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第1王女

日は跨ぎましたが、連投4つ目ですね♪ 文字数にして約2万文字!

おかげ様で今日だけで約13万アクセス頂きました!ありがとうございます!

 翌日、僕達はルークスハイド王国へと辿り着いた。

 レイラちゃんの『瘴気の弾丸(ゲノムバレット)』で周囲に寄って来た魔獣達は全部掃討しながらやって来たから、アリシアちゃんには魔獣に関して一切気付かれていない筈だ。一応は7歳の女の子だしね、僕もその辺は気を遣うよ。まぁアリシアちゃんは盗賊の死体を見ても冷静だったから、あまり意味ないかもしれないけどね。

 しかし、それにしたってこの国は大きいな。国の入り口には大きな門が聳え立ち、国の大きさもぱっとみグランディール王国の2倍は軽く超えていそうだ。


 でも、この事態は中々予想してなかったよ。


「貴様! 王女様を開放しろ!」

「うるさいなぁ……アリシアちゃん、この国っていつもこんな感じなの?」

「すまない、仮にも私は王女だからな……きつねを人攫いと警戒するのは仕方のないことなのだ。許してくれ」


 国の外門を通ろうとした時、アリシアちゃんの姿を見た門兵が僕達を取り囲んできた。

 どうやら僕達をアリシアちゃんを攫った犯人だと勘違いしたらしい。仕方ないといえば仕方ないのかな、王女を攫われた翌日に正体不明の何者かが連れ帰ってきたら、そりゃ警戒するか。

 取り敢えずこの勘違いをどうにかしないと……さてどうしたものかな。


 ドランさんは……駄目だ、両手を上げて成り行きを見守るスタンスに入ってる。


 リーシェちゃんは……荷馬車で寝てんじゃねぇよ!


 レイラちゃん、は駄目だ。交渉事に使うには頭が足りない。戦力外だね。

 

 碌なのが居ないな僕のパーティ。1番良いのはアリシアちゃんがこの兵士達を説得してくれることだけど、そうしたら流れで僕達この国から追い出されそうだなぁ……勢いって面倒臭い。

 とりあえず、交渉に入ろう。


「あの、僕達王女様を人攫いから救ってここまで送り届けて来たんですけど」

「何? 本当か?」

「本当本当、超本当、僕嘘吐かない」

「……ならば、王女様を此方へ引き渡せ。そうすれば貴様の言葉を信じ、謝罪しよう」


 あ、意外と聞き分け良い。グランディール王国の騎士達とは違うね、グランディール王国の騎士達は自分の出世の為にオルバ公爵の悪事を黙認してたしね。

 流石は天才アリシアちゃんの国だ。この辺もちゃんと訓練されてるんだなぁ。という訳で、アリシアちゃんの背中を押して、騎士達に引き渡す。


 アリシアちゃんはちょっと強く押しちゃった所為か、少し不満気にジト眼で見て来たけど、直ぐに騎士達の方へと歩いて行き、無事に身柄の引き渡しが済んだ。

 すると、騎士達は安堵した様子で剣を収め、僕に対して頭を下げた。


「すまなかった、本当に王女様を助けて下さった方達だったのだな。無礼を詫び、謝罪する」

「ああうん良いよ良いよ、アリシアちゃんの方からちゃんと報酬をくれるらしいから」

「む……すまない、王女様に対してその様な呼び方は不敬に値する。送迎に感謝して聞かなかったことにするが……気を付けた方が良い」

「ふーん、分かったよ。気を付ける、ご忠告どうも」


 すると、騎士達はまた1つ頭を下げてから、アリシアちゃんを連れて此処からも見える一際大きな城へと去って行った。本当に頭の固い人達だったな、これはアリシアちゃんの息が詰まるっていう言葉もまんざら嘘でもないみたいだね。

 とりあえず大きく息を吐いて脱力しているドランさんと、未だに寝ているリーシェちゃんと、首を傾げている戦力外レイラちゃんを連れて……まずは宿を探すとしようかな。


 それにしても、ルークスハイド王国に辿り着く前に王女様に遭遇か……どうやら此処でも色々と厄介事が起こりそうな予感がするよ。全く、退屈しないねこの世界は。嫌味だけどね。



 ◇



 ルークスハイド王国。その城の中では、攫われたアリシアを取り戻す為に慌ただしく兵士達が奪還部隊を組んでいたのだが、突然アリシアが帰還したことで、別の意味で慌ただしくなっていた。

 兵士達は組まれた奪還部隊を解散し、召使いやメイド達はアリシアを迎え入れる準備に大忙しだ。アリシアの『代わりに』王政の書類を処理していた文官達は、アリシアの帰還に喜び、アリシアの父親である国王はほっと胸を撫で下ろし、帰って来たアリシアを抱きしめた。


 そうしたやり取りを終えて、アリシアは城の廊下をスタスタと歩く。レットカーペットの敷かれた廊下は広く、華やかだ。平民ならば、歩く事も躊躇われる様な道だろう。

 しかし、アリシアはその道を悠々と歩いていた。服装は、桔音達の前で着ていた簡素なワンピース姿ではなく、正装に着替えていた。歴代の勇者の1人が作り出したスカートを含めた、地球でいうところの制服を着て、その上から赤いマントを羽織っている。

 そして、その癖のある金髪の上には、輝かしい王冠が乗っており、王家の人間であると見た目で分かった。


 そして、アリシアは大きな扉の前に立つ。煌びやかな装飾の為された扉だ。前には門番の様に兵士が2人、アリシアが扉の前に立ったことで、兵士達はその扉を押し開ける。

 アリシアは開かれた扉の中へと踏み込んで、扉の奥に広がっているだだっ広い空間に足を踏み入れた。そのまま歩を進め、最奥にあった壇上へと上がり、その頂上に鎮座していた『玉座』に腰掛けた。


「―――皆すまないな、心配を掛けた。今帰ったよ」


 そして、少しだけ頭を下げてその玉座の壇上の下、そこに並んだ兵士や召使い、メイド達に対してそう言った。

 すると、彼らは膝を着いて頭を垂れた。まるで、国王に対して付き従っている様な態度。けして、第3王女に取る態度としては、些か行き過ぎていた。


 しかし、その疑問は彼らの次の言葉で解消される。



『お帰りなさいませ―――アリシア女王(・・)様!!』



 アリシア・ルークスハイド。


 初代女王、アリス・ルークスハイドの生まれ変わりと呼ばれる程の神童であり、現ルークスハイド王国の第3王女。アリス・ルークスハイドと同じ金糸の様な金髪と、エメラルドグリーンの瞳を持ち、そしてこの年齢で鬼才と呼べるほどの才覚を持った少女。

 そして同時に、齢7歳にしてこのルークスハイド王国の王政を取り仕切る存在。



 ―――ルークスハイド王国『女王(・・)』でもある少女である。



 正確には次期女王だが、既に女王となることが決定している故に、形だけでもそう呼ばれている。だから体外的には女王ではなく、王女を名乗っているのだ。


「ふむ、それでは皆の者。各々の仕事に戻れ、今日も忙しくなる」

『はっ!!』


 アリシアの言葉で、膝を着いていた者達が立ち上がり、各々の仕事へと取りかかる為にこの広い玉座の間を出ていく。

 そして、アリシアもまた王政を取り仕切る為に仕事を開始する。今日は他国からの使者を相手に、貿易等の会談をしなければならない。


「ああそうだ、きつねへの報酬も用意しなければな……ふふふ、忙しい忙しい」


 アリシアはそんなことを呟きながら、玉座の肘掛けに頬杖を着いた。



 ◇ ◇ ◇



 さて、いつもながらだけれど宿を確保した。グレードがちょっと高かったけど、公共風呂付きの宿の部屋を2部屋取った。ドランさんが仲間になったから、僕の部屋も2人部屋になったんだよね。これで1人寂しい夜を過ごす事も無くなったね! 相手がドランさんなのがちょっとアレだけど。

 まぁ夜に男同士のトークをするのも楽しそうだ。お風呂も公共風呂の場合、1人で入るより誰かと一緒に入った方が楽しいからね。


 アリシアちゃんの国、中々良い国じゃないか。宿も少し高いけど良い設備が整ってるし、街並みも賑やか、騎士達も頭は固いけど真面目だしね。


「それで? これからどうすんだきつね」


 僕とドランさんが部屋に荷物を置いたところで、ドランさんがそう聞いて来た。


「うん、とりあえずはコレを素材に武器を作ろうかな」

「ああ、そういえばそうだったな」


 僕はその質問に対して、バルドゥルの素材を取り出してそう言った。武器を作る、僕だけの武器をね。元々、ルークスハイド王国へ行く目的の中に武器作りが入ってたんだし、バルドゥルを討伐した際に手に入れた報酬もあるから、それを使って武器を作ろう。足りなかったらアリシアちゃんにたかりに行こう。報酬の白金貨10枚とかいうの貰ってさ。


 あとはそうだね、ドランさんに戦う技術でも教えて貰おうかな。如何せん、僕は高いステータスを持て余している節があるから、それを使いこなせるようにならないと。動きが素人のままだと攻撃を当てる事も出来やしない。


「じゃ、行こうか」

「ああ」


 そう言って、僕はドランさんと部屋を出る。鍵を閉めて、ポケットに入れる。

 すると、タイミングが一緒だったらしい。レイラちゃんとリーシェちゃんも丁度部屋から出て来たところだった。2人部屋は一緒だから、フロアが同じなんだよね。だから隣同士の部屋にして貰った。

 レイラちゃん達も僕達に気付いて、近づいてくる。


「これから武器を作りに行こうと思うけど……2人はどうする?」

「私はきつね君と一緒に行く♪」

「俺はギルドへ行こうと思ってる。きつねを責める訳じゃねぇが、能力値が巻き戻った分取り戻さねぇとな」

「それじゃあ私はドランさんと共に行く」


 上手い具合に2手に分かれたようだ。まぁレイラちゃんは僕と来るって言うと思ってたから大体予想通りだけどね。

 それじゃあ行動を開始しよう。僕とレイラちゃんは武器を作りに武器屋へ、ドランさんとリーシェちゃんは依頼を受けにギルドへ。


 ルークスハイド王国には魔王とか現れないと良いなぁ……全く。


 そんなことを考えながら、僕達は宿を出た。

 外に出ると、喧騒が聞こえてくる。やっぱり商店街っていうのは何処の街も賑やかだね。食事処から漂ってくる食事の匂いが立ち込めて、食欲を誘う。


「それじゃ俺達はギルドへ行く。また後でな」

「うん、気を付けてね」

「おう」


 ドランさんとリーシェちゃんがギルドへ向かって去っていった。

 残されたのは、レイラちゃんと、布袋にバルドゥルの素材を入れて持っている僕だけ。レイラちゃんはキョロキョロと新しい街に興味津々なのか、色んな店に視線を彷徨わせている。


「ねぇきつね君、武器屋に行った後でいいの……お洋服を見ても良い?」

「ん? まぁいいけど……」

「うふふっ♪ ありがとっ♡」


 レイラちゃんが洋服? 普段は黒いワンピースしか着ないのに、洋服を見たいなんて……どうしたんだろう? まさか、またクロエちゃんから何か吹き込まれたのかな?

 まぁ、洋服見る位なら危険も無いだろうし、別に良いけどね。どちらにせよ、まずは武器屋に行くのが最優先だ。でも、場所知らないんだよねぇ……どうしたものかな。


「……まずは武器屋を探すことから始めないとね」

「うん♪」


 そう言って、僕はレイラちゃんを連れて歩き出す。とりあえずは、ドランさん達の向かった方向とは逆方向へと向かおうとする。


 でも、宿の前から1歩踏み出した瞬間、僕達の背後から声が掛かった。


「―――武器屋はそっちじゃないぜ、まるっきり真反対だ」


 振り向くと、つい先程も見た様な金髪を靡かせながら佇む、碧い瞳の女性がいた。友好的な笑みを浮かべて、動きやすくボーイッシュな服装をしている。一目で言うなら美人さんだ、アリシアちゃんを大人にした様な容姿をしている。

 すると、彼女はその手にチャリッと硬貨のぶつかり合う音を発する布袋を取り出して、はにかむ様に笑顔を浮かべた。



「妹が世話んなったな。私はルークスハイド王国第1王女、オリヴィア・ルークスハイド。報酬(おれい)を届けに来たぜ?」


 

 第1王女と名乗った彼女は僕の目の前まで歩み寄って来ると、僕の手にずしっと重い布袋を乗せて、そう言った。


はい、というわけで第1王女登場。そしてアリシアちゃん王女でしたが、女王(次期)でした。どんだけ大物だったんだよ。というか、強盗達も良く攫えたよね!


七章キャラ紹介に、クロエちゃんのイラストを乗せました。良ければそちらもどうぞ!そして感想を!

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