表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/45

最初で最後の手紙

 赤いバラの男は、処刑されるだろう。情報漏洩により、他国の王族を危険に晒したのだから。

 国と軍のどちらで刑を執行するか、公開にするか非公開にするか、そんな話し合いに時間がかかっていた。


 そんな中で手紙が届いた。

 上司に別室に呼ばれて、言われるがままに対面に腰を下ろす。差し出されたそれには検閲済みの判が押してあった。

「これは、何ですか?」

「あー、獄中からの手紙だ」

 差出人を見て、「獄中からの手紙」という意味がわかった。

「普通はご実家に書くものではないでしょうか」

「それはそれで書いてるんじゃないか? 処刑前の『三通の慈悲』だから」

 上司は興味なさそうに、窓の外を見た。

 我が国の風習で、死出の旅立ちの前に遺言を三通残すというものがある。

 それが死刑囚にも適用されている。実際は、罪の告白や盗品を隠した場所が記されていないか、調査の対象となっているのだが。


「……こういうものに返事は書くべきなのでしょうか?」

 まだ一行も読んでいないが、他の人はどうしているのか気になった。

「まあ、人それぞれだろう。返事を出したかったら預かるぞ。すぐに読みたいなら、ここを使ってもいいから」

 上司はそう言って、席を立った。

 私はしばらくその手紙を眺めて、どうしようか迷っていた。


 それほど親しくはない人だ。襲撃で飴をもらったお返しは、まだしていなかった。収監されているところにわざわざ差し入れをするのは、身内でもないのにやりすぎだと思うし……。


 ふう、と息を吐き、手紙を手に取る。当然のことだが、すでに開封されている。


『尋問されているとき、雑談で君が嘘の告白のせいで男性不信に陥っていると聞かされた。

 俺が君を呼び出したときのことだろうか。

 素直になれなかった少年時代の俺の出来心が、君を深く傷つけてしまったんだな。

 君のことを嫌っていたわけではない。それどころか好意を持っていて、俺の言葉に反応して欲しかっただけなんだ。泣きそうな君の顔を今でも思い浮かべることができる。とても儚げで、守ってあげたくなった。

 襲撃されたとき、俺たちの息はピッタリ合っていたよな。君が俺のキャンディーを口に含む姿に、俺の胸は早鐘を打っていたんだよ。

 君はこれからも、男性の好意を信じられないままなのだろうか。申し訳ないが、少し嬉しく思う。それとも、俺の真実の心を知って、君の心の傷は癒えていくのだろうか。

 もうすぐ死にゆく俺に免じて、幼い頃素直になれなかった俺を許してほしい。

 だが、君の態度も良くないと思う。執念深いところを反省して、人の好意は受け取れるようになった方がいい。俺からの、最後のアドバイスだ。

 本当に、真面目に、心を込めてプレゼントを選んだんだ。……君が好きだから。

 どうか、忘れないでくれ。君のことを愛していた、愚かな男のことを』



 ……気持ち悪い。

 悲劇に酔っているようにしか見えない。

 これ謝ってないよね? 反省していないよね? 許してほしいとか図々しくない?

 命を盾に、脅されている気がする。

 嫌だ。この紙も封筒も悍ましいものに思えて、触りたくない。この部屋のゴミ箱に捨てたい。

 ますます嫌いになっただけ。こんな押しつけがましい、自分を正当化するだけの文章なんか、読みたくなかった。


 だけど、死にゆく人に「許さない」と言うのも冷血漢のようで……少しばかり後味が悪い。

 私よりももっとひどい場合――例えば犯罪被害者の遺族たちは、どう向き合うのだろう。

 どうしてこの人は、私を傷つけたり困らせたりするのか。

 まさか、心に爪痕を残したかったのだろうか? 子どもの頃の嘘告では、足りないとでも?

 いい思い出ではなく、悪い思い出でも構わないという神経がわからない。


 気力を吸い取られたように、私はしばらく椅子から立てなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最後まで自分自身に酔いすぎて気持ち悪すぎるね これが最後なにが唯一に救いだが 主人公はあえてさっさと結婚相手みつけて幸せになって 昔のことなんて風化してほしいわ
死刑を前にしてブレねぇな… 死ぬことは決まっているだけ救いか?
こいつのメンタルやばすぎて怖い((((;゜Д゜))) はよ処刑して………生きてる間ずっと勘違いしてなんかしてきそう、、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ