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第60話 空間を裂く一撃

 翌朝。  


 東の空が白み始めたばかりの刻限。  


 アシュレイン領の練兵場には、ひりつくような冷たい空気が張り詰めていた。  


 朝霧が薄く漂う中、私は練兵場の中央に立ち、対峙する「壁」を見上げていた。


「……本気だ」


 私の口から、乾いた言葉が漏れる。  


 目の前に立っているのは、父。  


 だが、それはいつも私を膝に乗せて笑う優しい父ではなかった。  


 身につけているのは実戦用の軽鎧。


 手には刃を潰した訓練用の模擬剣とはいえ、鋼鉄の芯が入った重量級のものだ。  


 何より、その瞳だ。  


 猛禽類のように鋭く、獲物を見定める冷徹な光を宿している。  


 かつて王国の四大騎士として戦場を駆けた、「猛将」としての姿がそこにあった。


「どうした、エルシア。震えているのか?」


 父の声が、腹の底に響くように飛んでくる。  


 挑発ではない。


 事実の確認だ。  


 私の体は、本能的な恐怖で小刻みに震えていた。


 魔人ナードルと対峙した時とはまた違う、圧倒的な「武」の威圧感。  


 一歩でも間違えれば、叩き潰される。そんな予感が肌を焼く。


「……震えてません。武者震いです」


 足元にはクロがいる。


 彼もまた、低く唸り声を上げ、毛を逆立てて臨戦態勢に入っていた。


 練兵場の端では、母とアミナ、クライブ、そして弟のデイルが見守っている。  


 デイルは母のスカートにしがみつきながら、「ねーちゃん、がんばえー!」と叫んでいる。


 その声だけが、この場の唯一の救いだ。


「条件は昨日言った通りだ」


 父が模擬剣を正眼に構える。  


 ただそれだけの動作で、空気がドンッ!と重くなった気がした。


 剣圧だ。


「私から一本取るか、あるいは参ったと言わせるか。……制限時間はなし。私が『合格』と認める一撃が入るまで、終わらんぞ」


「望むところです!」


 私は大きく息を吸い込み、体内の魔力炉を回転させた。


 ――身体強化フィジカル・ブースト


 全身の筋肉繊維に魔力を纏わせ、反応速度と筋力を底上げする。  


 七歳の体では、これを使っても父の身体能力の十分の一にも満たないだろう。


 でも、動体視力さえ追いつけば、反応はできる。


「いくぞ」


 父が地面を蹴った。


 ドォン!


 爆発音のような踏み込みと共に、父の姿がブレる。  


 速い!  


 瞬きする間に間合いがゼロになる。


 上段から振り下ろされる模擬剣が、巨大な鉄塊のように迫る。


「くっ!」


 受けては駄目だ。


 この体格差で受ければ、杖ごと骨が砕ける。  


 私は地面を転がるようにして横へ跳んだ。  


 直後、私がいた場所に模擬剣が叩きつけられる。  


 ズガンッ!!  


 土煙が舞い上がり、地面が大きく抉れた。


 ……流石だ。


 いや、私が避けることを前提にした一撃だ。


 でも、掠っただけでもアウトなのは間違いない。  


 父は追撃の手を緩めない。  


 横薙ぎ、突き、斬り上げ。  


 流水のような連撃が私を襲う。  


 私は必死に、本当に必死に、紙一重で回避し続けた。


「ちょこまかと……! 避けてばかりでは勝てんぞ!」


「避けるのに精一杯なんですよ!」


 私は叫びながら、思考をフル回転させる。  


 正面からの力比べでは絶対に勝てない。  


 魔力量で押し切ろうにも、父の剣気が魔法を弾く。


 熟練の騎士は、生半可な魔法など気合オーラだけで霧散させてしまうのだ。


 なら、どうする?  


 魔女の戦い方は、力押しじゃない。  


 搦めからめてと、知恵だ。


 私は回避しながら、父には見えない角度で、魔力を流し込む。


 父が大振りの一撃を放つ。  


 私はそれをバックステップでかわすと同時に、詠唱破棄で魔法を発動させた。


(――土魔法、泥沼のマッド・スネア!)


 父が踏み込んだ右足。


 その地面が、一瞬だけ液状化する。  


 ガッ、と父の体勢が崩れる――はずだった。


「ぬんっ!」


 父は沈みかけた足を、強引に力で引き抜き、そのまま踏み固めてしまった。  


 体幹が強すぎる。


 バランスを崩すどころか、その反動を利用してさらに加速してくる。


「小賢しい真似を!」


 迫る剣閃。  


 私は慌てて風魔法で体を押し出し、緊急回避する。  


 心臓が早鐘を打つ。


 やっぱり、小手先の魔法じゃ通用しない……!


 父の強さは、経験に裏打ちされた対応力だ。  


 私の行動パターンを読まれている。  


 なら、読ませなければいい。  


 私一人で勝てないなら、相棒を使うまでだ。


「クロ!」

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