表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/51

第13話 嘆きの森

 私が何気なく呟いた瞬間。


 隣を歩いていたクライブの足が、ピタリと止まった。


「……はい?」


「だから、森よ。屋敷のすぐ裏にある、あの深い森」


「いやいやいや」


 クライブは全力で首を横に振った。


「ダメっす。絶対ダメ。何言ってんすか」


「なぜ? 今の私の実力なら、狼やゴブリン程度なら撃退できるわよ?」


「そういう問題じゃないっす!」


 クライブは珍しく真剣な表情で、私の前に立ち塞がった。


「森は屋敷の庭とは違うんすよ。足場も悪いし、視界も悪い。何より、最近は魔物の動きが活発になってる。お嬢様の実力は認めますけど、万が一ってことがある」


「でも、実戦経験を積まないと、いざという時に家族を守れないわ」


「そのいざという時に、お嬢様が怪我したら元も子もないでしょうが!」


 クライブの声が、少し荒げられた。


 私は少し驚いて彼を見上げる。


 いつも飄々としている彼が、本気で心配しているのが伝わってきたからだ。


「旦那様も、奥様も、アミナさんも。もしお嬢様に何かあったら、どれだけ悲しむか。……俺だって、嫌っすよ」


 クライブはバツが悪そうに視線を逸らし、頭を掻いた。


 ……なるほど。


 サボり魔で不真面目に見えるけれど、根っこはやっぱり「守る者」としての騎士らしい優しさを持っているようだ。


 私は心の中で彼への評価を少し上方修正した。


 だが、それはそれとして。


 私の計画には、魔物の実態調査が不可欠なのだ。


「クライブの言いたいことは分かったわ。でもね、私は――」


「だーめ! 絶対ダメ! 今回ばかりは譲れねぇっす!」


「ちょっとくらい……」


「ダメ! 森に行きたいなら、俺を倒してから行くか、旦那様の許可を取ってきてください!」


 クライブは両手でバッテンを作り、頑として譲らない構えだ。


 こうなると、テコでも動かないタイプだ。


 真正面から説得するのは無理か。


 仕方ないわね。ここは引くフリをしておきましょう。


 私はわざとらしく肩を落とし、深いため息をついた。


「わかったわよ。クライブがそこまで言うなら、諦めるわ」


「……本当に?」


「ええ。私もクライブに心配かけたくないし」


「うーん、なんか怪しいっすけど……まあ、分かってくれたならいいっす」


 クライブは疑わしそうな目を向けつつも、ほっと安堵の息を吐いた。


 チョロい男だ。


 私は心の中で舌を出しつつ、殊勝な顔で微笑んでみせた。


「じゃあ、今日はここで。クライブは仕事に戻るんでしょ?」


「ああ、そうっすね。そろそろ点呼の時間なんで」


「ふふ、サボりが見つかって怒られないようにね」


「縁起でもないこと言わないでくださいよ!」


 クライブは苦笑いしながら手を振り、騎士団の詰め所の方へと歩いていった。


 その背中が完全に見えなくなるまで見送ってから、私は屋敷の方へと向き直る。


「……さて」


 クライブは止めた。


 それは正しい判断だ。


 六歳の子供を森に行かせるなんて、狂気の沙汰だ。


 でも、私はただの子供じゃない。


 それに、あの森からは何か――私を呼ぶような、奇妙な魔力の波長を感じるのだ。


「悪いけど、行かせてもらうわよ。クライブ」


 私はニヤリと笑うと、小さな足取りで屋敷への道を急いだ。


 明日の作戦を練りながら。


 まずは、あの口うるさくて鋭いメイド長、アミナの目をどう欺くか。


 それが最大の難関になりそうだ。

【作者からのお願いです】


・面白い!

・続きが読みたい!

・更新応援してる!


と、少しでも思ってくださった方は、


【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】


皆様の応援が作者の原動力になります!

何卒よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ