレイラちゃんの過去というか、素性を知っている訳じゃないから何とも言えないけど、瘴気(ウイルス)の魔族っていう位だから、多分元は人間だったんだと思う。『赤い夜』に感染して、魔族になったんだろう。確証は無いけど。


 うんと幼い頃に感染して、その後僕に会うまで暴走状態でいたっていうんなら、最低限の性教育を受けてなくても辻褄が合うし、知らなくても不思議じゃないよね。


「ねぇねぇ、きつね君? 知ってるの? 教えてよー」


 僕の服を掴んで揺すって来るレイラちゃん。その瞳は、血の様に赤い色をしている癖に、子供の様に純粋に輝いていた。可愛い。


「子供の作り方かぁ……そうだね、ぶっちゃけ性行為をしたら出来るよ」

「きつねぇ! お前ちょっとぶっちぇけすぎだりょ!!」

「噛んでる、噛んでるよリーシェちゃん。慌て過ぎだ、なんだよ『ぶっちぇけ』って」


 ラッパーかお前は。そう突っ込みたくなる様な噛み方で、僕達の会話に介入してくるリーシェちゃん。さてはお前、処女だな? ぶっチェケラ! YO! なんちゃって。


 それはさておき、レイラちゃんはまた怪訝な表情を浮かべている。性行為が分かってない様子だ。こういう時、続けて『性行為って何?』という質問が出る。答え辛い質問に勇気を振り絞って答えたら、自分の首を絞めていたっていう典型パターンだ。


「性行為ってなぁに?」

「ハイ来ましたー」


 予想通りだった。というかレイラちゃん、君あれだけ僕に対して発情しといて内面そんなピュアなの? その純粋な視線を送るの止めてくれないかな、なんだか居た堪れなくなるだろ。


 それはリーシェちゃんも一緒なのか、レイラの視線に対して目を逸らして若干頬を紅潮させている。まぁ説明するのは難しいよね。でも、リーシェちゃん。ここで質問の返答を焦らすと子供は凄いこと言いだすんだよ? 例えば―――


「あ! じゃあきつね君やってみせて♪ その性行為って奴!」


 ―――こんなこと。

 

 純粋天然培養の肉食系ヤンデレ魔族がなにか言いだしたと思えば何だこの状況。僕は奥手で真面目なチェリーボーイなんだぞ、大事に護ってきた童貞を此処で捨てるなんて勿体ないだろう。一回捨てたら二度と手に入らないんだぞ! その辺分かってるのか! それに、相手がいないだろ相手が。


「レイラちゃん、性行為は男女の二人組でやることだから、僕一人じゃ出来ないよ」

「私がいるよ? あとリーシェも♪」

「アホかお前」

「ぁいたっ!?」


 無自覚で変なことばかり言うレイラちゃんの頭を一発引っ叩いておいた。レイラちゃんが叩かれた拍子に痛いと言ったが、実際はそうでもないだろう。だって僕の筋力値じゃレイラちゃんの耐性値越えられないし。寧ろ僕の叩いた手の方が痛い。まぁ僕の耐性値は高いから直ぐに治るけど。


「あのね、レイラちゃん。仕方ないから一から順を追って説明してあげるよ」

「え? うん♪ 教えて教えて♪」

「きつね、その……良いのか教えても?」

「だったらどう誤魔化せばいいの?」

「……地面から生えてくるとか……」

「馬鹿かお前」

「ぁいたっ!?」


 この世界の人間は皆馬鹿なの? 僕の世界じゃコウノトリが運んでくるとか、そんな感じの誤魔化し方があったけど、地面から生えてくる? 怖いよ、この世界の赤ちゃんは地面から自分で這い出てくるの? 出生時から逞しすぎだろ。泥だらけで生まれてくるとか何処の青春漫画だ。しかもそれを自分の子供にしちゃうんだ? 子も逞しければ親も親で厚かましいな。


 リーシェちゃんの頭も一回引っ叩いておいた。今度は耐性値超えたからそれなりに痛い筈だ。とりあえず、リーシェちゃんは無視してレイラちゃんに子供の作り方を順を追って説明しよう。


「レイラちゃん、まずは男の子と女の子の違いは分かる?」

「んー、男の子はちょっとお肉が固いかも……女の子は柔らかいから食べやすくて良いよね♪ 味はどっちも同じくらいだけど♡」

「肉の話はしてねぇよ」


 男女の違いの説明でまさかの肉の話に移動するとは思わなかったよ。


「えーと、まず男女では身体の構造に違いがあるんだよ」

「男の人はおっぱいないもんね♪」

「そうそう、まず女性にはおっぱいがあって、男性にはないんだよ。それと、もう一つ違いがあるんだ」

「えー……髪の長さとか?」

「いや違う。生殖器が違うんだよ」


 この辺説明するの面倒だなぁ、レイラちゃんなら説明途中で『分かんないから見せて』とか言ってきそう。好奇心の塊だからなぁ、こういう時の子供は。慎重に行かないと。


「生殖器?」

「生殖器っていうのは、赤ちゃんを作る為の器官だよ。男女共に股間に付いてるんだ。男性のは陰茎、女性のは膣っていうんだ」

「私やきつね君にも付いてるの?」

「付いてるよ。で、男性の陰茎を、女性の膣にぶち込めば子供が出来るんだ。終わり」

「大分端折ったな!?」


 説明が面倒だから簡潔に説明した。というか、何故僕が子供の作り方を丁寧に教えないといけないんだ。リーシェちゃんだって恥ずかしがってるくせに興味津々だったし、子供の作り方なんて結局はそういうことじゃないか。

 まぁ経験ないけどね、そんな相手いなかったけどね。悲しくなんて無いよ、だって僕はそんなの興味ないし。真面目だから、健全な青少年だから。


「ねぇきつね君♡」

「何? レイラちゃん」

「きつね君のいんけい? 見せて♪」


 案の定そう言ってきたレイラちゃんの頭を、もう一回引っ叩いておいた。リーシェちゃんにも同様のお願いをしていたけれど、結局見せてはくれなかったようだ。極めつけに、ニコちゃんの服を脱がそうとした時には、僕とリーシェちゃんが全力で止めた。


 結局、この後もう少しだけ恥じらいとマナーとモラルについて、教育する破目になった。



 ◇ ◇ ◇



 それからしばらく走り続け、お昼頃になった時、馬の休憩を踏まえてお昼ご飯を取ることにした。幸いなことにリーシェちゃんは料理が得意と知っていたので、買っておいた食料と、簡易料理セットで何か簡単に作ってもらう。その間、僕達は周囲の警戒だ。魔獣とかが出て来てもおかしくないからね。


 ちなみに、今いるのはちょっとした林の中だ。ミニエラの近くにあった森ほど、木々は多くないし、陽の光を塞ぐほどの木もない。馬車が通れるように道が出来ているし、昼間だからかそんなに危険を感じる事もない。

 あと、ヒグルドさんにも『いんけい見せて♪』と言い寄っていたレイラちゃんには、一応それなりに詳細を叩き込んだ。そういうことを聞いたらいけないってことと、本当に好きな人以外には見せたりしてはいけないってことは、ちゃんと理解して貰えたようだ。

 まぁその直後に『じゃあ私ときつね君は見せあっても平気だよね♪ だって私はきつね君が大好きだもん♡』と言われた時には、もう溜め息しか出なかった。とりあえず好きな相手でもほいほい見せてはいけないと教えた。でかい子供を持った気分だった。


「ん?」


 そんなことを考えていると、僕を中心に半径200m位で展開していた瘴気の索敵範囲の中、人の気配があることに気が付いた。動きが無い所を見ると、どうも怪しい。こちらに気が付いている風でもないし、一体どういうことだろう?


 そう思って、ヒグルドさんに少し離れることを言ってから、その気配に近づいてみることにした。

 木々の間を通り抜けて、その気配に近づいていく。人数は一人、立っているというよりは地面に寝転んでいるようだ。もしかして倒れてる?


 そして、その気配が肉眼で確認出来る所までやって来ると、そこには白髪の少女がいた。というか、木に凭れる体勢で倒れていた。白髪だからか使徒ちゃんかと警戒したけど、どうやら違うみたいだ。

 近づいてみると、年齢は僕と同年代か、一個上位に見える。背は僕より高いみたいだけど、長い白髪の所為か若干大人びて見えた。


「ん? これはこの人の荷物かな?」


 すると、そのすぐ傍に大きな荷物袋が置いてあった。多分、この人の荷物だろう。

 それにしても、なんでこんなところに倒れているんだろう?


「……とりあえず連れていこうかな」


 ただ、このまま放置するのはちょっと気が引けたから、瘴気でその人と大きな荷物を持って、皆の所に戻ることにした。


早速新キャラが登場。レイラは子供の作り方を微妙に知った!

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