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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

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兄弟の密談

 庶民的な酒場の、半個室で兄弟は落ち合った。弟は実家住まいで、兄は恋人と同棲中だ。

 手早く注文を済ませて、乾杯をする。

「兄貴、騎士爵おめでとう」

「いや、まだ内定だ。今回の祭典を無事に終えることができたら、という話だからな」

 そう訂正しながらも、期待に口元が緩む。


 弟はジョッキを置いて、紙の束を鞄から出した。

「姉貴に嘘告した奴らが判明した。こいつら六人だ」

 調査資料を兄に手渡す。


「王都から少し離れた町の剣術場で、子どもの頃に出会った連中らしい。このうちの二人は武芸大会に参加できたが、早々に敗退。他の四人は応援のために来ていた。

 つまり、俺たちが試合をしている間、暇を持て余して悪さをしていたってことだ」

 弟は軽蔑するように言い、豆を口に運んだ。


「主犯の男は、町の剣術場で才能があると言われて、自信を持ったと。

 実家は裕福な地主で、母親は美人で有名な没落寸前の貴族か。本当に才能があったのか、おべっかかわからんな」

 兄は忌々しげに、骨付き肉を噛み千切った。


「普通は武芸大会で勝ち進めない時点で、実力を知るんだけどね。

 そこで諦めるか、死に物狂いで励むか――。子ども部門では通用しても、少年部門には出場もできなくなってる。それなのに自分は強いって自信があるのは、なんでだと思う?」


「……お前にもそのうちわかるだろうが、言葉が通じない奴はいる。相手の力量を測れない馬鹿は、予想外の行動をすることがあるから要注意だぞ」


「それ……三ページ目の姉貴への勘違い発言、気持ち悪くてムカムカするよ」


「……俺はあの魔術師が義弟になってくれたら、楽しそうだと思っていたんだ。こんな馬鹿のために、男性不信になったのか」

 兄は調査資料を丸めてテーブルを叩いた。


「魔術師って、姉貴に告白したのに気付いてもらえなかった人? 嘘告を調べるきっかけになった功労者だね」

 弟がジョッキを軽く上げて、感謝を示した。


「恋人が、お袋と同居するなら結婚しないと言うんだ。仲良くやっていけそうにないって」

 兄は二杯目に口をつけた。


「そうなのか」

「あいつの自己評価が低いのは、お袋のせいだろうって。もし娘が生まれたら、子育てに口を挟ませるなってさ」

「……へえ」

 弟は肘をつき、手のひらに顎を載せた。


「それから、武芸大会の手伝いもさせたくないって。子どもなのに働かせすぎで、見ていて可哀想だったとよ」

「うちって、もしかして変わってる?」

「武芸への拘りが異常らしいぞ」

 二人は目を合わせた。どちらからともなく視線を外し、同時にため息を吐いた。


「俺、帰ったら兄貴と何を話したか訊かれるんだけど。めんどくせー」

 弟はテーブルに突っ伏した。

「俺の分までお袋の関心が行っちゃって、悪いな」

「悪いと思ってるなら、奢ってよ」

 弟は突っ伏したまま、顔だけ上げる。

「調子のいい奴め」

 兄は、その額を小突いた。


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― 新着の感想 ―
結婚前から恋人に同居も関わりも徹底拒否される 母親、相当だな…。 「自テリトリーで自分以外のオンナが優遇されるのが 許せない」のか「下認定したオンナは虐げる」なのか …いずれにしろろくでもない。 恋…
兄彼女さん、確信突いてくれた!
お兄ちゃんに恋人ができてやっと世間を知り始めたか……彼女さんめっちゃ考察鋭い。まぁ、あの母親は孫は溺愛しそうだけどそれで嘘告男みたいなのに育っても困るから子育てと切り離すのは当然でしょうね。
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