第3王女
連投連投♪
助けた金髪の女の子、遠目から見た時は分からなかったけれど、凄く幼い。身長でいえばおよそ120cm位。僕よりも頭2つ分位小さい。
金髪も癖っ毛で、所々はねているけれど、触った感じそれほどキシキシしていたりはしない。寧ろ髪質はサラサラしている方だ。しかも、色も綺麗な金糸の様だし、肌も子供特有の持ち肌で白い。それに、エメラルドグリーンの瞳が綺麗だ。
にしてもこの子、僕がお金頂戴って言ったらなんて言った? 白金貨10枚だっけ、何それ? 金貨までなら知ってるんだけど、白金貨って何? 金貨の凄い版?
そんなことを少女の頭をもさもさと弄りながら考えていると、僕の手がぐいっと押しのけられた。
「触られるのが嫌という訳ではないが、私も一応女だ。見知らぬ男に触られたいとは思わんのだ、許せ変態男」
「ああうんごめんね、助けてくれた相手にお礼の1つもない子だから良いかと思って。怒らないでね、チビちゃん」
まずは礼儀正しい挨拶をしないとね。うんうん、僕も小さいからって女の子相手にいきなり触るなんて、ちょっと失礼だった。反省しないと。
「さて、まずは礼を言おう。助かった、あのままではそこで転がっている盗賊共に攫われるところだった。感謝するぞ」
「いやいや、お礼なんてそんな……当然のことをしたまでで、お金さえ払ってくれれば十分だよ」
「お前、結構な頻度で最低って言われるだろう?」
「なんで分かったの?」
「……やっぱりか」
凄いやこの子、なんで分かったんだろう? 確かにドランさんとかリーシェちゃんに最低って言われたことあるけど、初対面で見抜くなんて凄い! 将来大物になるだろうなぁ、楽しみだ。
にしても、この子一体何者だろう? この地面に転がってる盗賊達を盗賊だって理解しているみたいだし、小さいのにやけに落ちついてる。しかも、大人数相手にあの立ち回りを見せていたし、まず人攫いに遭う人物となれば、家が金持ちなのかな?
白金貨って言ってたし、価値は分からないけど高額そうなお金をポンと出せる訳だ。しかも、この子の意志意向で出せるとなれば、この子自身がある程度の権力を持ってると見ても良いだろう。
つまり、この子は何処かの上級貴族のご令嬢って所か。まぁ少ない可能性として、王家の人間とかね。実は王女だったりして、なんてね。
「まぁそれは置いておくとして……お嬢ちゃん、何処の子? いくつ?」
「私か? ふむ……私はルークスハイド王国第3王女、アリシア・ルークスハイド、7歳だ」
「へー」
マジで王女じゃん。というか7歳って……しっかりし過ぎでしょこの子。
4歳のニコちゃんが3年後これぐらいしっかりした子になるだろうか? いやならない。明らかにおかしいよね……この子、もしかして天才とか神童の類かな?
王女っていう位だから、多少はしっかりした人格が出来あがっていてもおかしくはないけれど……ここまで冷静沈着に会話出来る子供なんて、天才以外の何者でもない。
まぁどうでもいいけどね。とどのつまりちょっと凄いだけの子供だ。
「じゃアリシアちゃん、僕達そのルークスハイド王国に行く途中なんだ。間抜けにも此処まで攫われてきた訳だし、一緒に来る?」
「まぁ私1人で国に戻るのは不可能か……頼んでも良いか?」
「良いよ! おーいドランさーん! この間抜け王女ちゃん連れていくよー!」
「何も言わない、助けて貰う立場だから今は何も言わない。でも国に戻ったら覚えておけよお前」
後ろでなんか言ってるけど無視する。
僕は盗賊達の死体を集めてその辺に纏めているドランさんとレイラちゃん達に、アリシアちゃんを連れていく事を告げて、荷馬車にアリシアちゃんを乗せた。
ドランさん達に、アリシアちゃんのことを掻い摘んで教えておくと、リーシェちゃんとドランさんは、驚愕の表情でアリシアちゃんを見た後、彼女が僕のことを不満気に睨んでいたのを見て、何かを察したらしい。
直ぐにアリシアちゃんの所に駆けていって、頭を下げていた。どうしたんだろう? 何かしたのかな? 全く、子供には優しくしないと駄目だと思うなぁ僕。
その後出発前にドランさんとリーシェちゃんに1発ずつ叩かれた。痛くはなかったけど、なんで叩かれたのか分からない。解せぬ。
◇ ◇ ◇
それからしばらく進んだ後、ルークスハイド王国まで後少しというところで日が落ち、野営をする事になった。リーシェちゃんとドランさんがアリシアちゃんに見たことない位気を遣っていた、料理もいつもより気合が入っている気がする。
なんだ? なんだかリーダーの僕よりも敬われてない? くそう、王女なんて属性を持っているからか? 異世界人じゃ駄目なのか! 王女よりもレアじゃん、異世界人。
「王女様、申し訳ありませんこのような食事しか用意出来ず……」
「そんなに気負わずとも良い。今の私はお前達に助けて貰っている立ち場だ、例えどれだけ質素な食事だろうと文句は言えないし、言うつもりもない。それに、私は城の贅沢な料理よりも、この様な普通の料理の方が好きだ」
「そ、そうですか……ありがとうございます」
リーシェちゃん、君そんな丁寧な言葉使えたんだね……てっきり脳筋で敬語なんて精々『さん』付けする位しか出来ないのかと思ってた。あ、睨まれた。とりあえず目を逸らしておく。
すると、目を逸らした先にドランさんがいた。なんか知らないけど荷馬車に寝袋を広げている。あれ僕達の分の寝袋じゃない? 何、あそこにアリシアちゃんを寝かせるってこと? 僕達は?
もしかして僕達は地面に寝るってこと? おい待てふざけんなよ、眠る時くらい僕にも安らぎが必要なんだぞ! 仲間のことをなんだと思ってるんだ!
「……ねぇきつね君♪」
「何? レイラちゃん」
「あの子、そんなに偉い子なの? リーシェが失礼のない様にって言ってたんだけど」
「まぁ……王女だから偉いといえば偉いんじゃない? まぁ特に普通で良いと思うよ?」
「分かった♪」
レイラちゃんは普通だ。まぁ冒険者として色々過ごしてきたけど、魔族の彼女には王女の凄さが分からないんだろう。馬鹿だなぁ、あはは。
まぁアリシアちゃんの世話はリーシェちゃんとドランさんに任せておこう。僕は子供は嫌いじゃないけど、あの子妙に大人びてるというか……子供らしくないからなんか可愛くない。見た目は可愛いけど、あの子目付き悪いし……まぁ目付き悪くても可愛いのは変わらないんだけどさ。
どっちにしても、最近じゃレイラちゃんやクロエちゃんとか、可愛い子なら良く見てたから、慣れたよもう。
まぁロリキャラは久々だね。グランディール王国のルーナちゃん以来じゃないかな、あっちはロリはロリでも合法ロリ巨乳だったけどね。
「ん?」
「ちょっと良いか?」
「アリシアちゃん……まぁ良いよ」
レイラちゃんがリーシェちゃんの所にご飯を貰いに行った直後、アリシアちゃんが僕の隣に座った。腰まである癖っ毛の金髪が、地面に触れた。
第3王女様が僕に何の用だろうか? まぁ大した話じゃないだろうけど、そうだなぁ……報酬の話かな? 白金貨10枚とかなんとかっていう。うん、多分その辺だろう。
「……お前、異世界人らしいな」
「え、うん」
違った。お金じゃないのか……じゃあ属性? 悪いけど王女と異世界人の属性は交換出来ないよ? 僕女じゃないし、王女になりたいとは思わないんだ。
「それじゃあお前は、勇者なのか?」
「あはは、面白いこと言うじゃないか。あんなゴミみたいな奴と一緒にしないでくれる?」
「ひにゃー」
異世界人イコール勇者の公式止めてくれないかな。魔王といいこの子といい、あんなゴミ屑と一緒にされたら堪ったものじゃないよ。僕だって怒る時は怒るんだぞ。
という訳で、アリシアちゃんの柔らかいほっぺを引っ張ってむにむにと弄る。おお、良く伸びる良く伸びる。流石は王女様、良い感じに柔らかいほっぺを持ってるなぁ……にしても、この子も勇者に何かあるのかな? もしそうだったら捨てていこう、面倒事は御免だからね。
そう思いながら、僕はアリシアちゃんのほっぺを放す。若干赤くなったほっぺたを擦りながら、アリシアちゃんは苦笑した。7歳の癖に凄い大人びた笑みを漏らすなぁこの子、とても7歳には見えないや。
「いや、違うなら良いのだ」
「……勇者に何かされたの?」
「そういう訳ではない、ただ私は勇者にあまり良いイメージを持ってないのだ」
「だよねー、勇者とかゴミだよね。勇者と書いて勇者だよね」
家族とパートナーを奪われたしね。今度ぶっ殺しに行くから良いけどね、どうせ取り戻すし。あの巫女も絶対泣かす、容赦はしない。謝ったって許さない。
でも、アリシアちゃんはなんで勇者に良いイメージが無いんだろう? 勇者って何も知らない人からすれば正義の味方なんじゃないのかな? 魔王を倒して平和を齎してくれる希望の存在、それが勇者の筈だけど……アリシアちゃんにとっては違うのかな?
「まぁ、違うなら違うで良い。例えお前が勇者だとしても、私にとっては命の恩人だからな」
「へぇ、どうでもいいや。話はそれだけ? 僕お腹空いたからそろそろご飯食べたいんだけど」
「お前、私が王女って忘れてないか?」
忘れてないよ、気にしてないだけで。僕にとっては王女も同じ人間、どれだけ偉いんだとしても変わらない。僕は僕のやりたいようにやる、冒険者は自由の人らしいからね。
「どうせ気にしないでしょ? それとも、膝を着いて頭を垂れれば満足?」
「ふふふ……いや、そのままで良い。最近態度の固い奴らばかりでうんざりしていた所だ」
立ち上がって僕がそう問うと、アリシアちゃんは満足気に笑いながらそう言った。王女といっても、結局は同じ人間なんだ、気楽に話せる相手がいない環境なんて、堅苦しくて息が詰まるに決まってる。
この子は特に、そういう所がある。さっきから、僕と話している時は随分と気楽そうだからね。頭が良いからこそ、この年でもそういう所にもうんざりするわけだ。普通なら、それが日常だと思って受け入れられるものだしね。
まぁそんなことはどうでも良い。今はリーシェちゃんが気合を入れて作った料理を食べよう。お腹ぺこぺこだよ。今日は盗賊相手に勇敢に戦ったからね、僕の活躍はそれはもう素晴らしかったな。
「お前、名前は何という?」
「きつね、Hランクの冒険者だよ」
「きつね、か……改めて礼を言おう、ありがとう」
アリシアちゃんが、にっこり子供らしく笑ってお礼を言った。
へぇ……少しくらいは、可愛げがあるみたいだ。
アリシアちゃん、ロリキャラでした。胸? 勿論ぺったんこですよ。7歳の天才児です。