第九話 そして物語は異聞録へ
おまけで~す♪
【藤堂】
「…我が喚び声を辿りて、異界より来たれ…」
私は、無縁塚と呼ばれるここで、召喚の儀式を行っている。
目的は一つ…娘を取り戻す事。その為には、私の住んでいる小屋の前に広がる大きな湖、あれを凍らせる必要がある。
【藤堂】
「闇に魅入られ、闇に墜ちし者よ…」
その為には、彼の力が必要だ。
【藤堂】
「…来たれ!魔獣の力を得し、闇の五大将軍g…」
ズギュンッ
【藤堂】
「あがっ!」
背後から、胸部を射抜かれた?い、今のは…紫色をした光線、いや妖力波か…。
【藤堂】
「…ひょっとしたら、来るんじゃないかとは思っていたが…やってくれるじゃないか…八雲 紫。」
【紫】
「あら?心臓を貫いたはずだけど?」
容赦のないセリフだ…ま、最初からそんなもの、期待しちゃいないがね。
振り返れば、スキマの上に腰掛け、冷徹な目で私を見据える妖怪の賢者さまがいらっしゃった。
【紫】
「何をしようとしていたの?」
【藤堂】
「お察しの通りだと、思うが?」
【紫】
「そう…」
一層、目を細めてこちらを見据える紫…非常に、マズい。
いや、私よりも中断された術の方が不安だ…あれでは、完全成功確率はせいぜい3パーセントだろう。50パーセントは何も起きずに失敗、それならまだ良い。だが残りは…失敗にしろ成功にしろ、何らかの重大なアクシデントが起きる可能性がある。
早く、ここを離れた方がいい…。
【紫】
「あの氷精の事は、私も同情するわ。だけど、あの子は冬になれば帰ってくる。それを待たず、幻想郷に余計なトラブルの種を蒔かないで欲しいわね。」
【藤堂】
「君に何が分かる?親の気持ちが…君に分かるのかね?」
【紫】
「……分かるわよ。少なくとも、私はあの子を我が子のように思っている。種族は、違うけれどね。」
あの子?あぁ、なるほど…。
【藤堂】
「ならば尚の事、邪魔をしないでいただきたい。」
【紫】
「それは出来ない相談ね。」
相容れぬ、か…。立場が違えば、良き友人になれたかもしれんが、残念だ。
【藤堂】
「ん?」
その時、私は確かに感じた。まぁ、自らが開こうとしていたんだから気づいて当然だが、確かに召喚門が開かれたのが分かった。
ただし、場所はここではないようだ…。
【紫】
「…何を喚び寄せたの?」
彼女も、ゲートが開いた事に気づいたようだ。さすが、この幻想郷の管理者…しかし、いつまでも彼女の相手ばかりしてられん。
ここでの目的は、既に達したわけだしな。あとは…
【紫】
「答えなさい!」
【藤堂】
「…説明している暇はない。」
【紫】
「…貴様、人間の分際で、頭に乗るなぁっ!」
途端、無数の妖力波が飛んできて、私は五体をバラバラにされた。
紫side
私の放った弾幕を受け、藤堂と名乗っていた幻術師はバラバラになった。
さすがに死んだだろう。仮に息があっても、もう何も出来まい。
【藤堂】
「……」
物言わぬ彼の、千切れ飛んだ生首の眼は、虚ろに、ただ虚空を眺めるのみだ。
慧音には悪いけど、そろばんの教師は、また代わりを探して貰えばいいだろう。あ、私が連れて来れば問題ないか。
【紫】
「さて、次は…っ!」
一歩、足を踏み出した瞬間…突然、足場が消えた。人間が、階段を踏み外したかのように、私の体は落下する。
【紫】
「これも、幻術?」
やっと足が着いたけど、そこには何もない、灰色の空間だけが延々と広がっていた。
【藤堂】
「ここで、大人しくしていて貰おう。」
何処からともなく、彼の声が響いてくる。
【紫】
「……やるじゃない。」
私は、いつから彼の幻術に?一体、どこから幻だったの?
何にせよ、彼がここまでデキるなんて、想定外だったわ。
さて、どう解いたものかしら?この幻術…。
藤堂side
ふぅーっ、全く…容赦なくやってくれたものだ。
【藤堂】
「見事にバラバラにされちまった…こりゃ、くっつけるのも一苦労だな。」
私は生首だけの体で、右腕を銜えて運んで来ると、それを胴体の右肩にくっつけた。
あとは首と胴体がくっつけば、と…。
【藤堂】
「あ!しまった!これ左腕じゃん!」
……この後、10分以上かかってやっと、私の体は元の形に戻った。…両腕は、逆になってしまったが…。
【藤堂】
「ま、まぁいい!そろそろ、彼がゲートを通過してくるハズ。急がねば。」
私は姿を消し、ゲートが開いた場所へ向かい飛び立った。
そこは、何故か無縁塚とは全く真逆、幻想郷の東端に位置する…博麗神社の真上だった。
異聞録もよろしく!




