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4話




 勇者に縁のある血筋か、勇者に同行できる力量を持った名のある人物か、神の啓示とやらを受けた人間――

 この三つに共通するのは光。

 一番分かりやすく言えば、金髪。特に一つ目に当てはまるそうだ。

 そういえば、姫様と呼ばれた人も、少し色素の足りない感じの金髪だった。ユキのように、きらきらはしていない。

 世界の平均は茶色とグレー。黒はそれほど珍しい色ではないため、特に目立つことはないだろうという話だ。


「じゃあ、どうやって『勇者』だって証明するの?」


 姉も黒髪で黒目。分かりやすい金ではない。


「金の装飾を使い、王宮が『勇者』であると公言する。王の言葉は絶対であるため、アレは『勇者』として存在することになる」


「…………趣味、悪そうね」


 装飾された姉を想像してみる。

 きっと頭には、金のムダに派手な髪飾りでもつけられるのだろう。

 服かマントには金の刺繍。

 ゴテゴテしていた。

 どこの成金ですか?


「――ところで、待ち合わせしている人って、どんな人なの?」


「オレと同じく、二つの理由を持ってしまった男だ。王宮で再開し、その時に精霊石の本を譲られた」


「え? 王宮に居たってことは……」


「いや、キミは会っていない。リコが召喚される前に、少し問題があって……そいつは城を追い出された」


「……わたしと、同じ?」


「半分は、な」


 と、タイミングを狙ったかのように、部屋の戸が叩かれる。

 きっちり四回。

 ユキには訪問者が分かっているらしく、『開いている』とだけ答えた。

 入ってきたのは、夜を思わせる髪と、琥珀色の瞳をした青年(おそらく、ユキより年上)だ。



「――駆け落ちとは感心せぬな」



 それが、彼の第一声だった。

 挨拶抜き。

 反応に困っているわたしは、ただポカンとしているだけ。

 言った当人は、なぜか頬を赤らめる。それは恥ずかしいのだなと、思った。


「…………こいつに悪気はない。ディオの精一杯のボケだ」


「え?」


 ようやく意味が分かった。

 勇者の仲間候補として城に行ったはずが、見知らぬ女と一緒に暮らしている。それを駆け落ちと思ったのか。

 そんな風に、見えたんだ。


「……ふっ、ふふっ」


「り、リコ?」


「あははははっ、だ、だって、駆け落ちに見られたなんて、ふふふっ……ははっ」


 可笑しかった。

 悪い意味じゃなく、楽しい意味で。

 だから笑った。腹の底から声を出し、笑った。

 ――十年振りくらいかな?

 涙が出るほど可笑しくて笑って……ボロボロと泣いていた。



 そこから先は、ただ声を上げて泣いた。



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