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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

宇宙開発機構からのお知らせ


「大佐。ご覧ください。前方に見えますのが新しいリングワールドの開発予定銀河です。」

少佐である彼の手が指す方を見ると、美しい星々が揺らめく渦が目に入った。先ほどまで見ていた機体のレーダーは、すべてにおいて正常値をたたき出していた。

「おお、あれがか。実に素晴らしい光景と条件だ。ここに数十兆人が暮らせる場所ができるのだな。」

「おっしゃる通りです。ようやく我が星の住民たちが安心安全に暮らし、より便利に、より平和に、よりたくましく衣食住のできる場所が開発されるのです。」

彼らは崇高な祖国からの使命を仰せつかっていた。長い長い時間だったが、なんとかここまでたどり着くことに成功した。


「ああ、ここまで長かったのう。我々、タスケテ星人が母星の環境変化により、戦争や天変地異を乗り越え、安住のできる条件の銀河を巡って約100万年…ようやく、開発ができるのだな。」

「はい。ですが、一つ問題がありまして…それが、今回の我々の任務となっております。」

「して、その任務とは?」

「えーと」と少佐が腕の機械についているホログラムから資料を出すと、それを見ながら報告する。

「この銀河に唯一存在している知的生命体種。「ジンルイ」という者たちの説得です。」

「何をどう説得するのだ」

「簡単に言えば「ここは我々が住める場所にするので、別の場所に引っ越すか、星ごと移動するように」と、命じます」

「…それで?できないなどと断られた場合は?」


一呼吸おいて大佐がそう尋ねると、少佐はニコリと笑って口を開く。

「ええ、本部からは問答無用で、彼らの住む地球ごと破壊せよとのこと。」

「…奴らの人口は?」

「事前に用意した解析データによれば、80億人ほどだそうで…」

「なら、よい。たった80億人か。こっちは100兆を優に超える者たちがおるのだ。そんな数を気にしている場合ではない。」

「了解いたしました。」

少佐はすぐに機体の水晶体から地球の各電波をつなげると、一斉にハッキングを開始した。わずか1分ほどで地球上の全電子機械が乗っ取られ、少佐が自動翻訳装置を用いながらメッセージを伝える。

「えー、地球人の皆さん、いえ、ジンルイの皆様。はじめまして。私達はタスケテ星人宇宙開発機構の者です。大変、唐突なお知らせになりますが、皆さんの地球は星間交通及び移住地建設の邪魔になりますので、お手数おかけしますが出て行ってください。三日後に返事をお聞きいたします。それでは!」


ジンルイは当然、反対多数。罵詈雑言。非難殺到。大混乱。そんなもの認められるか、何様だ、宇宙人とやらか、と大多数はまともに取り合わない。一部の者たちは大規模なデモを世界各地で起こし、諸外国の反応もそれぞれで、様々なことを必死に話し合っていた。


「大佐。今日が返事の日ですが、全く応答がありません。ジンルイはなぜか星上で争ったり、議論したり、変な行動をしたりしています。」

「それが返事なのだろう。時間の無駄だ。やれ。我々の目的の方がずっと大事だ。」

「はい。」

少佐は部下に合図した。部下はすぐに交戦用のコックピットに乗り込むと、対星懐弾たいせいかいだんの照準を地球に合わせ、10,9,8,とカウントを取ると、ゼロになった瞬間、その弾を勢いよく発射した。

弾はやがて正確に地球に衝突すると、銀河の歪みを引き起こすほどの圧倒的な爆発を起こし、数時間後、地球を跡形もなく消し去った。そこにはただ黒が広がっていた。 


「よし。これで我々の崇高なる命を果たすことができるな。」

「はい。大佐。もちろんであります。」

「どれ、今日は一杯どうかね?美味しい星酒せいしゅがあるのだよ。」

「残念ですが、私には妻や子がいますので…酒は控えているのです。」

「今年でお子さんはいくつかね?」

「ええと、今年で120歳ですね。成人まであと80年ですよ。」

「そうか、それは楽しみだな。約束された未来が待っているぞ。」

「ええ、本当に素晴らしいです。永遠の繁栄を願いましょう大佐。」



月のすぐ近くの大きな宇宙船体では、そのような会話があったのだという。







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