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第11話 天才令嬢と、翻弄される騎士の憂鬱

 翌日、辺境伯家の裏庭には、緊張感と脱力感が入り混じった奇妙な空気が流れていた。


 うっそうと茂る木立に囲まれた、人目につかない秘密の場所。


 そこで私は、いつものように小さな腕を組み、目の前に立つ男を見上げていた。


「……で、今日は何をするんすか、お嬢様」


 深緑の騎士服を着崩し、けだるげに木剣を肩に担いでいるのは、私の「共犯者」となった騎士、クライブだ。


 彼は大きなあくびを噛み殺しながら、眠たげな瞳をこちらに向けている。


「今日は実戦形式よ。クライブ、あなた剣の腕には自信があるんでしょう?」


 「まあ、人並みには」


 「謙遜はいいわ。今日は私の魔法を斬ってちょうだい」


 私がサラリと言うと、クライブは「は?」と間の抜けた声を上げた。


「斬るって……魔法をっすか?」


「ええ、そうよ」


 クライブは困っ掻くたように、頭をガシガシと掻く。


「万が一斬れなくて、俺が丸焦げになったらどうするんすか。労災下りないっすよ、これ」


「大丈夫よ。あなたが失敗したら、私が直前で消してあげるわ。……たぶん」


「また『たぶん』って言った! その不確定要素、マジで怖いんすけど!」


 文句を言いながらも、クライブは木剣を構えた。


 その瞬間、彼から漂っていたサボり魔の雰囲気が消える。


 重心が低くなり、全身の筋肉がバネのように収縮する。


 隙だらけに見えて、どこからでも動ける無構えの構え。


 やはり、この男はタダモノではない。


 私は口元を歪め、静かに右手を前へ掲げた。

 

 今日試すのは、単なる火球を放つ魔法ではない。

 

 魔力消費を極限まで抑えつつ、軌道を自在に操る――遠隔誘導の精度向上。


「――集え、炎。形を成し、意思を宿せ《ファイアボール》」


 低く紡いだ詠唱とともに、指先に赤い光が灯る。

 

 やがてそれは、ルビーのように澄んだ火球へと凝縮された。

 

 大きさはピンポン玉ほど。

 

 だが内包する熱量は、鉄板すら容易く溶かすほどだ。


「――行きなさい」


 合図のように指を弾く。

 

 次の瞬間、火球は音もなく空間を滑り、鋭い軌道を描いてクライブへと迫った。


 矢よりも速く、それでいて、生き物のように意思を感じさせる動き。


 だが――クライブは動じない。


「――っし!」


 彼は最小限の動きで半歩右にずれ、熱弾を回避しようとする。


 甘い。


追尾チェイス


 私が人差し指をクイッと曲げると、空中で熱弾が直角に曲がった。


 物理法則を無視した挙動。


 回避したはずの熱弾が、クライブの脇腹へと食らいつく。


「うおっ!?」


 クライブが目を見開く。


 だが、さすがは熟練の騎士だ。体勢が崩れた状態から、無理やり木剣を捻じ込み、熱弾を弾き飛ばそうとする。


 剣身に薄く青い魔力が纏われているのが見えた。


 騎士特有の『身体強化』と『魔力撃』の応用か。


 やるじゃない。


 でも――


 木剣が熱弾に触れようとした、その刹那。


 私は指先を天に向け、手首を返した。


上昇ライズ


 フワッ。


 熱弾はまるで意思を持つ生き物のように、クライブの剣筋をあざ笑うかのように真上へと跳ね上がった。


 空振り。


 クライブの剣が虚空を切り裂く音が響く。


「なっ……!?」

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